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23.夫婦として
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鏡によって判明した事実によって、私が元の世界に帰ることも、ペトラを元に戻すことも不可能になってしまった。
どちらも残念なことではあるが、起こってしまったことは受け止めるしかない。私は新しい人生を生きていくしかないのだ。
アトラやオルドア様、それにペトラにも申し訳ない気持ちもあるが、その辺りも割り切ることにする。信じてもらえるとは、思えないし。
「オルドア様、それで一体、話とはなんですか?」
「ああ……」
そんな私は、オルドア様から呼び出された。
大事な話があるということで呼ばれたため、少し緊張している。
もしかしたら、私の記憶に関する話などだろうか。悩んでいるもののオルドア様は、ペトラの記憶を戻そうとしていた訳だし。
「お前に改めて伝えておきたいことがあるんだ」
「改めて伝えたいこと……」
「俺と夫婦になってもらいたいのだ」
「……え?」
オルドア様の言葉に、私は思わず固まっていた。
その発言の意味が、わからなかったからである。
「あの……私達は、既に夫婦ですよね?」
「もちろん、それはわかっている。だが、改めて言っておきたかったのだ。お前は、記憶を失ってしまったからな」
「それは……」
「正道からは外れたことではあるが、俺はお前と一緒に生きていきたいと思っている。お前となら一緒に、アトラを導いていけると思うのだ」
オルドア様は、私の目を真っ直ぐに見つめてきていた。
その視線には、期待が籠っている。今までのオルドア様からは、考えられないような視線だ。
「……私でいいなら、もちろんそうしたいと思っています」
「そうか……ありがとう。そう言ってもらえると、こちらとしても助かる」
「いえ、お礼を言われるようなことではありませんよ。私もそうなった方がいいと、そうなりたいと思っていましたから」
私は、オルドア様に対して快い返事を返した。
厳しい一面もあるが優しい彼のことを、私も尊敬している。彼とならこれから夫婦として過ごしても、良いと心から思えるのだ。
それに、アトラのことも守っていきたかった。なまじ彼女の将来を知っているため、どうしても明るい未来を歩んでもらいたいのである。
「さて、そういう訳だ。アトラ、聞いているのだろう? 入って来い」
「え?」
「……ばれていましたか」
「ああ、そんなことだろうと思っていた」
「敵いませんね、お父様には……」
オルドア様の呼びかけに、部屋の戸がゆっくりと開かれた。
するとそこから、アトラがとぼとぼと入って来る。どうやら彼女は、戸の傍で聞き耳を立てていたらしい。
どちらも残念なことではあるが、起こってしまったことは受け止めるしかない。私は新しい人生を生きていくしかないのだ。
アトラやオルドア様、それにペトラにも申し訳ない気持ちもあるが、その辺りも割り切ることにする。信じてもらえるとは、思えないし。
「オルドア様、それで一体、話とはなんですか?」
「ああ……」
そんな私は、オルドア様から呼び出された。
大事な話があるということで呼ばれたため、少し緊張している。
もしかしたら、私の記憶に関する話などだろうか。悩んでいるもののオルドア様は、ペトラの記憶を戻そうとしていた訳だし。
「お前に改めて伝えておきたいことがあるんだ」
「改めて伝えたいこと……」
「俺と夫婦になってもらいたいのだ」
「……え?」
オルドア様の言葉に、私は思わず固まっていた。
その発言の意味が、わからなかったからである。
「あの……私達は、既に夫婦ですよね?」
「もちろん、それはわかっている。だが、改めて言っておきたかったのだ。お前は、記憶を失ってしまったからな」
「それは……」
「正道からは外れたことではあるが、俺はお前と一緒に生きていきたいと思っている。お前となら一緒に、アトラを導いていけると思うのだ」
オルドア様は、私の目を真っ直ぐに見つめてきていた。
その視線には、期待が籠っている。今までのオルドア様からは、考えられないような視線だ。
「……私でいいなら、もちろんそうしたいと思っています」
「そうか……ありがとう。そう言ってもらえると、こちらとしても助かる」
「いえ、お礼を言われるようなことではありませんよ。私もそうなった方がいいと、そうなりたいと思っていましたから」
私は、オルドア様に対して快い返事を返した。
厳しい一面もあるが優しい彼のことを、私も尊敬している。彼とならこれから夫婦として過ごしても、良いと心から思えるのだ。
それに、アトラのことも守っていきたかった。なまじ彼女の将来を知っているため、どうしても明るい未来を歩んでもらいたいのである。
「さて、そういう訳だ。アトラ、聞いているのだろう? 入って来い」
「え?」
「……ばれていましたか」
「ああ、そんなことだろうと思っていた」
「敵いませんね、お父様には……」
オルドア様の呼びかけに、部屋の戸がゆっくりと開かれた。
するとそこから、アトラがとぼとぼと入って来る。どうやら彼女は、戸の傍で聞き耳を立てていたらしい。
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