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第11話 愚か者(ウルーグ視点)
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姉貴からの言葉は、胸が締め付けられる程痛かった。
俺との婚約は嫌だ。そんな風に、拒絶されているような気がしたからである。
だが、それは仕方ないことだ。俺は、姉貴との婚約を嫌だと言った。それに対して、姉貴がそう言うのは当然のことである。
「くそったれ……」
俺は、近くの壁に頭をぶつけた。
その言葉は、自分自身に向けたものだ。
俺という人間は、本当に子供である。姉貴との婚約が嫌ではないなら、素直にそう言えば良かったのだ。
そう思うのに、俺はいつも自分を偽る。姉貴の優しさに甘えて、俺は自分を隠しているのだ。
「謝れよ……」
姉貴には、ひどいことをしてしまった。
それを謝らなければならない。だが、俺はどういう顔をして姉貴の元に戻ればいいのだろうか。
俺という人間は、いつもこだ。間違いを犯して、どうしたらいいかわからなくなって、結局うやむやにする。
それが駄目なことだとわかっている。いや、行動できていないので、本当はわかっていないのだろうか。
「……ウルーグ」
「……何?」
「何かあったのか?」
そんなことを考えている俺に、話しかけてくる者がいた。
俺の兄であるイルルドだ。
「……別に、何もなかったさ」
「そんな訳がないだろう。壁に頭をぶつけて、深刻そうな顔をしているお前に、何もなかったなどとは考えられない」
「仮に、何かあったとして、お前に話す必要はないだろう」
「力になれるかもしれないぞ」
「力になれないから、そう言っているんだ」
どうやら、イルルドは俺のことを心配しているらしい。
この男は、優秀で真面目で優しい人間だ。同じ三つ子でありながら、俺なんかとは出来が違う完璧な人間である。
そんな男に心配されると、自分が惨めになる。そう思って、俺はこいつの優しさをいつも拒絶してしまう。
そういう所も、俺の悪い所だ。素直にこいつと話し合えたなら、どれ程気が楽になるのだろうか。
「……そこまで言うなら、何も言うまい。だが、あまり姉上に心配をかけるなよ」
「別に、姉貴の話は……」
「関係ないか……まあ、どちらでも構わない」
「なんだよ。全部見透かしたような目で見やがって……」
「……」
イルルドは、俺の言葉に返答することなく去って行った。
その堂々とした後姿を見ていると、どんどん自分が惨めに思える。
どうして、俺はああなれないのだろうか。三つ子であるのに、何故俺はこんなにも愚かなのだろうか。
そうやって後悔しながら、俺は去り行く兄貴をただ見つけているのだった。
俺との婚約は嫌だ。そんな風に、拒絶されているような気がしたからである。
だが、それは仕方ないことだ。俺は、姉貴との婚約を嫌だと言った。それに対して、姉貴がそう言うのは当然のことである。
「くそったれ……」
俺は、近くの壁に頭をぶつけた。
その言葉は、自分自身に向けたものだ。
俺という人間は、本当に子供である。姉貴との婚約が嫌ではないなら、素直にそう言えば良かったのだ。
そう思うのに、俺はいつも自分を偽る。姉貴の優しさに甘えて、俺は自分を隠しているのだ。
「謝れよ……」
姉貴には、ひどいことをしてしまった。
それを謝らなければならない。だが、俺はどういう顔をして姉貴の元に戻ればいいのだろうか。
俺という人間は、いつもこだ。間違いを犯して、どうしたらいいかわからなくなって、結局うやむやにする。
それが駄目なことだとわかっている。いや、行動できていないので、本当はわかっていないのだろうか。
「……ウルーグ」
「……何?」
「何かあったのか?」
そんなことを考えている俺に、話しかけてくる者がいた。
俺の兄であるイルルドだ。
「……別に、何もなかったさ」
「そんな訳がないだろう。壁に頭をぶつけて、深刻そうな顔をしているお前に、何もなかったなどとは考えられない」
「仮に、何かあったとして、お前に話す必要はないだろう」
「力になれるかもしれないぞ」
「力になれないから、そう言っているんだ」
どうやら、イルルドは俺のことを心配しているらしい。
この男は、優秀で真面目で優しい人間だ。同じ三つ子でありながら、俺なんかとは出来が違う完璧な人間である。
そんな男に心配されると、自分が惨めになる。そう思って、俺はこいつの優しさをいつも拒絶してしまう。
そういう所も、俺の悪い所だ。素直にこいつと話し合えたなら、どれ程気が楽になるのだろうか。
「……そこまで言うなら、何も言うまい。だが、あまり姉上に心配をかけるなよ」
「別に、姉貴の話は……」
「関係ないか……まあ、どちらでも構わない」
「なんだよ。全部見透かしたような目で見やがって……」
「……」
イルルドは、俺の言葉に返答することなく去って行った。
その堂々とした後姿を見ていると、どんどん自分が惨めに思える。
どうして、俺はああなれないのだろうか。三つ子であるのに、何故俺はこんなにも愚かなのだろうか。
そうやって後悔しながら、俺は去り行く兄貴をただ見つけているのだった。
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