48 / 70
第48話 怪我している騎士
しおりを挟む
私とイルディンは、ダルケンさんとともに村長の家に来ていた。
村長が案内してくれたのは、とある一室である。そこには、一つのベッドがあり、その上には一人の男性が寝転がっている。
「ダルケンさん……この方達が?」
「ええ、アルメネア・ラガンデ様とイルディン・ラガンデ様です」
「そうですか……このような姿で申し訳ありません。自分は、騎士のログバン・エーリンドと申します」
ベッドの上のログバンさんは、私達を見て、体を起こそうとした。
しかし、それは明らかに危ないことである。なぜなら、ログバンさんの腹部には、包帯が巻いてあるからだ。
「ログバンさん、そのままで結構です。無理に体を起こす必要はありません」
「申し訳ありません……」
イルディンは、そんなログバンさんを制止した。
当然のことではあるが、こんな状態の人に無理はさせられない。
「それより、何が起こっているのですか? その怪我といい、何か大変なことがあったように思えますが……」
「わかりました。まずは、それをお話ししましょう。村長、自分が知らない部分を話してもらえますか?」
「ええ、もちろんです」
ログバンさんの言葉に、村長はゆっくりと頷いた。
この村で何があったか、それはこの二人から聞けるようだ。
「既にご存知とは思いますが、この村は害獣による作物被害に悩まされていました。多くの作物が荒らされてしまい、その害獣に私達も対抗できない程でした。そこで、領主であるラガンデ家様に相談することになったのです」
「ええ、その相談は、僕が取り扱いましたね。それで、騎士団に協力を要請したはずです」
「その要請で、こちらのログバンさんが来てくれました。彼は、とても誠実な騎士です。私達に寄り添いながら、害獣の対策にあってくれました」
村長は、ログバンさんの方を見ながら、彼を誉めていた。
ログバンさんがまともな騎士であることは、わかっていたことだ。
こちらに来た時の接し方からも、怪我をしている様子からも、それはわかる。彼は、真面目な騎士だろう。彼自身には、特に問題はなかったはずだ。
「ただ、それでも、奴に勝てなかったのです。その結果、ログバンさんはこのように怪我をして、動けない状況になってしまったのです」
「動けない状態ですか……」
村長は、ログバンさんの腹部を悲しそうな瞳で見つめた。
その怪我が、何によって負わされたものかは考えるまでもない。
害獣と戦い、彼はこのようになってしまったのである。つまり、この村を荒らす害獣はかなり凶悪なものであるということだ。
村長が案内してくれたのは、とある一室である。そこには、一つのベッドがあり、その上には一人の男性が寝転がっている。
「ダルケンさん……この方達が?」
「ええ、アルメネア・ラガンデ様とイルディン・ラガンデ様です」
「そうですか……このような姿で申し訳ありません。自分は、騎士のログバン・エーリンドと申します」
ベッドの上のログバンさんは、私達を見て、体を起こそうとした。
しかし、それは明らかに危ないことである。なぜなら、ログバンさんの腹部には、包帯が巻いてあるからだ。
「ログバンさん、そのままで結構です。無理に体を起こす必要はありません」
「申し訳ありません……」
イルディンは、そんなログバンさんを制止した。
当然のことではあるが、こんな状態の人に無理はさせられない。
「それより、何が起こっているのですか? その怪我といい、何か大変なことがあったように思えますが……」
「わかりました。まずは、それをお話ししましょう。村長、自分が知らない部分を話してもらえますか?」
「ええ、もちろんです」
ログバンさんの言葉に、村長はゆっくりと頷いた。
この村で何があったか、それはこの二人から聞けるようだ。
「既にご存知とは思いますが、この村は害獣による作物被害に悩まされていました。多くの作物が荒らされてしまい、その害獣に私達も対抗できない程でした。そこで、領主であるラガンデ家様に相談することになったのです」
「ええ、その相談は、僕が取り扱いましたね。それで、騎士団に協力を要請したはずです」
「その要請で、こちらのログバンさんが来てくれました。彼は、とても誠実な騎士です。私達に寄り添いながら、害獣の対策にあってくれました」
村長は、ログバンさんの方を見ながら、彼を誉めていた。
ログバンさんがまともな騎士であることは、わかっていたことだ。
こちらに来た時の接し方からも、怪我をしている様子からも、それはわかる。彼は、真面目な騎士だろう。彼自身には、特に問題はなかったはずだ。
「ただ、それでも、奴に勝てなかったのです。その結果、ログバンさんはこのように怪我をして、動けない状況になってしまったのです」
「動けない状態ですか……」
村長は、ログバンさんの腹部を悲しそうな瞳で見つめた。
その怪我が、何によって負わされたものかは考えるまでもない。
害獣と戦い、彼はこのようになってしまったのである。つまり、この村を荒らす害獣はかなり凶悪なものであるということだ。
0
お気に入りに追加
1,834
あなたにおすすめの小説
婚約者様。現在社交界で広まっている噂について、大事なお話があります
柚木ゆず
恋愛
婚約者様へ。
昨夜参加したリーベニア侯爵家主催の夜会で、私に関するとある噂が広まりつつあると知りました。
そちらについて、とても大事なお話がありますので――。これから伺いますね?
王宮の幻花 ~婚約破棄された上に毒殺されました~
玄未マオ
ファンタジー
婚約破棄からの毒殺、霊体になってからが勝負です!
婚約者であった王太子から婚約破棄を宣言されたロゼライン公爵令嬢。
その後、毒物による死は自殺と判断されたが、実は違っていた。
幽霊になったロゼライン。
自分を殺した人間たちに復讐のつもりが、結果として世直しになっちゃうのか?
ここから先は若干ネタバレ。
第一章は毒殺されたロゼラインが生前親しかった人たちとともに罪をあばいていきます。
第二章は第二部では、精霊の世界でロゼラインの身(魂)のふりかたを考えます。
冒頭は今までとガラッと変わって猫々しく重い話から入ります。
第三章は第一章の約五十年後の話で、同じく婚約破棄からの逆転劇。
これまでのヒロインも出てきますが、サフィニアやヴィオレッタという新キャラが中心に物語が動き、第三章だけでも独立した物語として読めるようになっております。
重ね重ねよろしくお願い申し上げます<(_ _)>。
第一章と第二章半ばまでを短くまとめた
『黒猫ですが精霊王の眷属をやっています、死んだ公爵令嬢とタッグを組んで王国の危機を救います』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/886367481/338881929
を、現在連載しております。
こちらをサクッと呼んでから三章読んでも理解できるようまとめております。
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください
今川幸乃
恋愛
アスカム公爵家の跡継ぎ、ベンの元に嫁入りしたアンナは、アスカム公爵から「息子を助けてやって欲しい」と頼まれていた。幼いころから政務についての教育を受けていたアンナはベンの手が回らないことや失敗をサポートするために様々な手助けを行っていた。
しかしベンは自分が何か失敗するたびにそれをアンナのせいだと思い込み、ついに「余計なことをするな」とアンナに宣言する。
ベンは周りの人がアンナばかりを称賛することにコンプレックスを抱えており、だんだん彼女を疎ましく思ってきていた。そしてアンナと違って何もしないクラリスという令嬢を愛するようになっていく。
しかしこれまでアンナがしていたことが全部ベンに回ってくると、次第にベンは首が回らなくなってくる。
最初は「これは何かの間違えだ」と思うベンだったが、次第にアンナのありがたみに気づき始めるのだった。
一方のアンナは空いた時間を楽しんでいたが、そこである出会いをする。
【完結】王太子妃候補の悪役令嬢は、どうしても野獣辺境伯を手に入れたい
たまこ
恋愛
公爵令嬢のアレクサンドラは優秀な王太子妃候補だと、誰も(一部関係者を除く)が認める完璧な淑女である。
王家が開く祝賀会にて、アレクサンドラは婚約者のクリストファー王太子によって婚約破棄を言い渡される。そして王太子の隣には義妹のマーガレットがにんまりと笑っていた。衆目の下、冤罪により婚約破棄されてしまったアレクサンドラを助けたのは野獣辺境伯の異名を持つアルバートだった。
しかし、この婚約破棄、どうも裏があったようで・・・。
病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』
メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。
(本編完結・番外編更新中)あの時、私は死にました。だからもう私のことは忘れてください。
水無月あん
恋愛
本編完結済み。
6/5 他の登場人物視点での番外編を始めました。よろしくお願いします。
王太子の婚約者である、公爵令嬢のクリスティーヌ・アンガス。両親は私には厳しく、妹を溺愛している。王宮では厳しい王太子妃教育。そんな暮らしに耐えられたのは、愛する婚約者、ムルダー王太子様のため。なのに、異世界の聖女が来たら婚約解消だなんて…。
私のお話の中では、少しシリアスモードです。いつもながら、ゆるゆるっとした設定なので、お気軽に楽しんでいただければ幸いです。本編は3話で完結。よろしくお願いいたします。
※お気に入り登録、エール、感想もありがとうございます! 大変励みになります!
転生したら侯爵令嬢だった~メイベル・ラッシュはかたじけない~
おてんば松尾
恋愛
侯爵令嬢のメイベル・ラッシュは、跡継ぎとして幼少期から厳しい教育を受けて育てられた。
婚約者のレイン・ウィスパーは伯爵家の次男騎士科にいる同級生だ。見目麗しく、学業の成績も良いことから、メイベルの婚約者となる。
しかし、妹のサーシャとレインは互いに愛し合っているようだった。
二人が会っているところを何度もメイベルは見かけていた。
彼は婚約者として自分を大切にしてくれているが、それ以上に妹との仲が良い。
恋人同士のように振舞う彼らとの関係にメイベルは悩まされていた。
ある日、メイベルは窓から落ちる事故に遭い、自分の中の過去の記憶がよみがえった。
それは、この世界ではない別の世界に生きていた時の記憶だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる