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第17話 当主として相応しいのは

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 私は、メルスード家の次期当主を決めることになった。
 その当主の妻に、私はなるのだ。当主と妻になる人物、私はそれを決めなければならないのである。

「難しい問題よね……」

 そのことを考えると、頭が痛くなってきた。
 弟の誰かを夫にするというだけで、難しいことなのに、そこに当主の問題まで付随するというのは、かなり大変なことである。

「まあ、普通に考えると……イルルドになるのかしら?」

 当主にするということを考えた時、一番に思い浮かんできたのはイルルドの顔だった。
 イルルドは、真面目で誠実な子である。貴族としての自覚もしっかりとあるし、最も当主に相応しいのは彼なのではないだろうか。
 他の二人が駄目という訳ではない。ただ、当主としての素質でいえば、イルルドが一番だと思うのである。

「まあ、個人的に支えてあげたいと思うのは、二人の方だけど……」

 ウルーグやエルディンは、支えたいと思えるような二人だ。
 私は少し世話好きな側面があるので、二人の妻になることも悪くないことのように思える。
 だが、やはりイルルドこそ当主に相応しい。だから、彼の妻になるということでいいのではないだろうか。

「さて、そうと決まれば、お父様や三人に知らせに行かないとね。こういうことは、早い方がいいし……」

 この結論は、覆せないと思ったので、私はお父様達に知らせることにした。
 こういうことは、早い方がいい。いつまでも悩んでいても結論は出ないだろうし、最初の直感で決めるべきだろう。
 という訳で、私はお父様の部屋に向かっている。まずはお父様に話して、その流れで三人に話せばいいだろう。

「あら?」

 そんな私の目に、ある光景が目に入ってきた。庭に、ウルーグを見つけたのだ。
 見つけたのは、ウルーグだけではない。彼の腕の中には、子猫がいる。庭に迷い込んできた子猫を、彼が保護したのだろう。
 なんというか、微笑ましい光景だ。こういう風に優しいのが、ウルーグの本質なのである。

「どうするかね……親を探すか? でも……」

 ウルーグは、周囲を見渡していた。
 子猫であるため、親猫とはぐれたと考えて探しているのだろう。
 広い庭であるため、親猫を探すのは大変そうだ。いや、庭に親猫がいるとも限らない。探すのは、かなり大変だろう。

「まあ、頑張るとするかね」
「ニャー……」
「なんだよ。気楽そうに鳴きやがって……」

 ウルーグは笑いながら、庭を歩き始めた。
 彼は、本気でこの中庭を探すつもりのようだ。
 そんな光景を見ていると、私も考えを改めてしまう。ウルーグが当主になっても、問題ないのではないだろうかと。

「私……単純なのかしら?」

 この光景を見て、簡単に考えを変える私は単純なのかもしれない。
 だが、そう思ってしまった。だから、仕方ない。もう少し、考えることにしよう。
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