婚約破棄された余り同士、婚約してみますか？

３１

　月日は過ぎ去り、私達は結婚式の日を迎えていた。
　アルグナ様から時期の相談を持ち掛けられてから、話はとても早く進んで行った。あまりに早すぎて、私の気持ちが追いついていないくらいだ。

　だが、私は現に花嫁衣裳に身を包んでいる。
　このドレスを着て、やっと理解できる程、私の気持ちより先にことが進んでいたのだ。

「準備はできているけど……」

　色々と気持ちも落ち着いてきて、結婚式に対しては特に何も問題はないだろう。
　ただ、私の心の中には一つだけ心残りがあった。それは、妹であるセレリアのことだ。

　今日の式には、当然私の家族やエリグス様の家族、それ以外にも多くの人々が参加している。
　しかし、セレリアはこの式に来ていないらしいのだ。

　色々とあったため、彼女と私との関係は悪くなっている。いや、彼女とペルート家の関係といっても差し支えはないだろう。
　そのため、結婚式に来たくないという気持ちはわかる。だが、私は複雑な気持ちなのだ。

　セレリアとオーフィス様の事件があるまで、私達は普通の姉妹だったはずである。
　別に、特別に仲が良かったという訳ではないが、それでも嫌い合っていたとかそういう訳ではなかった。何もなければ、きっと結婚式に来てくれていただろう。
　いつから道を間違えたのか。それは最早わからない。もしかしたら、セレリアとオーフィス様が出会った時から、私達の道は分かれる定めだったのだろうか。

「考えても、無駄なことよね……」

　私は、自分の考えを否定した。
　これ以上、彼女のことを考えても無駄だろう。いくら悩んだところで、彼女がここに来る訳ではない。
　それに、彼女がここに来たとしても、私も何か言えるとは限らないだろう。私ももちろん彼女に複雑な感情を抱いている。セレリアが来てくれたからといって、色々なことが解決する訳ではないのだ。

「失礼します」
「あっ……どうぞ、入ってください」

　そんなことを考えていると、戸を叩く音と男性の声が聞こえてきた。
　ゆっくりと戸を開き、私の夫となる人が部屋に入って来る。

「……綺麗ですね」
「エリグス様も、かっこいいですよ」

　私達は、お互いに褒め合った。
　彼に褒められることは、とても嬉しいことだ。ただそれだけで、幸せな気持になれる。

「……本当に色々とありましたが、僕はあなたとこうなることができて、幸せだと思っています。どうか、これからもよろしくお願いしますね」
「……ええ、もちろんです」

　私は、彼の手をゆっくりと取った。
　その温もりを噛みしめて、私は幸せを実感する。
　きっと、この幸せは続いていくだろう。私の隣に、彼がいてくれる限り。