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26.変わらない令嬢
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私はソルーガとディルギン氏とともに、アルトアがいる病院まで来ていた。
彼女は刺されたことによって、大きな後遺症に悩まされている。今もまだ入院しており、車椅子で私達の前に現れた。
「……まさか、あなたが私を訪ねてくるなんて思っていませんでした。一体、どういう風の吹き回しなのでしょうか?」
「それは、私が聞きたいくらいです」
「……馬鹿にしているのですか?」
アルトアは、忌々しそうに表情を歪めた。
それは、当たり前だろう。彼女は、私などには会いたくなかったはずだ。それに加えてこんなことを言われれば、誰だってそんなことを言いたくなるだろう。
「アルトア嬢、私達はあなたにステイリオ男爵のことを聞きたくて、こちらに参ったのです」
「……あなたは?」
「探偵です。浮気の証拠を集めた者といった方が、あなたにはわかりやすいでしょうね」
「なんですって?」
ディルギン氏は、アルトアを逆撫でするようなことを言った。
そんなことを言われて、いい気持ちはしないだろう。聞きたいことがあるのに、ディルギン氏はどうしてこんなことを言うのだろうか。
「ステイリオ男爵のことはよく知っています。ただ、あなた達にそれを教える義理はありません」
「そうですか……それは残念です。これは、あなたにとって有益なことだったのですが」
「有益?」
「あなたを刺した犯人に関することです」
「……それは、どういうことですか?」
「ステイリオ男爵夫人が、あなたが刺された事件の首謀者である可能性があるということです」
ディルギン氏は、何食わぬ顔で嘘をついた。
それによって、アルトアは表情を変える。少し考えるような表情を見せたのだ。
「……そういうことであるなら、力を貸すのもやぶさかではありません。私を刺したのが誰なのか、それは私も知りたい所です」
「賢明な判断です。どうやら、あなたは聡明な女性であるようですね」
「あら? あなたは、もしかしたら思っていたよりも話がわかる人なのかもしれませんね」
ディルギン氏の言葉に、アルトアは笑顔を浮かべていた。
どう考えてもお世辞でしかないと思うのだが、喜んでいるようだ。
今まで、彼女は男性からちやほやされてきた。最近はそれがなくなったため、賞賛が恋しくなったのだろうか。
「この国の警察というものは、かなり無能なようですね。私を刺した犯人に目星すらついていないなんて信じられません」
「まったくもって、その通りですね」
「早く犯人を捕まえてもらいたいものです。そうでなければ、安心して眠れません」
「そうでしょう」
笑顔で応対するディルギン氏に気分を良くしたのか、アルトアはそんな風に語り始めた。
一度刺されたくらいでは、人間性というものは変わらないようだ。恐怖の感情はあるようだが、反省の色はあまり見えない。
恐らく、彼女はろくな死に方をしないだろう。同じようなことを繰り返して、何れは破滅するのではないだろうか。
彼女は刺されたことによって、大きな後遺症に悩まされている。今もまだ入院しており、車椅子で私達の前に現れた。
「……まさか、あなたが私を訪ねてくるなんて思っていませんでした。一体、どういう風の吹き回しなのでしょうか?」
「それは、私が聞きたいくらいです」
「……馬鹿にしているのですか?」
アルトアは、忌々しそうに表情を歪めた。
それは、当たり前だろう。彼女は、私などには会いたくなかったはずだ。それに加えてこんなことを言われれば、誰だってそんなことを言いたくなるだろう。
「アルトア嬢、私達はあなたにステイリオ男爵のことを聞きたくて、こちらに参ったのです」
「……あなたは?」
「探偵です。浮気の証拠を集めた者といった方が、あなたにはわかりやすいでしょうね」
「なんですって?」
ディルギン氏は、アルトアを逆撫でするようなことを言った。
そんなことを言われて、いい気持ちはしないだろう。聞きたいことがあるのに、ディルギン氏はどうしてこんなことを言うのだろうか。
「ステイリオ男爵のことはよく知っています。ただ、あなた達にそれを教える義理はありません」
「そうですか……それは残念です。これは、あなたにとって有益なことだったのですが」
「有益?」
「あなたを刺した犯人に関することです」
「……それは、どういうことですか?」
「ステイリオ男爵夫人が、あなたが刺された事件の首謀者である可能性があるということです」
ディルギン氏は、何食わぬ顔で嘘をついた。
それによって、アルトアは表情を変える。少し考えるような表情を見せたのだ。
「……そういうことであるなら、力を貸すのもやぶさかではありません。私を刺したのが誰なのか、それは私も知りたい所です」
「賢明な判断です。どうやら、あなたは聡明な女性であるようですね」
「あら? あなたは、もしかしたら思っていたよりも話がわかる人なのかもしれませんね」
ディルギン氏の言葉に、アルトアは笑顔を浮かべていた。
どう考えてもお世辞でしかないと思うのだが、喜んでいるようだ。
今まで、彼女は男性からちやほやされてきた。最近はそれがなくなったため、賞賛が恋しくなったのだろうか。
「この国の警察というものは、かなり無能なようですね。私を刺した犯人に目星すらついていないなんて信じられません」
「まったくもって、その通りですね」
「早く犯人を捕まえてもらいたいものです。そうでなければ、安心して眠れません」
「そうでしょう」
笑顔で応対するディルギン氏に気分を良くしたのか、アルトアはそんな風に語り始めた。
一度刺されたくらいでは、人間性というものは変わらないようだ。恐怖の感情はあるようだが、反省の色はあまり見えない。
恐らく、彼女はろくな死に方をしないだろう。同じようなことを繰り返して、何れは破滅するのではないだろうか。
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