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選択② 秘めたる思い
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私は、ウルーグの元に来ていた。
彼に、私の結論を伝えに来たのだ。
「姉貴? どうかしたのか?」
「……あなたを、私の婚約者に選んだことを伝えに来たの」
「……はあっ?」
私の言葉に、ウルーグは信じられないというような顔をしていた。
どうやら、彼は自分が選ばれるとは思っていなかったようだ。
「姉貴……兄貴やエルディンを差し置いて、俺が当主に相応しいと思っているのか?」
「ええ、私はそう思っているわ」
「馬鹿げてる……俺なんかが当主なんて……」
「そんなに自分を卑下する必要はないわ。あなたは、とても優しい子。その優しさが、メルスード家には必要だわ。あなたなら、私やイルルド、エルディンにはできないことができるはずよ」
私は、ウルーグならこのメルスード家をさらなる高みに導いてくれると思っていた。
貴族として正当なのは、きっとイルルドだ。だが、そのイルルドにできないことが、ウルーグにはできるはずである。
「……本当に、俺でいいのか?」
「ええ、もう決めたことよ」
「……わかった。腹を括る。やってやるぜ。メルスード家を、俺が導いてやる」
「その意気よ」
ウルーグは、額に汗を浮かべながらそう言い切った。
きっと、まだ自信がないのだろう。それでも、そう決意した彼は勇気がある子だ。
こういう所を見ていると、たまらない。本当に、ウルーグは可愛い弟である。
「さて……姉貴にもう一つ言いたいことがある」
「何かしら?」
「今、こんなことを言っていいのかはわからないが、言っておかなければならないと思う……それによって、姉貴の意見が変わる可能性もあるか。まあ、それでも言うべきだよな」
「え?」
そこで、ウルーグは不安そうな顔になった。
当主になる決意は、しっかりとしていた。だから、何か他に悩むことがあるのだろう。
しかし、なんだろうか。他に問題など、あるのだろうか。
「その……俺は、姉貴のことが好きだ。昔から、姉としてではなく……一人の異性として」
「……え?」
「……やっぱり、言うんじゃなかったか」
ウルーグは、私からすぐに目をそらしてしまった。
いきなりの告白に、私はとても混乱している。昔から、異性として好き。それは、かなり衝撃的なことだった。
だが、意外に納得できた。彼が少し距離を置いていたのが、それが理由だというなら、結構しっくりくるのだ。
「そうだったのね……ありがとう、ウルーグ」
「い、嫌じゃないのか……?」
「嫌な訳ないでしょう。嬉しいわ」
「なっ……」
「これからよろしくね、ウルーグ……」
私は、ウルーグをそっと抱きしめた。
私に好意を抱いていて、それを悟らせないために素っ気なくしていた彼が愛おしくて仕方ない。
私は、ウルーグの妻になる。
この選択は、きっと間違っていないだろう。
優しく私のことを思ってくれている彼となら、きっと楽しい毎日が過ごせるだろう。
彼に、私の結論を伝えに来たのだ。
「姉貴? どうかしたのか?」
「……あなたを、私の婚約者に選んだことを伝えに来たの」
「……はあっ?」
私の言葉に、ウルーグは信じられないというような顔をしていた。
どうやら、彼は自分が選ばれるとは思っていなかったようだ。
「姉貴……兄貴やエルディンを差し置いて、俺が当主に相応しいと思っているのか?」
「ええ、私はそう思っているわ」
「馬鹿げてる……俺なんかが当主なんて……」
「そんなに自分を卑下する必要はないわ。あなたは、とても優しい子。その優しさが、メルスード家には必要だわ。あなたなら、私やイルルド、エルディンにはできないことができるはずよ」
私は、ウルーグならこのメルスード家をさらなる高みに導いてくれると思っていた。
貴族として正当なのは、きっとイルルドだ。だが、そのイルルドにできないことが、ウルーグにはできるはずである。
「……本当に、俺でいいのか?」
「ええ、もう決めたことよ」
「……わかった。腹を括る。やってやるぜ。メルスード家を、俺が導いてやる」
「その意気よ」
ウルーグは、額に汗を浮かべながらそう言い切った。
きっと、まだ自信がないのだろう。それでも、そう決意した彼は勇気がある子だ。
こういう所を見ていると、たまらない。本当に、ウルーグは可愛い弟である。
「さて……姉貴にもう一つ言いたいことがある」
「何かしら?」
「今、こんなことを言っていいのかはわからないが、言っておかなければならないと思う……それによって、姉貴の意見が変わる可能性もあるか。まあ、それでも言うべきだよな」
「え?」
そこで、ウルーグは不安そうな顔になった。
当主になる決意は、しっかりとしていた。だから、何か他に悩むことがあるのだろう。
しかし、なんだろうか。他に問題など、あるのだろうか。
「その……俺は、姉貴のことが好きだ。昔から、姉としてではなく……一人の異性として」
「……え?」
「……やっぱり、言うんじゃなかったか」
ウルーグは、私からすぐに目をそらしてしまった。
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だが、意外に納得できた。彼が少し距離を置いていたのが、それが理由だというなら、結構しっくりくるのだ。
「そうだったのね……ありがとう、ウルーグ」
「い、嫌じゃないのか……?」
「嫌な訳ないでしょう。嬉しいわ」
「なっ……」
「これからよろしくね、ウルーグ……」
私は、ウルーグをそっと抱きしめた。
私に好意を抱いていて、それを悟らせないために素っ気なくしていた彼が愛おしくて仕方ない。
私は、ウルーグの妻になる。
この選択は、きっと間違っていないだろう。
優しく私のことを思ってくれている彼となら、きっと楽しい毎日が過ごせるだろう。
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