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95.疲労した時

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 私とドルキンスは、空き教室で倒れていた。単純に、疲れたからである。
 魔力の放出とそれを制御する修行は、かなり疲労するものだった。思っていた以上に、辛いものだったのだ。
 そもそも、魔力を消費するのは疲れる。それに加えて、魔力を制御するというのは集中力がいる。それにより、精神的にもかなりきつい。
 こうして、肉体的にも精神的にも疲れた私達は、空き教室の床に転がることになったのである。

「シズカ嬢、大丈夫か?」
「ええ、なんとか……ドルキンスこそ、大丈夫なの?」
「ああ、俺は体力だけはあるからなあ……」

 言葉とは裏腹に、ドルキンスは息を切らしていた。いくら体力があるといっても、この修行はかなり疲れたのだろう。
 そもそも、魔力の制御に関しては集中力といった精神的な面で消耗する。そちらはいくら体力があっても厳しいだろう。

「兄上も、中々厳しい修行を進めてくるものだなあ……魔法の訓練というと、もっと魔弾とかから始まるのかと思っていたんだが……」
「それは、確かにそうだね。思っていた以上に、強引というか、なんといか……」

 ディゾール様の示した訓練は、かなり強引なような気がする。普通に考えて、ここまで疲れるのはおかしいと思うからだ。
 確かに、これは効率的なのかもしれない。ただ、初心者としてはもう少し簡単な訓練が良かった所である。
 ちなみに、今はディゾール様はいない。所用で生徒会室へと戻って行ったのだ。

「……うん?」
「ドルキンス? どうかしたの?」

 そこで、ドルキンスが少し怪訝そうな声をあげた。
 その声に反応して、私は彼の視線を追う。すると、少し離れた場所から私達を見ているキャロムがいる。

「キャロム君、どうかしたのか? そんなにこっちを見て……」
「……」
「む? 聞こえていないのか?」

 キャロムは、私達とは別の訓練をディゾール様に言い渡された。初心者の私達と違って、彼は基礎から学ぶ必要はないのだ。
 そのため、彼はまだその訓練をしている。そんな中で、何故か私達の方に視線を向けていたのだ。

「もしかして、疎外感とか感じているのかな?」
「疎外感か……それは、確かにあり得るかもしれないな」

 その様子に、私はそんなことを思った。
 私は、ドルキンスと一緒に訓練できて、色々と話すこともできる。
 だが、キャロムにはそれがない。そのため、こちらが羨ましいのかもしれない。

「どうする? 俺達も向こうに行くか?」
「そうだね……でも、結構危ない気もするんだけど」
「それは……そうだな」

 ドルキンスの言葉に、私は完全に頷けなかった。なぜなら、今キャロムの周りは、とても危険だからだ。
 彼は今、ディゾール様から言い渡された魔法を修行している。近寄った場合、その巻き沿いを食らいかねない。
 しかも、彼には今、その魔法によって声も聞こえていないようだ。少なくとも、あの修行が終わるまで、彼に近づくのはやめておいた方がいいだろう。
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