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4.偏屈な探偵
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私は、弟のソルーガとともに探偵事務所に来ていた。
当然のことながら、ここには探偵がいる。バルセン・ディルギン氏、かつて弟がとある事件で知り合った男性だ。
「要するに、ご依頼というのは浮気調査ということですか?」
「ええ、そうなんです」
「なるほど……」
私の言葉に対して、ディルギン氏は考えるような仕草をした。
何故そんな仕草をするのか、正直よくわからない。私の説明に、何か不備でもあったのだろうか。
「ディルギン、どうか頼めないか?」
「ああ、もちろん依頼を受けるのは構わない。仕事だからね」
「少し拗ねていないか?」
「拗ねてなんかないさ。僕は、どんな依頼でも嫌な顔一つせずにこなすつもりだ」
「拗ねているじゃないか」
ソルーガは、ディルギン氏の態度に呆れたようにため息を吐いた。
そのやり取りで、なんとなく察することができる。要するに、彼は私の依頼に不満を持っているのだと。
「浮気調査は、つまらないということでしょうか?」
「そういうことではありませんよ、セリネア公爵令嬢。私は、依頼をえり好みしません」
「何かこだわりがあるのですか?」
「ディルギンは偏屈な奴なんだ。自分が興味のある依頼しか受けようとしない……まあ、探偵とはいっても、道楽でやっているようなものだからな」
「道楽……」
ディルギン氏のことを、私はよく知らない。
ソルーガの知り合いに探偵がいるとは聞いていたが、そんな人だということは初耳だ。
もしかして、私は頼る相手を間違えたのだろうか。彼の態度に、私はそんなことを考える。
「道楽とは失礼だね、ソルーガ。僕は別に、不真面目にこの仕事に取り組んでいる訳ではない」
「だけど、今回の依頼には不満があるんだろう? それなら、もういいさ。他の探偵に頼むことにするよ」
「待て、僕以外の探偵に頼むつもりか?」
「ああ、そうだが……」
ソルーガは、ゆっくりと立ち上がり、ここから立ち去ろうとした。
それをディルギン氏は引き止める。なんというか、彼は少し怒っているような気がする。
「心外だな……僕というものがありながら、他の探偵に依頼しようとは」
「また面倒くさいことを言い始めたな……だったら、依頼を持ってくる度に文句を言うのはやめてくれないか?」
「別に断るとは言っていないだろう」
「露骨に嫌そうにしていたじゃないか」
ソルーガとディルギン氏は、言い合いを初めてしまった。
その様子に、私は苦笑いする。
どうやら、ディルギン氏はソルーガが別の探偵に頼むということに嫉妬を感じたようだ。
それは、確かになんとも面倒なことである。嫌そうにしながら、他の探偵に頼んで欲しくない。その複雑な感情は、受ける側からしたら、たまったものではないはずだ。
恐らく、こんなやり取りを二人は毎回しているのだろう。その会話から、それが読み取れる。
だが、二人の仲が良好であることは間違いないだろう。
ディルギン氏は、嫉妬を覚える程にソルーガに友情を覚えている。ソルーガも毎回来ているということは面倒と思いながらも、確かな友情を覚えているということだろう。
二人がどのように出会ったのか、ディルギン氏が何者なのか。その辺りのことを、私は知らない。
ただ、ソルーガのことはよく知っている。ディルギン氏は、そんな彼がここまで信頼している人だ。それなら、私も信頼することができる。色々と言っているが、きっと今回の依頼も着実にこなしてくれるだろう。
当然のことながら、ここには探偵がいる。バルセン・ディルギン氏、かつて弟がとある事件で知り合った男性だ。
「要するに、ご依頼というのは浮気調査ということですか?」
「ええ、そうなんです」
「なるほど……」
私の言葉に対して、ディルギン氏は考えるような仕草をした。
何故そんな仕草をするのか、正直よくわからない。私の説明に、何か不備でもあったのだろうか。
「ディルギン、どうか頼めないか?」
「ああ、もちろん依頼を受けるのは構わない。仕事だからね」
「少し拗ねていないか?」
「拗ねてなんかないさ。僕は、どんな依頼でも嫌な顔一つせずにこなすつもりだ」
「拗ねているじゃないか」
ソルーガは、ディルギン氏の態度に呆れたようにため息を吐いた。
そのやり取りで、なんとなく察することができる。要するに、彼は私の依頼に不満を持っているのだと。
「浮気調査は、つまらないということでしょうか?」
「そういうことではありませんよ、セリネア公爵令嬢。私は、依頼をえり好みしません」
「何かこだわりがあるのですか?」
「ディルギンは偏屈な奴なんだ。自分が興味のある依頼しか受けようとしない……まあ、探偵とはいっても、道楽でやっているようなものだからな」
「道楽……」
ディルギン氏のことを、私はよく知らない。
ソルーガの知り合いに探偵がいるとは聞いていたが、そんな人だということは初耳だ。
もしかして、私は頼る相手を間違えたのだろうか。彼の態度に、私はそんなことを考える。
「道楽とは失礼だね、ソルーガ。僕は別に、不真面目にこの仕事に取り組んでいる訳ではない」
「だけど、今回の依頼には不満があるんだろう? それなら、もういいさ。他の探偵に頼むことにするよ」
「待て、僕以外の探偵に頼むつもりか?」
「ああ、そうだが……」
ソルーガは、ゆっくりと立ち上がり、ここから立ち去ろうとした。
それをディルギン氏は引き止める。なんというか、彼は少し怒っているような気がする。
「心外だな……僕というものがありながら、他の探偵に依頼しようとは」
「また面倒くさいことを言い始めたな……だったら、依頼を持ってくる度に文句を言うのはやめてくれないか?」
「別に断るとは言っていないだろう」
「露骨に嫌そうにしていたじゃないか」
ソルーガとディルギン氏は、言い合いを初めてしまった。
その様子に、私は苦笑いする。
どうやら、ディルギン氏はソルーガが別の探偵に頼むということに嫉妬を感じたようだ。
それは、確かになんとも面倒なことである。嫌そうにしながら、他の探偵に頼んで欲しくない。その複雑な感情は、受ける側からしたら、たまったものではないはずだ。
恐らく、こんなやり取りを二人は毎回しているのだろう。その会話から、それが読み取れる。
だが、二人の仲が良好であることは間違いないだろう。
ディルギン氏は、嫉妬を覚える程にソルーガに友情を覚えている。ソルーガも毎回来ているということは面倒と思いながらも、確かな友情を覚えているということだろう。
二人がどのように出会ったのか、ディルギン氏が何者なのか。その辺りのことを、私は知らない。
ただ、ソルーガのことはよく知っている。ディルギン氏は、そんな彼がここまで信頼している人だ。それなら、私も信頼することができる。色々と言っているが、きっと今回の依頼も着実にこなしてくれるだろう。
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