19 / 24
第19話 どのような選択でも
しおりを挟む
私は、自室に戻るために廊下を歩いていた。
当主を誰にするか、誰に妻になるか。また悩んでしまっている。
このままでは、思考がまとまらない。部屋に戻っても、それは変わらないだろう。
「それなら……」
という訳で、私は行き先を変更することにした。
こういう時には、体を動かすべきだ。運動して、すっきりして、改めて思考する方が、今はいいはずである。
こういう時に便利なのは、修練部屋だ。剣術などの武芸を習う場所なので、好きなだけ体を動かすことができる。
「丁度、近いしね……」
この考えに至ったのは、丁度修練部屋の前にいたからだ。
今から、ゆっくりと朝を流すことにしよう。
「あら?」
そう思いながら、修練部屋に入ろうとした私の耳に音が聞こえてきた。
それは、剣を振るう音である。誰か、先客がいるようだ。
「あ、イルルド?」
「む……姉上?」
剣を振るっていたのは、イルルドだった。
よく考えてみると、彼は兄弟の中でも一番ここを利用する人間である。この時間にここにいても、おかしくはない。それを思いつかなかった私は、鈍感だったといえるだろう。
兄弟との婚約を忘れるためにここに来たのに、イルルドと会っては何も意味がない。だが、出て行くのもおかしいので、とりあえず彼と話すしかないだろう。
「今日も鍛錬?」
「ええ、姉上もですか?」
「えっと……少し、体を動かしたくて」
「……なるほど、私達のことで悩んでいるという所ですか」
「え? よくわかったわね……」
イルルドは、私の心を見抜いてきた。
もしかして、表情に出ていたのだろうか。私は、案外わかりやすい人間なのかもしれない。
「結論は出ませんか?」
「ええ、出ていないわ」
「……どのような結論でも、私達は姉上の選択を尊重します。誰が選ばれてもいい。私は、そう思っています」
「イルルド……」
イルルドは、私の目を真っ直ぐに見てきた。
その言葉は、とても心強いものである。
こういう風に、芯の通っている彼は本当に頼もしい。改めて、私は彼の素質を理解する。本当に、彼は当主に相応しい人間だ。
しかし、彼に他の二人が劣っているかというとそうではない。
ウルーグもエルディンも、充分当主としての素質を持っているだろう。
そもそも、当主の素質とはなんなのだろうか。私は、改めてそれを考える。
結局、それは各々の感覚なのかもしれない。三人の誰が当主に相応しいかなんて、考え方によって異なってくるだろう。
だから、私も自分の考えで、当主を決めるべきなのかもしれない。
当主として相応しいか、夫としてどうか、それら全てを総合して考えてみることにしよう。
当主を誰にするか、誰に妻になるか。また悩んでしまっている。
このままでは、思考がまとまらない。部屋に戻っても、それは変わらないだろう。
「それなら……」
という訳で、私は行き先を変更することにした。
こういう時には、体を動かすべきだ。運動して、すっきりして、改めて思考する方が、今はいいはずである。
こういう時に便利なのは、修練部屋だ。剣術などの武芸を習う場所なので、好きなだけ体を動かすことができる。
「丁度、近いしね……」
この考えに至ったのは、丁度修練部屋の前にいたからだ。
今から、ゆっくりと朝を流すことにしよう。
「あら?」
そう思いながら、修練部屋に入ろうとした私の耳に音が聞こえてきた。
それは、剣を振るう音である。誰か、先客がいるようだ。
「あ、イルルド?」
「む……姉上?」
剣を振るっていたのは、イルルドだった。
よく考えてみると、彼は兄弟の中でも一番ここを利用する人間である。この時間にここにいても、おかしくはない。それを思いつかなかった私は、鈍感だったといえるだろう。
兄弟との婚約を忘れるためにここに来たのに、イルルドと会っては何も意味がない。だが、出て行くのもおかしいので、とりあえず彼と話すしかないだろう。
「今日も鍛錬?」
「ええ、姉上もですか?」
「えっと……少し、体を動かしたくて」
「……なるほど、私達のことで悩んでいるという所ですか」
「え? よくわかったわね……」
イルルドは、私の心を見抜いてきた。
もしかして、表情に出ていたのだろうか。私は、案外わかりやすい人間なのかもしれない。
「結論は出ませんか?」
「ええ、出ていないわ」
「……どのような結論でも、私達は姉上の選択を尊重します。誰が選ばれてもいい。私は、そう思っています」
「イルルド……」
イルルドは、私の目を真っ直ぐに見てきた。
その言葉は、とても心強いものである。
こういう風に、芯の通っている彼は本当に頼もしい。改めて、私は彼の素質を理解する。本当に、彼は当主に相応しい人間だ。
しかし、彼に他の二人が劣っているかというとそうではない。
ウルーグもエルディンも、充分当主としての素質を持っているだろう。
そもそも、当主の素質とはなんなのだろうか。私は、改めてそれを考える。
結局、それは各々の感覚なのかもしれない。三人の誰が当主に相応しいかなんて、考え方によって異なってくるだろう。
だから、私も自分の考えで、当主を決めるべきなのかもしれない。
当主として相応しいか、夫としてどうか、それら全てを総合して考えてみることにしよう。
4
お気に入りに追加
1,206
あなたにおすすめの小説
ブスなお前とは口を利かないと婚約者が言うので、彼の愛する妹の秘密は教えませんでした。
coco
恋愛
ブスなお前とは口を利かないと、婚約者に宣言された私。
分かりました、あなたの言う通りにします。
なので、あなたの愛する妹の秘密は一切教えませんよ─。
婚約破棄した王子は年下の幼馴染を溺愛「彼女を本気で愛してる結婚したい」国王「許さん!一緒に国外追放する」
window
恋愛
「僕はアンジェラと婚約破棄する!本当は幼馴染のニーナを愛しているんだ」
アンジェラ・グラール公爵令嬢とロバート・エヴァンス王子との婚約発表および、お披露目イベントが行われていたが突然のロバートの主張で会場から大きなどよめきが起きた。
「お前は何を言っているんだ!頭がおかしくなったのか?」
アンドレア国王の怒鳴り声が響いて静まった会場。その舞台で親子喧嘩が始まって収拾のつかぬ混乱ぶりは目を覆わんばかりでした。
気まずい雰囲気が漂っている中、婚約披露パーティーは早々に切り上げられることになった。アンジェラの一生一度の晴れ舞台は、婚約者のロバートに台なしにされてしまった。
天使のように愛らしい妹に婚約者を奪われましたが…彼女の悪行を、神様は見ていました。
coco
恋愛
我儘だけど、皆に愛される天使の様に愛らしい妹。
そんな彼女に、ついに婚約者まで奪われてしまった私は、神に祈りを捧げた─。
妹の嘘の病により、私の人生は大きく狂わされましたが…漸く、幸せを掴む事が出来ました
coco
恋愛
病弱な妹の願いを叶える為、私の婚約者は私に別れを告げた。
そして彼は、妹の傍に寄り添う事にしたが…?
本当は幼馴染を愛している癖に私を婚約者にして利用する男とは、もうお別れしますね─。
coco
恋愛
私は、初恋の相手と婚約出来た事を嬉しく思って居た。
だが彼は…私よりも、自身の幼馴染の女を大事にしていて─?
私に代わり彼に寄り添うのは、幼馴染の女でした…一緒に居られないなら婚約破棄しましょう。
coco
恋愛
彼の婚約者は私なのに…傍に寄り添うのは、幼馴染の女!?
一緒に居られないなら、もう婚約破棄しましょう─。
私を捨ててまで王子が妃にしたかった平民女は…彼の理想とは、全然違っていたようです。
coco
恋愛
私が居ながら、平民の女と恋に落ちた王子。
王子は私に一方的に婚約破棄を告げ、彼女を城に迎え入れてしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる