上 下
24 / 100

24.呼び出しの理由は

しおりを挟む
 生徒や教師、その他色々な人が、魔法学園にはいる。
 この学び舎は、人に溢れた場所なのだ。もしかしたらこの国で、一番人が多い場所かもしれない。
 しかしそんな魔法学園にも、人気のない場所はある。例えば、校舎裏などだ。私は今、そこで複数人の女性に囲まれていた。

「さてと……」

 その女性達の中心にいるのは、ナルネア・オルガー侯爵令嬢だ。
 彼女は少しだけその表情を醜悪に歪めながら、こちらを睨みつけている。

「あなた、一体どういうつもりなのですか?」

 ナルネア嬢は、とても端的な問いかけをしてきた。
 それがどういう意味であるかは、理解しているつもりだ。ただ念のため聞いておいた方がいいだろう。彼女が一体、何に怒っているのかを。

「……質問の意図を計りかねます。それは何に対する質問なのでしょうか?」
「白々しいことを言って! ナルネア様に失礼ですよ?」
「そうです。ただでさえ、あなたの行いは目に余るというのに!」

 私が問いかけると、ナルネア嬢の周囲の令嬢達が言葉を発した。
 彼女達も、ひどく怒っている様子だ。それが本人の意思なのか、それともナルネア嬢への忠誠心からのものなのかはわからないが、彼女達は私との距離を詰めて来る。

「皆さん。イルリア嬢のご指摘はごもっともです。確かに、私も言葉が足りませんでしたから」
「ナ、ナルネア様?」
「す、すみません、出過ぎた真似をしました」
「いいえ、いいのですよ」

 そんな取り巻きを鎮めたのは、ナルネア嬢だった。
 彼女は、にこにことしながら私の方を見てきている。相変わらず目が笑っていないので、今のは別に私を気遣っているとか、そういうことではないのだろう。

「単刀直入に言いましょう。あなたはマグナード様と親密にし過ぎです」

 ナルネア嬢は、短く言葉を発してきた。
 それはつまり、私の逃げ道を封じているということなのだろう。
 事実を突きつけ逃がさない。そんな意思が、彼女からは感じられる。

「公爵令息である彼には、皆少なからず憧れています。ですが、親密にはしていません。それは所謂淑女協定というものですね。必要以上に彼に近づかない。それがあのクラス引いては学園のマナーではありませんか」

 ナルネア嬢が言っていることは、滅茶苦茶だった。
 そんな淑女協定など、誰が決めたのだろうか。初耳である。
 しかしながら、ナルネア嬢がそうだと決めたら、私は逆らえない。侯爵令嬢に対して、子爵令嬢である私は頷くことしかできないのだ。

 とにかくこの場を切り抜けなければならない。私はそれについて考えていた。
 しかしそこで、私は気付いた。校舎の方から、一人の男性がこちらに近づいているということに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は王妃になりません! ~王子に婚約解消された公爵令嬢、街外れの魔道具店に就職する~

瑠美るみ子
恋愛
 サリクスは王妃になるため幼少期から虐待紛いな教育をされ、過剰な躾に心を殺された少女だった。  だが彼女が十八歳になったとき、婚約者である第一王子から婚約解消を言い渡されてしまう。サリクスの代わりに妹のヘレナが結婚すると告げられた上、両親から「これからは自由に生きて欲しい」と勝手なことを言われる始末。  今までの人生はなんだったのかとサリクスは思わず自殺してしまうが、精霊達が精霊王に頼んだせいで生き返ってしまう。  好きに死ぬこともできないなんてと嘆くサリクスに、流石の精霊王も酷なことをしたと反省し、「弟子であるユーカリの様子を見にいってほしい」と彼女に仕事を与えた。  王国で有数の魔法使いであるユーカリの下で働いているうちに、サリクスは殺してきた己の心を取り戻していく。  一方で、サリクスが突然いなくなった公爵家では、両親が悲しみに暮れ、何としてでも見つけ出すとサリクスを探し始め…… *小説家になろう様にても掲載しています。*タイトル少し変えました

妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません

編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。 最後に取ったのは婚約者でした。 ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。

せっかく家の借金を返したのに、妹に婚約者を奪われて追放されました。でも、気にしなくていいみたいです。私には頼れる公爵様がいらっしゃいますから

甘海そら
恋愛
ヤルス伯爵家の長女、セリアには商才があった。 であれば、ヤルス家の借金を見事に返済し、いよいよ婚礼を間近にする。 だが、 「セリア。君には悪いと思っているが、私は運命の人を見つけたのだよ」  婚約者であるはずのクワイフからそう告げられる。  そのクワイフの隣には、妹であるヨカが目を細めて笑っていた。    気がつけば、セリアは全てを失っていた。  今までの功績は何故か妹のものになり、婚約者もまた妹のものとなった。  さらには、あらぬ悪名を着せられ、屋敷から追放される憂き目にも会う。  失意のどん底に陥ることになる。  ただ、そんな時だった。  セリアの目の前に、かつての親友が現れた。    大国シュリナの雄。  ユーガルド公爵家が当主、ケネス・トルゴー。  彼が仏頂面で手を差し伸べてくれば、彼女の運命は大きく変化していく。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

義妹がすぐに被害者面をしてくるので、本当に被害者にしてあげましょう!

新野乃花(大舟)
恋愛
「フランツお兄様ぁ〜、またソフィアお姉様が私の事を…」「大丈夫だよエリーゼ、僕がちゃんと注意しておくからね」…これまでにこのような会話が、幾千回も繰り返されれきた。その度にソフィアは夫であるフランツから「エリーゼは繊細なんだから、言葉や態度には気をつけてくれと、何度も言っているだろう!!」と責められていた…。そしてついにソフィアが鬱気味になっていたある日の事、ソフィアの脳裏にあるアイディアが浮かんだのだった…! ※過去に投稿していた「孤独で虐げられる気弱令嬢は次期皇帝と出会い、溺愛を受け妃となる」のIFストーリーになります! ※カクヨムにも投稿しています!

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

結局、私の言っていたことが正しかったようですね、元旦那様

新野乃花(大舟)
恋愛
ノレッジ伯爵は自身の妹セレスの事を溺愛するあまり、自身の婚約者であるマリアとの関係をおろそかにしてしまう。セレスもまたマリアに対する嫌がらせを繰り返し、その罪をすべてマリアに着せて楽しんでいた。そんなある日の事、マリアとの関係にしびれを切らしたノレッジはついにマリアとの婚約を破棄してしまう。その時、マリアからある言葉をかけられるのだが、負け惜しみに過ぎないと言ってその言葉を切り捨てる。それが後々、自分に跳ね返ってくるものとも知らず…。

処理中です...