そんなに優しいメイドが恋しいなら、どうぞ彼女の元に行ってください。私は、弟達と幸せに暮らしますので。

第14話 信じるべき人

　弟達の考えを聞いて、私は中庭で色々と考えていた。
　私は、今後どうしていくべきなのだろうか。考えても、あまり答えは出そうにない。

「悩んでいるようだな……」
「お父様？　どうして、こちらに？」
「いや、歩いていたら、お前の悩んでいる顔が見えたからな……少し、話を聞くべきだと思ったのだ」

　そんな私に、お父様が話しかけてきた。
　悩んでいる顔をしていたので、心配してくれたようだ。

「ありがとうございます……実は、今後、どうしていくか悩んでいて」
「どうしていくか？」
「私は、弟達の誰かに妻になります。そうなるにあたって、これから弟達とどう接していくべきなのかと思ってしまって……」
「なるほど、それに悩んでいるのか」

　お父様は、少し考えるような仕草を見せた。
　きっと、私の立場から見た状況を考えてくれているのだろう。
　これから、私は弟の誰かと結婚することになる。そんな彼らとの接し方について、お父様はどのように考えるのだろうか。

「ふむ……率直な意見を言わせてもらうと、今まで通りでいいのではないだろうか？」
「え？」
「お前達は、姉と弟。その関係は、そう簡単に変えられるものではない。無論、婚約が決まれば変える必要はあるが、それまでは無理に変えなくてもいいだろう」

　お父様の結論は、そのようなものだった。
　弟達への態度を変える必要はない。その言葉に、私は少し安心してしまった。
　色々と悩んでいたが、答えは出なかった。だから、お父様の結論は私にとってとても楽なものである。
　だが、本当にそんな楽な道を選んでいいのだろうか。

「でも、関係性が変わるというなら、私も変わるべきなのではないでしょうか？」
「私は、お前はそうやって悩んで変わる人間ではないと思っている」
「え？」
「お前は変わるべきであるなら、その時に判断して変われる人間だ。このように悩んでいる時点で、今は変わるべき時ではないのだろう。少なくとも、私はそう思っている」

　お父様は、私に対して笑みを浮かべていた。
　その笑みは、私を信頼しているということなのだろう。
　私は変わるべき時に変われる。そう言われても、いまいちわからない。
　だが、お父様がそう言っているなら、そうなのだと思える。お父様が私を信頼しているように、私もお父様のことを信頼しているからだ。

「……わかりました。もう悩むのはやめます。確かに、私はどちらかというと行動する人間ですから」
「ああ、それでいい。その方がお前らしいさ」

　私の言葉に、お父様はまた笑みを浮かべてくれた。
　そのさわやかな笑みに、私は安心するのだった。