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26.新鮮な反応

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「……ありがとうございます。お陰で、助かりました」
「……いや」

 ナルネア嬢が去ってから、私はブライト殿下に頭を下げた。
 この場を切り抜けることができたのは、彼のお陰だ。恐らく偶然、私が連れて行かれる所を見ていたのだろうが、本当に助かった。

「俺は単に気に入らなかったというだけだ。ナルネア嬢のやり方がな。ああいうのは、俺の嫌いなタイプだ」
「そ、そうですか……」

 ブライト殿下は、本当に忌々しそうにしていた。
 それだけナルネア嬢のことが気に入らないのだろうが、そういう反応は少し新鮮である。つい先日までマグナード様と接していたからだろうか。こうも堂々と相手を批判する様が、なんだか清々しい。

「所で、マグナードの名前が聞こえたが……」
「ああ、それは……私がマグナード様と親密にしていることで、彼女達が怒っていたというか」
「なるほど、そういうことか」

 そこでブライト殿下は、マグナード様のことを訪ねてきた。
 マグナード様の父親、ビルドリム公爵は国王様の弟だ。つまり、ブライト殿下とマグナード様は、いとこ同士ということになる。
 親戚の名前が聞こえてきたことも、彼が私を助けた理由かもしれない。彼としても、親戚の厄介ごとは避けたいだろうし、その可能性はある。

「あいつは、優しくて人気があるからな。嫉妬に狂ったという訳か」
「そうなのでしょうね……それに関しては、私の失敗だったような気もします」

 ナルネア嬢の怒りは理不尽なものではあるが、理解できないという訳でもなかった。
 彼女くらいの地位ならば、マグナード様を狙っていてもおかしくはない。そういう人達を刺激しないためにも、彼との関係は考えるべきものだったのだろう。
 色々とあって、私は失念していた。エムリーとのことといい、私は駄目駄目だ。

「別にあなたが気にすることではないだろう。マグナードが誰と親密になるのかは、マグナードが決めることだ。そこに他者の意思が介入するなど、歪なだけだ」
「でも、人間関係を円滑にするためには、多少は気に掛けるべきことだったと思ってしまうのです」
「理解できない訳ではないが、ナルネア嬢の行いはよくわからない。あんなことをして、得になることなどないだろう。あなたがマグナードに事実を伝えたりしたら、それこそ一巻の終わりだというのに」

 高い地位にあるためか、ブライト殿下には私とナルネア嬢のやり取りが理解できないのかもしれない。本当に悩んでいる彼を見て、私はそう思っていた。
 ただ同時に、私はブライト殿下に好感を抱いていた。マグナード様もそうではあるが、高い地位にいる人達が善性を持っているというのは、嬉しい事実だからだ。
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