22 / 24
選択② 秘めたる思い
しおりを挟む
私は、ウルーグの元に来ていた。
彼に、私の結論を伝えに来たのだ。
「姉貴? どうかしたのか?」
「……あなたを、私の婚約者に選んだことを伝えに来たの」
「……はあっ?」
私の言葉に、ウルーグは信じられないというような顔をしていた。
どうやら、彼は自分が選ばれるとは思っていなかったようだ。
「姉貴……兄貴やエルディンを差し置いて、俺が当主に相応しいと思っているのか?」
「ええ、私はそう思っているわ」
「馬鹿げてる……俺なんかが当主なんて……」
「そんなに自分を卑下する必要はないわ。あなたは、とても優しい子。その優しさが、メルスード家には必要だわ。あなたなら、私やイルルド、エルディンにはできないことができるはずよ」
私は、ウルーグならこのメルスード家をさらなる高みに導いてくれると思っていた。
貴族として正当なのは、きっとイルルドだ。だが、そのイルルドにできないことが、ウルーグにはできるはずである。
「……本当に、俺でいいのか?」
「ええ、もう決めたことよ」
「……わかった。腹を括る。やってやるぜ。メルスード家を、俺が導いてやる」
「その意気よ」
ウルーグは、額に汗を浮かべながらそう言い切った。
きっと、まだ自信がないのだろう。それでも、そう決意した彼は勇気がある子だ。
こういう所を見ていると、たまらない。本当に、ウルーグは可愛い弟である。
「さて……姉貴にもう一つ言いたいことがある」
「何かしら?」
「今、こんなことを言っていいのかはわからないが、言っておかなければならないと思う……それによって、姉貴の意見が変わる可能性もあるか。まあ、それでも言うべきだよな」
「え?」
そこで、ウルーグは不安そうな顔になった。
当主になる決意は、しっかりとしていた。だから、何か他に悩むことがあるのだろう。
しかし、なんだろうか。他に問題など、あるのだろうか。
「その……俺は、姉貴のことが好きだ。昔から、姉としてではなく……一人の異性として」
「……え?」
「……やっぱり、言うんじゃなかったか」
ウルーグは、私からすぐに目をそらしてしまった。
いきなりの告白に、私はとても混乱している。昔から、異性として好き。それは、かなり衝撃的なことだった。
だが、意外に納得できた。彼が少し距離を置いていたのが、それが理由だというなら、結構しっくりくるのだ。
「そうだったのね……ありがとう、ウルーグ」
「い、嫌じゃないのか……?」
「嫌な訳ないでしょう。嬉しいわ」
「なっ……」
「これからよろしくね、ウルーグ……」
私は、ウルーグをそっと抱きしめた。
私に好意を抱いていて、それを悟らせないために素っ気なくしていた彼が愛おしくて仕方ない。
私は、ウルーグの妻になる。
この選択は、きっと間違っていないだろう。
優しく私のことを思ってくれている彼となら、きっと楽しい毎日が過ごせるだろう。
彼に、私の結論を伝えに来たのだ。
「姉貴? どうかしたのか?」
「……あなたを、私の婚約者に選んだことを伝えに来たの」
「……はあっ?」
私の言葉に、ウルーグは信じられないというような顔をしていた。
どうやら、彼は自分が選ばれるとは思っていなかったようだ。
「姉貴……兄貴やエルディンを差し置いて、俺が当主に相応しいと思っているのか?」
「ええ、私はそう思っているわ」
「馬鹿げてる……俺なんかが当主なんて……」
「そんなに自分を卑下する必要はないわ。あなたは、とても優しい子。その優しさが、メルスード家には必要だわ。あなたなら、私やイルルド、エルディンにはできないことができるはずよ」
私は、ウルーグならこのメルスード家をさらなる高みに導いてくれると思っていた。
貴族として正当なのは、きっとイルルドだ。だが、そのイルルドにできないことが、ウルーグにはできるはずである。
「……本当に、俺でいいのか?」
「ええ、もう決めたことよ」
「……わかった。腹を括る。やってやるぜ。メルスード家を、俺が導いてやる」
「その意気よ」
ウルーグは、額に汗を浮かべながらそう言い切った。
きっと、まだ自信がないのだろう。それでも、そう決意した彼は勇気がある子だ。
こういう所を見ていると、たまらない。本当に、ウルーグは可愛い弟である。
「さて……姉貴にもう一つ言いたいことがある」
「何かしら?」
「今、こんなことを言っていいのかはわからないが、言っておかなければならないと思う……それによって、姉貴の意見が変わる可能性もあるか。まあ、それでも言うべきだよな」
「え?」
そこで、ウルーグは不安そうな顔になった。
当主になる決意は、しっかりとしていた。だから、何か他に悩むことがあるのだろう。
しかし、なんだろうか。他に問題など、あるのだろうか。
「その……俺は、姉貴のことが好きだ。昔から、姉としてではなく……一人の異性として」
「……え?」
「……やっぱり、言うんじゃなかったか」
ウルーグは、私からすぐに目をそらしてしまった。
いきなりの告白に、私はとても混乱している。昔から、異性として好き。それは、かなり衝撃的なことだった。
だが、意外に納得できた。彼が少し距離を置いていたのが、それが理由だというなら、結構しっくりくるのだ。
「そうだったのね……ありがとう、ウルーグ」
「い、嫌じゃないのか……?」
「嫌な訳ないでしょう。嬉しいわ」
「なっ……」
「これからよろしくね、ウルーグ……」
私は、ウルーグをそっと抱きしめた。
私に好意を抱いていて、それを悟らせないために素っ気なくしていた彼が愛おしくて仕方ない。
私は、ウルーグの妻になる。
この選択は、きっと間違っていないだろう。
優しく私のことを思ってくれている彼となら、きっと楽しい毎日が過ごせるだろう。
2
お気に入りに追加
1,186
あなたにおすすめの小説
王子の婚約者の聖女ですが婚約破棄に…でもこれで苦しみから解放されるので、妹には感謝です。
coco
恋愛
王子の妃として選ばれた聖女の私。
でもそれを不満に思った妹によって、婚約破棄に…。
だけどこれで私は苦しみから解放されるので、妹には感謝です─。
もう一度あなたと?
キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として
働くわたしに、ある日王命が下った。
かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、
ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。
「え?もう一度あなたと?」
国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への
救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。
だって魅了に掛けられなくても、
あの人はわたしになんて興味はなかったもの。
しかもわたしは聞いてしまった。
とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。
OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。
どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。
完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。
悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました
結城芙由奈
恋愛
【何故我慢しなければならないのかしら?】
20歳の子爵家令嬢オリビエは母親の死と引き換えに生まれてきた。そのため父からは疎まれ、実の兄から憎まれている。義母からは無視され、異母妹からは馬鹿にされる日々。頼みの綱である婚約者も冷たい態度を取り、異母妹と惹かれ合っている。オリビエは少しでも受け入れてもらえるように媚を売っていたそんなある日悪女として名高い侯爵令嬢とふとしたことで知りあう。交流を深めていくうちに侯爵令嬢から諭され、自分の置かれた環境に疑問を抱くようになる。そこでオリビエは媚びるのをやめることにした。するとに周囲の環境が変化しはじめ――
※他サイトでも投稿中
「私も新婚旅行に一緒に行きたい」彼を溺愛する幼馴染がお願いしてきた。彼は喜ぶが二人は喧嘩になり別れを選択する。
window
恋愛
イリス公爵令嬢とハリー王子は、お互いに惹かれ合い相思相愛になる。
「私と結婚していただけますか?」とハリーはプロポーズし、イリスはそれを受け入れた。
関係者を招待した結婚披露パーティーが開かれて、会場でエレナというハリーの幼馴染の子爵令嬢と出会う。
「新婚旅行に私も一緒に行きたい」エレナは結婚した二人の間に図々しく踏み込んでくる。エレナの厚かましいお願いに、イリスは怒るより驚き呆れていた。
「僕は構わないよ。エレナも一緒に行こう」ハリーは信じられないことを言い出す。エレナが同行することに乗り気になり、花嫁のイリスの面目をつぶし感情を傷つける。
とんでもない男と結婚したことが分かったイリスは、言葉を失うほかなく立ち尽くしていた。
グラティールの公爵令嬢
てるゆーぬ(旧名:てるゆ)
ファンタジー
ファンタジーランキング1位を達成しました!女主人公のゲーム異世界転生(主人公は恋愛しません)
ゲーム知識でレアアイテムをゲットしてチート無双、ざまぁ要素、島でスローライフなど、やりたい放題の異世界ライフを楽しむ。
苦戦展開ナシ。ほのぼのストーリーでストレスフリー。
錬金術要素アリ。クラフトチートで、ものづくりを楽しみます。
グルメ要素アリ。お酒、魔物肉、サバイバル飯など充実。
上述の通り、主人公は恋愛しません。途中、婚約されるシーンがありますが婚約破棄に持ち込みます。主人公のルチルは生涯にわたって独身を貫くストーリーです。
広大な異世界ワールドを旅する物語です。冒険にも出ますし、海を渡ったりもします。
フルハピ☆悪女リスタート
茄珠みしろ
恋愛
国を襲う伝染病で幼くして母親を失い、父からも愛情を受けることが出来ず、再婚により新しくできた異母妹に全てを奪われたララスティは、20歳の誕生日のその日、婚約者のカイルに呼び出され婚約破棄を言い渡された。
失意の中家に帰れば父の命令で修道院に向かわされる。
しかし、その道程での事故によりララスティは母親が亡くなった直後の7歳児の時に回帰していた。
頭を整理するためと今後の活動のために母方の伯父の元に身を寄せ、前回の復讐と自分の行動によって結末が変わるのかを見届けたいという願いを叶えるためにララスティは計画を練る。
前回と同じように父親が爵位を継いで再婚すると、やはり異母妹のエミリアが家にやってきてララスティのものを奪っていくが、それはもうララスティの復讐計画の一つに過ぎない。
やってくる前に下ごしらえをしていたおかげか、前回とは違い「可哀相な元庶子の異母妹」はどこにもおらず、そこにいるのは「異母姉のものを奪う教養のない元庶子」だけ。
変わらないスケジュールの中で変わっていく人間模様。
またもやララスティの婚約者となったカイルは前回と同じようにエミリアを愛し「真実の愛」を貫くのだろうか?
そしてルドルフとの接触で判明したララスティですら知らなかった「その後」の真実も明かされ、物語はさらなる狂想へと進みだす。
味方のふりをした友人の仮面をかぶった悪女は物語の結末を待っている。
フ ル ハッピーエンディング
そういったのは だ ぁ れ ?
☆他サイトでも投稿してます
幼馴染みを優先する婚約者にはうんざりだ
クレハ
恋愛
ユウナには婚約者であるジュードがいるが、ジュードはいつも幼馴染みであるアリアを優先している。
体の弱いアリアが体調を崩したからという理由でデートをすっぽかされたことは数えきれない。それに不満を漏らそうものなら逆に怒られるという理不尽さ。
家が決めたこの婚約だったが、結婚してもこんな日常が繰り返されてしまうのかと不安を感じてきた頃、隣国に留学していた兄が帰ってきた。
それによりユウナの運命は変わっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる