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 エリグス様が帰ってから、私は自室に戻ろうとしていた。
 そんな私の目に、中庭にいる妹が入って来る。妹は、遠い目をして、どこかを見つめていた。その目は、なんというか哀愁に満ちている。

「セレリア? 何をしているの?」
「あら? お姉様? エリグス様との話し合いは、もう終わったのですか?」
「終わった……というか、そこで話していたのだけど……」

 落ちこむ妹が流石に可哀想だったので、一応話しかけることにした。
 この妹には、婚約に関して色々と迷惑をかけられた。だが、悲しそうな姿を見ていると、話を聞いてあげたくなってしまったのだ。

「そうですか……それで、あの方とは上手くいっているのですか?」
「悪くはないと思うけど……」

 妹は、私に対して少し不満そうに質問してきた。
 なんだか、機嫌はあまり良くないようだ。
 もしかして、自分が上手くいっていないから、私を疎んでいるのだろうか。そうだとしたら、とても自己中心的な考えである。元々、自分が婚約破棄したというのに。
 最も、それは私の感じ方かもしれない。あまり、疑うのは良くないだろう。

「彼に、好意を抱いているのですか?」
「え? まあ、元々、利害の一致で婚約することになったというか、そこまで特別に思い入れがある訳ではないけど……嫌いではないし、どちらかと言えば、好きになるのかしら?」「なるほど、順風満帆なようで何よりです」

 私のエリグス様への評価に、セレリアはまたも不満そうだ。
 その態度を見ていると、先程否定した考えが蘇ってくる。そんなに、私達が上手くいっていることが気に入らないのだろうか。
 前々から、この妹は少し自己中心的な面があった。しかし、ここまでひどかったとは意外である。
 自分が上手くいっていないからといって、他者にその不満はぶつけないで欲しい。増してや、私達の婚約する原因となった彼女がそういう態度をするのは、絶対に違うだろう。

「あなたの方は……あまり上手くいっていないの?」
「それは……」

 私の質問に、セレリアは言葉を詰まらせた。
 どうやら、私の予想は当たっていたようである。
 オーフィス様とセレリアは、上手くいっていないのだ。だから、こんなに不満気なのだろう。
 だが、何故、上手くいっていないのだろうか。あれ程周りを見ずに、愛し合っていることを主張していたのに、どうしてそのようなことになるのだろう。
 そのことは、少しだけ気になった。気になったから、私は態度が少し悪い妹に、もう少しだけ付き合うことにするのだった。
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