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36.動揺する教室

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 ナルネア嬢がマグナード様に詰められた次の日、彼女は教室に来なかった。
 体調不良で登校することができないらしい。その状態は、しばらく続きそうだ。もしかしたら、マグナード様と同じクラスの間は、登校できないかもしれない。

 ロダルト様に続き、クラスメイトがまた一人減ることになった。
 その事実に、クラスは少なからず動揺している。

 その二人に、私が関わっていることは明らかだった。
 ロダルト様は言うまでもなく婚約者だった訳だし、ナルネア嬢が私に詰め寄っていたのは周知の事実だ。

 なんというか、私の立場がまた一つ悪くなったような気がする。
 ただこれに関しては、仕方ないことだろう。あの二人については、なんとかしなければならない問題だったのだから。

「願わくは、これ以上火の粉が降りませんように……」

 ナルネア嬢の取り巻き達が私を害することは、まずないだろう。
 彼女達に、そんな覇気がある訳がない。ナルネア嬢をそこまで狂信的に慕っていた人はいないだろうし、マグナード様のことも怖いだろう。

 エムリーについても、多分大丈夫だ。
 ことが終わってからも、彼女の情報は仕入れているが、特に動きはない。
 彼女は基本的には、合理的である。恐らく今は、ルヴィード子爵家の一員として利益を得ることしか考えていないのだろう。

「イルリア嬢、大丈夫ですか?」
「あ、はい。私は、大丈夫です」
「そうですか」

 そんな風に考えていると、マグナード様が声をかけてくれた。
 正直な所、私は自体をそんなに重たく考えているという訳でもない。はっきりと言って、人からこういった目を向けられる環境には、なれているからだ。

 エムリーのせいで、私は白い目で見られていた。今の状況は、それとほとんど変わらない。
 というか、マグナード様という心強い味方がいることもあって、気は楽だ。

 まあ少し経てば、この状況も改善されていくだろう。
 結局の所、貴族社会は生き残った者が認められる。今の状況は、勝者である私が一目置かれていると、捉えてもいいかもしれない。

「……イルリア嬢、少しよろしいでしょうか?」
「え?」

 そこで私は、少し驚くことになった。
 見慣れない令嬢に、話しかけられたからだ。
 彼女は一体、誰なのだろうか。このクラスの人ではないと思うのだが。

「な、なんですか?」
「あなたと少し話したいのです」

 その人物が発した言葉に、私は少し気が重くなった。
 また私に問題が降りかかってくるかもしれない。マグナード様と仲良くしていることへの嫉妬だったりするのだろうか。何にせよ、気が進まない。

「マグナード様も、よろしいでしょうか?」
「え? 僕もですか?」
「ええ、私はお二人と話したいのです」

 令嬢の言葉に、私とマグナード様は顔を見合わせることになった。
 私と彼と話したい。その提案は予想外である。一体彼女は何者で、何を考えているのだろうか。
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