上 下
67 / 132

67.治療の結果

しおりを挟む
「アルフィアさん、調子はどうだい?」
「あら? キャロム?」

 そこで、私達の元にキャロムがやって来た。彼がやって来たということは、レフェイラの治療が終わったということだろうか。

「レフェイラは、どうなったの?」
「とりあえず、元には戻ったよ。念のため、ベッドで寝てもらっているけど、多分大丈夫だとは思う」
「そう……それなら、良かったわね」
「ああ、僕も安心しているよ」

 キャロムは、本当に安心しているようだ。それが、表情から伝わってくる。
 レフェイラが元に戻ったことは、嬉しいことだ。これで、私達の目的の一つは果たすことができたといえる。

「レフェイラは何か言っていたかしら?」
「ああ、自分が暗黒の魔女に支配されたことは、覚えていたよ。自分が彼女の掌の上で踊らされていたことも理解していた」
「なるほど……」

 レフェイラは、状況を理解しているようだ。それは、こちらとしては話が早いので、ありがたいことである。

「彼女には、ドルキンスがついてくれている。だから、僕もこっちに参加するよ。何か収穫はあったのかい?」
「ええ、魂を結合する魔法があることがわかったわ。それがあれば、アルフィアの魂を元に戻すことができるみたい。ただ、今はもう一つ見つかった謎について議論しているの」
「謎?」
「この紙なんだけど……シャザームの筆跡とは明らかに違う魂奪取魔法の資料なのよ。どうして、彼女がこんなものを取っているのかがわからないの」

 私は、キャロムにシャザームが取っている謎の紙を見せた。すると、キャロムは不思議そうな顔をする。その内容を見て、取っておく価値がないものだとわかったからだろう。

「確かに、一般的なことが書いてあるだけのこんな紙を取っておくというのは、不思議だね……誰か、思い出の人が書いたとかかな?」
「ああ、その可能性はあるわね……」

 キャロムの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 確かに、彼の言うような可能性はあるだろう。シャザームが慕っている誰かが書いたものを残している。心理として、それは理解できるものだ。

「いや、でも、それでも色々と違和感があるか……少し調べてみようか」
「調べる? 何を?」
「もちろん、魔法さ。これがいつ書かれたかを確かめる魔法があるのさ」
「そうなのね……」

 キャロムの言葉に、私は少し困惑しながら頷いた。
 そんな魔法があることへの驚き、どうしてその魔法を使わなければならないのかという疑問、色々とあったが、とりあえずそれは流すことにした。
 基本的に、キャロムは賢い。だから、彼に任せておけばいいだろう。どういう意図があるかは、後で聞けばいいことだ。

「さて、それじゃあ……」
「いや、待て。魔法なら俺が使う。お前は少し休んでいろ」
「生徒会長……そうかい、ありがとう。助かるよ」

 魔法を使おうとしたキャロムを、ディゾール様が止めた。
 よく考えてみれば、キャロムは既に魔法を使っている。魂に関する魔法は高度な魔法だ。それで疲れていない訳がない。
 そんな彼を気遣って、ディゾール様は代わったのだ。流石は、生徒会長。色々と気が利く人である。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

自己中すぎる親友の勘違いに巻き込まれ、姉妹の絆がより一層深まったからこそ、お互いが試練に立ち向かえた気がします

珠宮さくら
恋愛
とある国にシャーリー・オールポートという侯爵令嬢がいた。そんな彼女のことを親友だとしつこく言い続けていたのは伯爵令嬢で、これまでも周りはたくさんシャーリーの名前と侯爵家の名前を出して迷惑していた。 そんな彼女が婚約破棄をしようと必死になっているのを知って、シャーリーは不思議に思っていたが、そこからシャーリーの姉のことをどう思っていたかを知ることになる前には、人の話も聞かずにシャーリーは彼女から平手打ちをされていた。 そんなことがあって、シャーリーは姉妹の絆を深めることになるとは思いもしなかった。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

悪役令嬢なのに下町にいます ~王子が婚約解消してくれません~

ミズメ
恋愛
【2023.5.31書籍発売】 転生先は、乙女ゲームの悪役令嬢でした——。 侯爵令嬢のベラトリクスは、わがまま放題、傍若無人な少女だった。 婚約者である第1王子が他の令嬢と親しげにしていることに激高して暴れた所、割った花瓶で足を滑らせて頭を打ち、意識を失ってしまった。 目を覚ましたベラトリクスの中には前世の記憶が混在していて--。 卒業パーティーでの婚約破棄&王都追放&実家の取り潰しという定番3点セットを回避するため、社交界から逃げた悪役令嬢は、王都の下町で、メンチカツに出会ったのだった。 ○『モブなのに巻き込まれています』のスピンオフ作品ですが、単独でも読んでいただけます。 ○転生悪役令嬢が婚約解消と断罪回避のために奮闘?しながら、下町食堂の美味しいものに夢中になったり、逆に婚約者に興味を持たれたりしてしまうお話。

闇黒の悪役令嬢は溺愛される

葵川真衣
恋愛
公爵令嬢リアは十歳のときに、転生していることを知る。 今は二度目の人生だ。 十六歳の舞踏会、皇太子ジークハルトから、婚約破棄を突き付けられる。 記憶を得たリアは前世同様、世界を旅する決意をする。 前世の仲間と、冒険の日々を送ろう! 婚約破棄された後、すぐ帝都を出られるように、リアは旅の支度をし、舞踏会に向かった。 だが、その夜、前世と異なる出来事が起きて──!? 悪役令嬢、溺愛物語。 ☆本編完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢は王子の溺愛を終わらせない~ヒロイン遭遇で婚約破棄されたくないので、彼と国外に脱出します~

可児 うさこ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。第二王子の婚約者として溺愛されて暮らしていたが、ヒロインが登場。第二王子はヒロインと幼なじみで、シナリオでは真っ先に攻略されてしまう。婚約破棄されて幸せを手放したくない私は、彼に言った。「ハネムーン(国外脱出)したいです」。私の願いなら何でも叶えてくれる彼は、すぐに手際を整えてくれた。幸せなハネムーンを楽しんでいると、ヒロインの影が追ってきて……※ハッピーエンドです※

処理中です...