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2.背負うべきもの
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「アルネリア、本気なのか?」
「ええ、私は本気ですよ、伯父様」
伯父である国王様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
それは、私がラフェイン王国に嫁ぐという事柄に対する頷きだ。私は妹のイルフェリーナに代わって、隣国へと赴くことにしたのである。
「お前はアガート公爵家の長女だ。本来であれば家を受け継ぎ、婿を迎え入れる立場であるだろう?」
「ええ、しかし、今回のことはアガート公爵家――いえ、それ所かカルノード王国にとって、重要なことです。それは長女である私が背負うべき事柄だと判断しました」
「うむ……」
イルフェリーナが嫌がったということを伏せて、私は国王様に事情を話した。
それは報告するためにお父様とこしらえた理由ではあるのだが、伯父様はいまいち納得していないような気がする。
イルフェリーナが臆病な性格であるということは、伯父様も知っているはずだ。もしかしたらそこから、今回の件で何があったのかを想像しているのかもしれない。
「もちろん、私としてもアルネリアが嫁ぐことに反対があるという訳ではない。そもそも、それが申し訳ない話だと思っている。王家の直系には女子がいないものでな……」
「ええ、それはわかっています」
私達に白羽の矢が立ったのは、カルノード王国には王女が存在していないからだ。王家には女子が生まれなかった。逆にアガート公爵家には、男子が生まれなかったのだが。
相手国の王太子に嫁ぐというのが、今回の婚約だ。王家からはそれが出せなかった。だからこそ、王家の血筋であるアガート公爵家の私達が嫁がざるを得ない。
それは当然のことであると、私は思っている。それぞれの役割というものがあるのだから、私はそれを果たすまでだ。
「予定では、すぐにカルノード王国へと赴くのですよね?」
「ああ、そういうことになっている。今回に関しては、様々なことを捻じ曲げてでも結婚というものを成立させるつもりだ。今の内に話を進めることで、争いを二度と起こさない盤石の構えを取っておきたい」
「わかりました。お任せください」
わかっていたことではあるが、私がアガート公爵家の屋敷で過ごせる時間というものは、もうそれ程長くはないらしい。
イルフェリーナ程ではないが、私にも恐怖はある。家を離れて、かつては敵対していた隣国で過ごすということを想像すると、肝が冷えていく。
ただ怖いからこそ、それを妹に背負わせたいとは思わなかった。当然のことだが、彼女は私よりも年下だ。それもまだ少女といえる年齢である。やはりこれは、私が背負うべき問題であるだろう。
「ええ、私は本気ですよ、伯父様」
伯父である国王様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
それは、私がラフェイン王国に嫁ぐという事柄に対する頷きだ。私は妹のイルフェリーナに代わって、隣国へと赴くことにしたのである。
「お前はアガート公爵家の長女だ。本来であれば家を受け継ぎ、婿を迎え入れる立場であるだろう?」
「ええ、しかし、今回のことはアガート公爵家――いえ、それ所かカルノード王国にとって、重要なことです。それは長女である私が背負うべき事柄だと判断しました」
「うむ……」
イルフェリーナが嫌がったということを伏せて、私は国王様に事情を話した。
それは報告するためにお父様とこしらえた理由ではあるのだが、伯父様はいまいち納得していないような気がする。
イルフェリーナが臆病な性格であるということは、伯父様も知っているはずだ。もしかしたらそこから、今回の件で何があったのかを想像しているのかもしれない。
「もちろん、私としてもアルネリアが嫁ぐことに反対があるという訳ではない。そもそも、それが申し訳ない話だと思っている。王家の直系には女子がいないものでな……」
「ええ、それはわかっています」
私達に白羽の矢が立ったのは、カルノード王国には王女が存在していないからだ。王家には女子が生まれなかった。逆にアガート公爵家には、男子が生まれなかったのだが。
相手国の王太子に嫁ぐというのが、今回の婚約だ。王家からはそれが出せなかった。だからこそ、王家の血筋であるアガート公爵家の私達が嫁がざるを得ない。
それは当然のことであると、私は思っている。それぞれの役割というものがあるのだから、私はそれを果たすまでだ。
「予定では、すぐにカルノード王国へと赴くのですよね?」
「ああ、そういうことになっている。今回に関しては、様々なことを捻じ曲げてでも結婚というものを成立させるつもりだ。今の内に話を進めることで、争いを二度と起こさない盤石の構えを取っておきたい」
「わかりました。お任せください」
わかっていたことではあるが、私がアガート公爵家の屋敷で過ごせる時間というものは、もうそれ程長くはないらしい。
イルフェリーナ程ではないが、私にも恐怖はある。家を離れて、かつては敵対していた隣国で過ごすということを想像すると、肝が冷えていく。
ただ怖いからこそ、それを妹に背負わせたいとは思わなかった。当然のことだが、彼女は私よりも年下だ。それもまだ少女といえる年齢である。やはりこれは、私が背負うべき問題であるだろう。
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