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69.本当に伝えたかったこと

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「……回りくどいわ!」
「ラ、ラフード、声が大きいですよ?」
「え?」
「む……」

 私が色々と悩んでいると、部屋の外から声が聞こえてきた。
 それは、ラフードとクーリアの声だ。私とフレイグ様は、顔を見合わせる。すると、フレイグ様が動いてくれた。執務室の戸を開け放ったのである。

「うわあっ!」
「……ほら、ばれたではありませんか?」
「……何をしている?」

 戸が開くと同時に、ラフードとクーリアがこちら側に倒れてきた。どうやら、二人は戸にくっついて私達の会話を聞いていたようである。

「すみません。ラフードが、どうして気になると言って聞かなくて……」
「いや、俺に罪を擦り付けるなよ。確かに、俺が言い出しっぺだが、お前だって賛同したじゃないか」
「あなたが、余計なことをしないか、見張っていたんですよ」

 ラフードとクーリアは、そんなやり取りをした。
 多分、二人とも私達のことが気になっていたのだろう。あのような形で呼び出されたのだ。気にならない方が無理かもしれない。
 その気持ちは、わからない訳ではなかった。ただ、聞かれた側としては、少々恥ずかしいというか、なんというか、微妙な気持ちである。

「というか、フレイグ、お前さっきのは一体何なんだよ」
「何を言っている?」
「あんな回りくどい言い方があるかよ。もっと直接的に表現すればいいだろうが……」
「……」
「またその仏頂面かよ……」

 ラフードの言葉に、フレイグ様はあまり表情を変えなかった。
 それは、どういうことなのだろうか。彼の言っていることが、理解できないということなのだろうか。
 そこは、私にとって結構重要な部分である。彼の気持ちがどのようなものなのか、それを私は知りたいと思っているからだ。

「アーティア、お前に伝えたいことがある」
「え? あ、はい……」
「先程の言葉は、前置きに過ぎない。俺が真に伝えたかったのは、もっと別のことだ」
「べ、別のこと……」
「俺は、お前のことを愛している。これからも、俺の傍にいてくれ」

 フレイグ様は、私の目を真っ直ぐに見てそう言ってきた。
 それに対して、私は固まってしまう。そう言われる予想は、していなかった訳ではない。先程の言葉に、そんな意味が込められているのではないかと期待していたからだ。
 だが、実際に言われてみるとすぐに反応はできなかった。それ程に衝撃的な言葉だったのだ。

「……はい。私も、フレイグ様のことを愛しています。どうか、これからもよろしくお願いします」

 数秒固まってから、私はそのように言葉を返した。
 答えに関して、迷うことはなかった。自分のその思いには、薄々勘づいていたからである。
 そんな私の言葉に、フレイグ様は安心したような笑みを浮かべていた。きっと、彼も緊張していたのだろう。
 こうして、私はフレイグ様と思いを伝え合ったのだった。
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