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21.特別な魔族

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「そこで出会ったのが、こいつだった。狼のような姿をしたあいつは、魔族の陣営からこちらにやって来たんだ」
「魔族の陣営からやって来た? それは、どういうことなんですか?」
「人間と魔族の戦いの発端を知っているか?」
「えっと……魔族が、人間を支配するために攻めて来たという感じだったと記憶しています」
「魔族の中にも、色々な奴がいる。あいつは、そんな魔族の侵攻に嫌気が差して、人間に寝返ろうとしていたんだ」

 フレイグ様は、懐かしそうにそう語ってくれた。
 二人がどうして友達になったのか。それは、ずっと気になっていたことだった。
 なぜなら、二つの種族は争っていたからだ。本来ならば、人間と魔族が交わるなんてないのである。

「だが、俺はあいつをすぐには信じられなかった。魔族の陣営から来たスパイという可能性もあったからだ」
「それは……そうですよね」
「あいつと面と向かって会話をして、その気持ちはさらに高まった。あいつは、自分のことを魔族の王子だと名乗ったんだ」
「え?」

 フレイグ様の言葉に、私はとても驚いた。
 ラフードが魔族の王子である。それがもし本当なら、とても重大な事実だ。
 そんな私の様子に、フレイグ様は少しだけ笑った。その表情も、私を驚かせるものである。

「諸々の話を合わせて、俺はあいつを信じられなかった。むしろ、怪しいとさえ思った。だから、俺はあいつを牢屋に入れたんだ」
「……そうですよね、多分、誰でもそうすると思います」
「ああ、あいつはそれに対して不満は述べつつも従った。その時点で、本当に敵意はないと気づくべきだったのかもしれないな」

 フレイグ様は、お墓の方を見つめていた。それはきっと、後悔の気持ちがあるからなのだろう。
 しかし、それは仕方ないことのように思える。いきなり現れた魔族が、王子と名乗って投降してきて、すぐに納得できるはずはない。

「それから、俺はこいつと何度か面会するようになっていた。それは、念のための措置だった。本当に投降してきた可能性も考慮して、色々と話を聞いていたんだ」
「そうなんですか……」

 フレイグ様の言葉に、私は改めて彼が優しい人だと理解した。
 怪しくても、それでも本当の可能性を捨てない。それは、彼の根底に他人を信じる気持ちがあるからだろう。
 もしも私が同じ立場だった時、ラフードを信じられるかどうかは怪しい所だ。彼の言っていることなんて嘘。そう思って、話も聞かなかったかもしれない。
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