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18.結果的には
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時々、昔のことを思い出す。私とローガルの婚約に関する一連の事件、あれは私の転機だったといえるだろう。
色々とあった訳だが、あれによって私の人生はいい方向に向かった。当時はショックも大きかったが、結果的には良かったと思っている。
「エリーナ、どうかしたのか?」
「ああ、少し昔のことを思い出していたんです。ゼルフォン様と出会った事件のことを……」
「なるほど、あれか……」
そんな風にぼうっとしていた私に、夫であるゼルフォン様が話しかけてきた。
私が理由を伝えると、彼は苦笑いを浮かべている。あの事件は、彼からすると苦い思い出ということだろうか。
「ゼルフォン様にとって、あの出来事はあまりいい思い出という訳ではないようですね。まあ、当然のことではありますが……」
「ソルリアによって、イルベリード侯爵家も随分と揺れたものだ……今はどこで何をしているのかわからないが、迷惑なものだった」
ゼルフォン様にとって、あれは妹の不祥事ということになる。そのため、苦い顔をしていたという訳だろうか。
ただそういう顔をされると、私としては少し微妙な気持ちになる。もちろん気持ちはわかるのだが、それでもあの出来事は私にとって、掛け替えのない出会いをもたらしたものだからだ。
「もちろん、あなたと巡り会えたことに関しては幸福だと思っているが……」
「ゼルフォン様……そう言ってもらえると、私としても嬉しいです」
そんな私の心を読んだのか、ゼルフォン様は嬉しいことを言ってくれた。
彼も同じ気持ちであるというのは、やはり嬉しい。あの出会いは、本当に嬉しいものだった。
「運命というものはわからないものだ。イルベリード侯爵家を揺るがすはずだった事件が、あなたという人と巡り合わせてくれるなんて思っていなかった」
「それは私も同じです。ローガルの浮気が判明した時には、どうなることやらと思っていましたが……」
「こちらとしては、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。しかしまさか、被害を与えてしまった家の令嬢と結婚することになるとは、思っていなかったな……」
「それはゼルフォン様が誠実だったからですよ。お父様もあの時からかなり好印象を抱いていたようですし……」
私はゼルフォン様とゆっくりと手を繋いだ。
彼と一緒にいられる今が、とても幸福に思える。これからも私は、この幸福を謳歌することができるだろう。ゼルフォン様と一緒なら、きっと大丈夫だ。
そんなことを思いながら、私はゼルフォン様と過ごすのだった。
色々とあった訳だが、あれによって私の人生はいい方向に向かった。当時はショックも大きかったが、結果的には良かったと思っている。
「エリーナ、どうかしたのか?」
「ああ、少し昔のことを思い出していたんです。ゼルフォン様と出会った事件のことを……」
「なるほど、あれか……」
そんな風にぼうっとしていた私に、夫であるゼルフォン様が話しかけてきた。
私が理由を伝えると、彼は苦笑いを浮かべている。あの事件は、彼からすると苦い思い出ということだろうか。
「ゼルフォン様にとって、あの出来事はあまりいい思い出という訳ではないようですね。まあ、当然のことではありますが……」
「ソルリアによって、イルベリード侯爵家も随分と揺れたものだ……今はどこで何をしているのかわからないが、迷惑なものだった」
ゼルフォン様にとって、あれは妹の不祥事ということになる。そのため、苦い顔をしていたという訳だろうか。
ただそういう顔をされると、私としては少し微妙な気持ちになる。もちろん気持ちはわかるのだが、それでもあの出来事は私にとって、掛け替えのない出会いをもたらしたものだからだ。
「もちろん、あなたと巡り会えたことに関しては幸福だと思っているが……」
「ゼルフォン様……そう言ってもらえると、私としても嬉しいです」
そんな私の心を読んだのか、ゼルフォン様は嬉しいことを言ってくれた。
彼も同じ気持ちであるというのは、やはり嬉しい。あの出会いは、本当に嬉しいものだった。
「運命というものはわからないものだ。イルベリード侯爵家を揺るがすはずだった事件が、あなたという人と巡り合わせてくれるなんて思っていなかった」
「それは私も同じです。ローガルの浮気が判明した時には、どうなることやらと思っていましたが……」
「こちらとしては、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。しかしまさか、被害を与えてしまった家の令嬢と結婚することになるとは、思っていなかったな……」
「それはゼルフォン様が誠実だったからですよ。お父様もあの時からかなり好印象を抱いていたようですし……」
私はゼルフォン様とゆっくりと手を繋いだ。
彼と一緒にいられる今が、とても幸福に思える。これからも私は、この幸福を謳歌することができるだろう。ゼルフォン様と一緒なら、きっと大丈夫だ。
そんなことを思いながら、私はゼルフォン様と過ごすのだった。
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