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23.必死な誤魔化し

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「ルバディオ殿、僕達はあなたのことを信用します」
「そ、そうですか」

 ウルギア様の言葉に、ルバディオ様は嬉しそうな顔をしていた。
 それは当然のことである。一人でここまで降伏をしに来た彼にとって、これ程喜ばしいことはないだろう。

「よかった。とても安心しています。正直、さっきまで不安で仕方なくて……なんだか、意識も一瞬飛んだような気がしますし」

 ルバディオ様の発言に、私とウルギア様は顔を見合わせた。
 意識が飛んだ。それは一大事である。その一大事に、私達は誠に遺憾ながら覚えがあるのだ。
 その実行者であるお祖母様は、私達の近くで呆気らかんとしている。なんというか、まったく気にしていない様子だ。

「……まあ、こんな所に一人でやって来た訳ですし、不安に押し潰されることもありますよね」
「た、大変ですよね。お一人で敵の所まで降伏に来るなんて、中々できることではありません」
「そ、そうですか?」

 とりあえず私とウルギア様は、必死にフォローをしておいた。
 結果として、ルバディオ様は心から和平を望んでいる人だ。そんな人に何かしたなんて悟られてはならない。

 ただ、お祖母様が完全に余計なことをしたとも言い難いのが現状だ。あれがなければ、私達は彼のことを完璧に信頼することができなかった。
 そのため、なんだかとてももどかしい気分だ。お祖母様に後で釘を刺すべきかどうか、私は少し迷っている。

「それにしても、ルバディオ殿はまだまだお若いのにこんな所に一人で来て。その勇気に、僕は正直感嘆しています」
「ああいえ、王族としての義務ですから……」
「義務といえど、それを成し遂げられる人がどれだけいるでしょうか? 同じ国を背負う者の一人として尊敬しています」
「ありがとうございます。お褒めいただき光栄です。ただ、これからのことを話しませんか?」

 賞賛の言葉をいつまでも呟くウルギア様に、ルバディオ様は少し遠慮がちに声をかけた。
 これで恐らく、意識が飛んだことはもう気にしないだろう。やっと本題に入ることができそうだ。

「正直な所、アズガルト兄上を止め続けるのは難しいというのが現状です。現在は、他の兄上がなんとか抑え込んでいますが」
「ルバディオ殿、僕は無駄な血を流したいとは思っていません。全ての元凶がアズガルト王にあるというならば、その元凶をなんとかするのが重要です。そのためにそちらは一体何をお望みなのですか?」
「助力を願いたいのです。そちらにいるクレメリアさんに……」
「え? 私、ですか?」

 ルバディオ様に呼ばれて、私は驚くことになった。
 まさか呼ばれるなんて思っていなかった。一体彼は私に何を望んでいるのだろうか。
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