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 私は、ウェルリフ伯爵から、彼自身の話を聞くことになった。
 それで、私の心の疑念は晴れるのか。それは、未だわからない。

「まず前提として……もし、僕が本当に冷酷な殺人鬼であるならば、今頃牢屋の中にいますよ」
「……ばれないように、殺人を犯しているということなのではありませんか?」
「そんな人物なら、血塗られなどという異名で呼ばれることはないでしょう?」
「た、確かに……」

 ウェルリフ伯爵の言葉は、納得できるものだった。
 彼は血塗れ伯爵という異名で呼ばれている。それは、紛れもない事実だ。
 火のない所に煙は立たない。ということは、彼はそういう噂が立つようなことをしているということである。
 それは、この場合殺人ということになるだろう。それなのに、彼は捕まっていない。それは一体、どういうことなのだろうか。

「あなたは、冷酷な殺人鬼ではない……」
「ええ、そうです。といっても、それを僕が肯定した所で、意味はありませんね。結局。それは個々の判断ということになるのでしょうから」
「なんだか、よくわかりません……」
「そうですね……それを今から説明しましょう。ここから先の話が、重要な部分です」

 ウェルリフ伯爵は、笑みを浮かべていた。
 それは、少し悲しみを含んでいるように見える。
 何か事情があるのだろう。そう思わせるような笑みだ。彼を疑っているので、心からそう思える訳ではないが。

「まず、事実として、僕は人を殺しています。実に、五人も……」
「ご、五人も……?」
「ええ、ですが、僕は法の裁きを受けていません。つまり、僕の殺人は法によって正当なものであるという証明がされているのです」
「正当なもの……?」

 私は、困惑していた。彼が五人も殺害しており、それを認めているのに、法の裁きを受けていない。それは、どういうことなのだろうか。

「法律に関して、細部まで知っている人間というものは多くありません。ですが、僕に適用された法律は、大抵の人間が知っていると思います」
「大抵の人間が知っている……」

 混乱する私に、ウェルリフ伯爵がヒントをくれた。
 大抵の人間が知っている、罪にならない殺人。その言葉で、私はある言葉を思いついた。

「……あなたの殺人は、正当防衛だったということですか?」
「ええ、その通りです」
「五件、全てが?」
「ええ、五件全てが、です」
「そんな……」

 彼の口から紡ぎ出された言葉を、私はにわかには信じられなかった。
 五件の殺人が、全て正当防衛。そんなことがあるのだろうか。
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