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22.打ち明けるべきこと

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「バルート、エファーナよ。入ってもいいかしら?」
「あ、うん」

 夜、私はバルートの部屋を訪ねていた。
 昼間の会話の時、彼は不思議そうな顔をしていた。それは、私の過去をわかっていなかったからなのだろう。

 この際なので、私は彼に全てを打ち明けることにした。
 別に隠しておく必要がある訳でもないし、その方がいい気がしたのだ。

「失礼するわね」
「どうしたの? こんな時間に……」
「あなたに話しておきたいことがあるのよ」
「話しておきたいこと?」
「ええ、私の過去のことよ」

 私の言葉に、バルートは少し表情を歪めた。
 それはなんというか、心配しているように見える。
 聞いてもいいのか。声は出していないが、そんな言葉が聞こえてくる。

「別に私は大丈夫よ。ただ、少し暗い話にはなるけど……」
「……わかった。聞かせて」
「横いいかしら?」
「あ、うん。どうぞ」

 私は、ベッドに座るバルートの横にゆっくりと腰掛ける。
 彼は、少し緊張しているようだ。目に見えて固まっている。

「私にはね、夫がいたの。フライグ様のことではないわよ。彼の前に、私は結婚していたのよ」
「そうなんだ……」
「やっぱり、そこから知らなかったのね?」
「うん……全然知らなかった。あの時は、そういうことを聞くのが、とても嫌だったから……」

 バルートは、私については何も知らないようだ。
 恐らく、その時の彼にとって、私という存在の情報の全ては耳に入れたいものではなかったのだろう。

「その人とはね、政略結婚だったのよ。まあ、貴族だから当たり前のことかもしれないけど……でもね、とても仲が良かったの。不思議と気が合ったのよ。お互いに愛し合っていた。それは、間違いないわ」
「……」
「でも……幸せは長く続かなかったわ。結婚して、二年が経とうとしていた頃、病気で亡くなったの」
「それは……」

 私の言葉に、バルートはとても暗い顔をしていた。
 やはり、彼は優しい子だ。私の夫に起こった不幸に、心を痛めている。

 私は、バルートの体をそっと抱き寄せる。そうすることで、彼が安心してくれたらいい。そう思ったからだ。
 彼は、そんな私を受け入れてくれた。ゆっくりと、こちらにその身を預けてくれる。

「彼が亡くなった時は、とても辛かったわ……」
「……わかるよ」
「そうよね……」

 私は、震えるバルートの頭をゆっくりと撫でた。
 彼も、大切な人を失っている。私の今の言葉で、それを思い出させてしまったのだろう。
 幼い彼にとって、それはまだまだ乗り越えられないことだ。そんな彼を、私は支えていかなければならないだろう。
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