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20.聞きたいこと

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「ここは、誰かのお墓、ですよね?」
「……ああ、そうだ」
「……誰のお墓か、聞いてもいいですか?」
「……」

 私は、思い切ってフレイグ様に聞いてみた。
 もちろん、ここがラフードの墓だと私は知っている。しかし、私が知りたいのはそういうことではなく、ここに眠っているのが、フレイグ様にとってどのような存在なのかということだ。
 このお墓は、彼にとっては特別なものだろう。こんな朝早くにお参りに来ているのだから、それは間違いない。
 そんな事情を聞くというのは、少し勇気がいることだった。だが、それでも踏み込まなければならないだろう。彼と本気で向き合うためには。

「……ここは、俺の友の墓だ」
「友?」
「ああ……」

 少し悩んだ後、フレイグ様はそのように教えてくれた。
 色々と葛藤はあったのかもしれない。だが、それでも彼は教えてくれる気になってくれたようだ。

「お友達のお墓が、どうしてこんな所に?」
「あいつは、特別な存在なんだ」
「特別な存在?」
「……人間ではないんだ」
「それは……」
「ああ、魔族だったんだ」

 意外なことに、フレイグ様はすらすらと質問に答えてくれた。迷ったのは、最初だけだったようだ。

「魔族のお友達、ですか……」
「人間と争っていた種族を友と呼ぶ俺を、おかしいと思うか?」
「……いえ、そういうこともあると思います」

 フレイグ様の質問に、私はそのように答えていた。
 ラフードと会う前の私だったら、その問い掛けにこんなに冷静に答えられなかったかもしれない。
 だが、彼と会ってからはわかった。人間の中にも魔族の中にも、色々な人がいる。きっと個人というものに、種族などというものは関係ないのだ。


「そうか……」

 私の答えに、フレイグ様は少し安心したような表情をした。
 その表情は、初めて見る表情だ。彼も、人並みに緊張したりする。そんな当たり前なはずの事実に、私は少し驚いてしまう。

「こんなことを言っても信じてもらえないかもしれないが、俺はかつて魔族と戦っていたんだ」
「魔族と戦っていた……戦場で、ということですか?」
「ああ、最前線で戦っていた。俺は……強かったからな」

 フレイグ様は、悲しい目をしていた。
 強かった。その事実は、彼にとって嬉々として語れることではないようだ。
 それは、普通なら自慢できるようなことである。それをそんな表情で語るということは、その強さの理由というものは悲しいものなのかもしれない。
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