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40.慣れてきた秘匿

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 私とソルーガは、ディルギン氏に連れられてステイリオ男爵の屋敷に来ていた。
 今日も、ここで調査を行うそうなのだ。
 しかし、屋敷について早々、ディルギン氏は客室でくつろぎ始めた。その態度は、調査を行うつもりがあるようには思えない。

「セリネア嬢、長旅で疲れているでしょう? 休んだ方がいいのではありませんか?」
「えっと……それは、そうですけど」

 そわそわしている私に対して、ディルギン氏はそのように言ってきた。
 確かに、私は長旅で疲れている。それは事実であるのだが、彼のように休んでいていいものなのだろうか。

「ディルギン、一体何を考えているんだ?」
「今は、休むべき時さ。これから、私達はとても疲れる出来事に遭遇するだろう」
「何かを考えているということか……」

 ソルーガの質問に、ディルギン氏は笑みを浮かべた。
 彼が考えを教えてくれないのは、もうわかっている。これから何が起こるのか、それは考えるだけ無駄なのかもしれない。

「姉貴、ここは休んだ方が良さそうだ」
「ええ、そのようね……」

 ソルーガの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 ここは、ディルギン氏の指示に従った方がいいだろう。
 何が起こるにしても、体力を温存しておくことは大事だ。しっかりと休んでおくとしよう。

「だが、ディルギン。これから何かが起こるというなら、お前が何をしたのかを教えてくれてもいいんじゃないのか? ことが起こってから説明するのは、大変だろう」
「僕は、そこまで特別なことはしていない。故に、説明もそれ程難しくはない」
「ほう? 単純なことなのか……」

 ソルーガは、ディルギン氏が何をしたのかを掘り下げていた。
 それは恐らく、単純に暇だったのだろう。ここで休むにしても、話の種が欲しかったのかもしれない。

「まあ、お前が何をしようとしているのかはわからない訳ではないが……」
「おっと……それは、本当か?」
「お前との付き合いも長いからな……恐らく、お前はステイリオ夫人をおびき出そうとしているんだろう?」
「なるほど……流石だな、ソルーガ」
 
 ディルギン氏は、ソルーガの言葉に手を叩いた。
 どうやら、彼の予測は当たっているようだ。
 ただ、考えてみれば、それは当たり前のことなのかもしれない。なぜなら、ディルギン氏が受けた依頼は、夫人の捜索だからだ。

「問題は、何をしたかだ……そういえば、俺や姉貴は今日、新聞を読んでいない。もしかして、何かニュースでもあったのか?」
「……君も大分、慣れてきたみたいだな」

 ディルギン氏は、口の端を歪めて笑みを浮かべた。
 長い付き合いで、ソルーガも彼の思考が読めるようになったようだ。それが、ディルギン氏にとっては嬉しいことなのかもしれない。
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