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47.事件が終わり
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「本当に、これでよかったんですか?」
ステイリオ男爵家から去るために魔導列車に乗った私は、ディルギン氏にそのように話しかけた。
結局、彼は男爵家の人々を見逃した。それで本当によかったのか、念のため改めて聞いてみることにしたのである。
「私は、これでよかったと思っていますよ。セリネア嬢」
「そうですか……」
そんな私に対して、ディルギン氏は特に表情を変えることもなく、そう答えてきた。
彼にとって、あの判断は一つも間違っていなかったようだ。それはなんとなくわかっていたことではあるが、少し複雑である。
「ソルーガ、こういうことはよくあるの?」
「よくあることという訳ではないさ。まあ、俺が常について行っているという訳ではないもないから、俺の知らない所ではよくあるのかもしれんが」
私は、ソルーガに話を振った。
彼も、今回のことに関しては色々と思う所があったはずだ。
しかし、既に呆気からんとしている。ソルーガにとっても、既に終わったことであるらしい。
「僕は、自分の正義を貫いているだけさ」
「自分の正義か……まあ、そうなんだろうとは思っていたが」
「自分の正義ですか……」
ディルギン氏の言葉に、私はゆっくりとため息を吐いた。
自分の正義を貫く。それが悪いことかどうかはわからない。
この国の法律も完全であるとはいえないだろう。納得がいない事件というのも、ないという訳ではないように思える。
ただ、それでもこうやって個人で判断することがいいかは微妙な所だ。
「もちろん、あなたが気に入らないというなら、今回の事件を公にしてもいいでしょう。そうなると、ステイリオ男爵夫人並びに使用人達は、とても辛い立場に立たされることになるでしょうが」
「……そんなことを言われて、公にしようなんて思いませんよ」
ディルギン氏は、私に対してわざとらしく事実を述べてきた。
使用人達には、情状酌量の余地はある。それは、私も思っていたことだ。
彼らや夫人のことを考えると、これを公にしようとは思えない。結局の所、私も自らの正義を貫いているということなのだろう。
「それなら、この事件はこれで終わりです。もうこの事件のことは、忘れた方がいいでしょう。何もするつもりがないのなら、なかったことにした方がいいはずです」
「そうですね……」
私は、ディルギン氏の言葉にゆっくりと頷いた。
こうして、私達は今回の事件のことを頭の片隅に置きながら、それぞれの日常に帰っていくのだった。
ステイリオ男爵家から去るために魔導列車に乗った私は、ディルギン氏にそのように話しかけた。
結局、彼は男爵家の人々を見逃した。それで本当によかったのか、念のため改めて聞いてみることにしたのである。
「私は、これでよかったと思っていますよ。セリネア嬢」
「そうですか……」
そんな私に対して、ディルギン氏は特に表情を変えることもなく、そう答えてきた。
彼にとって、あの判断は一つも間違っていなかったようだ。それはなんとなくわかっていたことではあるが、少し複雑である。
「ソルーガ、こういうことはよくあるの?」
「よくあることという訳ではないさ。まあ、俺が常について行っているという訳ではないもないから、俺の知らない所ではよくあるのかもしれんが」
私は、ソルーガに話を振った。
彼も、今回のことに関しては色々と思う所があったはずだ。
しかし、既に呆気からんとしている。ソルーガにとっても、既に終わったことであるらしい。
「僕は、自分の正義を貫いているだけさ」
「自分の正義か……まあ、そうなんだろうとは思っていたが」
「自分の正義ですか……」
ディルギン氏の言葉に、私はゆっくりとため息を吐いた。
自分の正義を貫く。それが悪いことかどうかはわからない。
この国の法律も完全であるとはいえないだろう。納得がいない事件というのも、ないという訳ではないように思える。
ただ、それでもこうやって個人で判断することがいいかは微妙な所だ。
「もちろん、あなたが気に入らないというなら、今回の事件を公にしてもいいでしょう。そうなると、ステイリオ男爵夫人並びに使用人達は、とても辛い立場に立たされることになるでしょうが」
「……そんなことを言われて、公にしようなんて思いませんよ」
ディルギン氏は、私に対してわざとらしく事実を述べてきた。
使用人達には、情状酌量の余地はある。それは、私も思っていたことだ。
彼らや夫人のことを考えると、これを公にしようとは思えない。結局の所、私も自らの正義を貫いているということなのだろう。
「それなら、この事件はこれで終わりです。もうこの事件のことは、忘れた方がいいでしょう。何もするつもりがないのなら、なかったことにした方がいいはずです」
「そうですね……」
私は、ディルギン氏の言葉にゆっくりと頷いた。
こうして、私達は今回の事件のことを頭の片隅に置きながら、それぞれの日常に帰っていくのだった。
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