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第6話 気難しい弟
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私は今後の方針が決まるまで、休むことになった。
しかし、部屋でただ休んでいるというのは、少しつまらない。
という訳で、私は中庭に向かっている。中庭なら、外の空気も吸えるし、緑は綺麗だし、部屋にいるよりも楽しい気分になれると思うのだ。
「あら?」
「うん?」
そこに向かう道中、私の前に見知った人物が現れた。
弟のウルーグである。
ウルーグは、三つ子の真ん中の弟だ。少し捻くれた性格だが、根はとても優しい私の自慢の弟である。
「姉貴か……」
「え? 何よ、そんな嫌そうな顔をして」
「あまり会いたくなかったからな。そういう顔にもなる」
私の顔を見て、ウルーグは表情を歪めた。
いつからか、彼は私に会うとそういう顔をするようになった。姉として、これはとても悲しいことである。
だが、彼は私のことを嫌っている訳ではないはずだ。こうやって顔を合わせると普通に話してくれるので、私はそう思っている。というか、そう思っておかないと悲しくなるので、そう思うことにしている。
「そういえば、親父と何か話していたみたいだな? 何か問題でもあったのか?」
「え? ええ、実は……」
「いや、別にいいや。どうせ、後で親父が教えて来るんだろう? 二回説明されるのも面倒だから、何も言わなくていいぜ」
私に何が起こったか事情を説明相と思ったが、それはウルーグに止められてしまった。
彼はこのように、面倒なことを嫌う性格である。よくいえば、効率的な性格ともいえるだろうか。
彼のこの性格は、長所でもあり短所でもある。今回に関しては、説明すると長くなるので、いい方に働いたといえるだろう。
「ああ、だが、結果だけは教えてくれるか? 何も問題はないのか? 何か問題があったら、面倒だが俺も動かないとならないから、それだけ教えてくれ」
「ええ、問題はないわ」
「そうか。まあ、それならいいさ。それじゃあ、俺はもう行くからな」
「え? もう少し話しましょうよ」
「……仕方ないな」
すぐにこの場を離れようとしたウルーグを、私は引き止めた。久し振りにゆっくりと話せそうなので、もう少し一緒にいたいのだ。
そのお願いを、彼は受け入れてくれた。このように、彼は結構簡単に折れてくれる。こういう風な態度も見せてくれるから、私も嫌われてないと思えるのだ。
「だが、別に俺は話すことなんてないぜ。あんたは、何かあるのかよ?」
「そうね……最近、ウルーグは元気?」
「うん? まあ、健康だとは思うが……」
ウルーグは、特に困ったことがある訳でもないようである。
それは、いい報告だ。弟が元気でいてくれることは、私にとって嬉しいことである。
「なんだよ。そんな笑顔を向けてきて」
「ウルーグが元気でいてくれて、嬉しいのよ」
「相変わらず、変わらないな……」
私の笑顔に、ウルーグは少し呆れていた。
家族が元気でいてくれることを喜ぶのは、そんなにおかしいことだろうか。
こうして、私はしばらくウルーグと談笑するのだった。
しかし、部屋でただ休んでいるというのは、少しつまらない。
という訳で、私は中庭に向かっている。中庭なら、外の空気も吸えるし、緑は綺麗だし、部屋にいるよりも楽しい気分になれると思うのだ。
「あら?」
「うん?」
そこに向かう道中、私の前に見知った人物が現れた。
弟のウルーグである。
ウルーグは、三つ子の真ん中の弟だ。少し捻くれた性格だが、根はとても優しい私の自慢の弟である。
「姉貴か……」
「え? 何よ、そんな嫌そうな顔をして」
「あまり会いたくなかったからな。そういう顔にもなる」
私の顔を見て、ウルーグは表情を歪めた。
いつからか、彼は私に会うとそういう顔をするようになった。姉として、これはとても悲しいことである。
だが、彼は私のことを嫌っている訳ではないはずだ。こうやって顔を合わせると普通に話してくれるので、私はそう思っている。というか、そう思っておかないと悲しくなるので、そう思うことにしている。
「そういえば、親父と何か話していたみたいだな? 何か問題でもあったのか?」
「え? ええ、実は……」
「いや、別にいいや。どうせ、後で親父が教えて来るんだろう? 二回説明されるのも面倒だから、何も言わなくていいぜ」
私に何が起こったか事情を説明相と思ったが、それはウルーグに止められてしまった。
彼はこのように、面倒なことを嫌う性格である。よくいえば、効率的な性格ともいえるだろうか。
彼のこの性格は、長所でもあり短所でもある。今回に関しては、説明すると長くなるので、いい方に働いたといえるだろう。
「ああ、だが、結果だけは教えてくれるか? 何も問題はないのか? 何か問題があったら、面倒だが俺も動かないとならないから、それだけ教えてくれ」
「ええ、問題はないわ」
「そうか。まあ、それならいいさ。それじゃあ、俺はもう行くからな」
「え? もう少し話しましょうよ」
「……仕方ないな」
すぐにこの場を離れようとしたウルーグを、私は引き止めた。久し振りにゆっくりと話せそうなので、もう少し一緒にいたいのだ。
そのお願いを、彼は受け入れてくれた。このように、彼は結構簡単に折れてくれる。こういう風な態度も見せてくれるから、私も嫌われてないと思えるのだ。
「だが、別に俺は話すことなんてないぜ。あんたは、何かあるのかよ?」
「そうね……最近、ウルーグは元気?」
「うん? まあ、健康だとは思うが……」
ウルーグは、特に困ったことがある訳でもないようである。
それは、いい報告だ。弟が元気でいてくれることは、私にとって嬉しいことである。
「なんだよ。そんな笑顔を向けてきて」
「ウルーグが元気でいてくれて、嬉しいのよ」
「相変わらず、変わらないな……」
私の笑顔に、ウルーグは少し呆れていた。
家族が元気でいてくれることを喜ぶのは、そんなにおかしいことだろうか。
こうして、私はしばらくウルーグと談笑するのだった。
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