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選択① 立派な当主に
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私は、イルルドの元に来ていた。
彼に、私の結論を伝えに来たのだ。
「姉上、どうかしましたか?」
「……あなたを、私の婚約者に選んだことを伝えに来たの」
「……そうですか」
私の言葉に、イルルドは驚いた。
しかし、すぐにその表情は戻る。こういう時にすぐに冷静になれるのは、彼のすごい所だ。
「やっぱり、あなた以上に当主に相応しい人はいないわ。もちろん、二人でもこの家をいい方向に導いてくれるとは思うけど、あなたを差し置いてまで選択するべきでないと思ったの」
「姉上にそう言っていただけて光栄です。ならば、その期待を裏切らないようにしなければなりませんね」
「あなたなら大丈夫。頼りにしているわ、イルルド」
「ええ、任せてください」
イルルドなら、絶対に大丈夫。私は、そう思っていた。
彼は、貴族の鑑だ。そんな彼は、このメルスード家を真っ直ぐに導いてくれるだろう。
「……姉上、もう一つ約束させてください」
「え? 何かしら?」
「私は、姉上のことも必ず幸せにします。それが、選ばれた私の責任だと思っています」
「え? あ、ええ……えっと、よろしく頼むわ」
イルルドは、私の前で跪いてきた。
そして、私の手を取り、そっと口づけをする。
なんだか、少し恥ずかしい。弟にこんなことをされるなんて、少し前までは考えられなかったことだ。
だが、案外悪い気分ではなかった。私は基本的に弟のことが大好きである。だから、彼の言葉を嬉しく思っているのだろう。
私は、イルルドの妻になる。
この選択は、きっと間違っていないだろう。
誠実で真面目な彼は、メルスード家も私のこともしっかりと導いてくれるだろう。
彼に、私の結論を伝えに来たのだ。
「姉上、どうかしましたか?」
「……あなたを、私の婚約者に選んだことを伝えに来たの」
「……そうですか」
私の言葉に、イルルドは驚いた。
しかし、すぐにその表情は戻る。こういう時にすぐに冷静になれるのは、彼のすごい所だ。
「やっぱり、あなた以上に当主に相応しい人はいないわ。もちろん、二人でもこの家をいい方向に導いてくれるとは思うけど、あなたを差し置いてまで選択するべきでないと思ったの」
「姉上にそう言っていただけて光栄です。ならば、その期待を裏切らないようにしなければなりませんね」
「あなたなら大丈夫。頼りにしているわ、イルルド」
「ええ、任せてください」
イルルドなら、絶対に大丈夫。私は、そう思っていた。
彼は、貴族の鑑だ。そんな彼は、このメルスード家を真っ直ぐに導いてくれるだろう。
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「え? 何かしら?」
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「え? あ、ええ……えっと、よろしく頼むわ」
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だが、案外悪い気分ではなかった。私は基本的に弟のことが大好きである。だから、彼の言葉を嬉しく思っているのだろう。
私は、イルルドの妻になる。
この選択は、きっと間違っていないだろう。
誠実で真面目な彼は、メルスード家も私のこともしっかりと導いてくれるだろう。
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