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37.領地の様子は

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 私は、引き続きフレイグ様とともに町を歩いていた。
 メーファルドという町は、平和で賑やかな町である。それはきっと、フレイグ様の統治があってこそだろう。
 それは、領地の民のことを見ていればわかる。彼は、領民から慕われているのだ。

「フレイグ様は、いい領主なのですね?」
「……別にそんなことはないと思うが」
「領地の皆さんに、慕われているではありませんか。それは、フレイグ様が良き領主である証拠です」
「俺が慕われている?」

 私の言葉に、フレイグ様は少し不思議そうな顔をしていた。
 どうやら、彼は自分自身が慕われているということを理解していないようだ。
 だが、先程からの領民の態度を見ていれば、彼が慕われているのは明白である。領民達は、フレイグ様を見て穏やかな笑みを浮かべているのだ。その安心したような表情は、彼が悪い領主だったら出ないものだろう。

「ミラーナさんとジルースさんも、フレイグ様のことを慕っているようでしたし……」
「あの二人も、別に俺のことを慕っている訳ではないだろう。同胞というだけだ」
「そうでしょうか? 私は、そのように見えましたけど……」

 ミラーナさんとジルースさんは、間違いなくフレイグ様を慕っていたはずだ。
 二人の目には、少なからず羨望などいった感情が混ざっていたように感じられた。かつての被害者同士というだけではないはずだ。
 考えてみれば、この町の人々はフレイグ様が魔族によって両親を失い、その後最前線で戦っていたことを知っているだろう。領主が何をやっているかくらいは、領民だって知っているはずだ。
 そんな彼を慕ったりするのは、自然なことのような気がする。統治がきちんとさえしていれば、慕わない理由がないくらいにも思える。

「お前からそう見えるなら、そうなのかもしれないな……俺には、あまりよくわからないことだが」
「ええ、多分そうだと思います」

 フレイグ様は、そんなことはわかっていないのだろう。
 彼の中では、両親の意思を継ぎ、町を守るために戦っただけ。そんな所なのかもしれない。
 しかし、それは町の人から見れば、英雄のように思えるだろう。本人からすればわからないのかもしれないが、そのはずだ。

「……」
「……どうかしたのか?」
「あ、いえ、なんでもありません……」

 私は、ふとフレイグ様の顔を見ていた。
 彼は、いつも淡白だ。領民達からの評価についても、その淡白さが出ているのだろう。
 だが、彼は他人に優しくすることはできる。気遣いもできる。全てに淡白という訳ではないのだ。
 私は、少しだけ理解した。彼はきっと、他人からの関りに淡白なのだと。それがどうしてなのか、私は少し考えるのだった。
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