43 / 44
43.私の幸せ
しおりを挟む
「人間というものは、そうそう変わらないということか……」
「そうみたいね……」
私の元をイフェリアが訪ねてきたから数か月後、私とギルバートは訪ねてきた金貸しの話に、そんな感想を抱いていた。
律儀な所があるらしく、金貸しはことの顛末を報告しに来た。そんな彼から聞いたのは、エルシエット伯爵家の面々が、裕福な生活にこだわり、未だに彼らを頼っているということである。
「あんな人達のことを頼っていたら、先に待っているのは破滅でしかないというのに……」
「彼らを助けたいのかい?」
「いいえ、呆れているというだけよ。まさかそれ程までに愚かだったなんて、正直予想外だわ」
エルシエット伯爵家の面々の選択は、愚かとしか言いようがないものだ。ああいう人達に頼り続けている限り、明るい未来なんてものは訪れないだろう。
しかし、それは彼らの選択である。その選択を正そうとは思わない。そんな義理は、私にはないからだ。
「まあ、あの人達のことは忘れることにするわ。もう私には関係ない。そう思う方が、精神衛生上いいもの」
「確かに、それはその通りかもしれないね」
「そもそも、私にはもう家族がいるもの。私の望みはただ一つ、家族で幸せになりたい。ただそれだけよ」
「ああ、それに関しては僕も気持ちは同じだ……さて」
そこでギルバートは、とある家の玄関の呼び鈴を鳴らす。すると中から、慌ただしい足音が聞こえてきた。
その足音に、私達は心を躍らせる。その音色は、私達にとって幸せの音色なのだ。
「お父様! お母様!」
「もう、アルフェリナ。そんなに走ったら危ないでしょう?」
「あ、すみません。お祖母様……」
戸を勢いよく開いたのは、私達の娘であるアルフェリナである。
その後ろには、私達の息子であるクルードを抱きかかえたお義母様とお義父様がいた。
「アルフェリナ、久し振りね。元気にしていたかしら?」
「はい、元気いっぱいです」
「クルードも、元気そうね?」
「あ、はい……」
子供達は、私達の来訪を心から喜んでくれているようだ。
もちろん、その気持ちは私もギルバートも同じである。色々とあったが、ここに帰って来られて本当によかったと思う。
「ギルバート、色々と片付いたのか?」
「ええ、仕事の方もそれ以外も決着をつけられたと思っています」
「それなら結構」
「アルシエラさんを、ちゃんと守れたようね?」
「もちろんです。それが僕の何よりの使命ですから」
ギルバートと両親の会話を聞きながら、私は思っていた。
私の家族は、ここにいる皆とそれに伯母様一家、それからラナキンス商会の皆なのだ。私はそれを改めて実感する。
追放された私は、新天地にて家族を得られた。それは私にとって、何よりも幸福なことなのである。
「そうみたいね……」
私の元をイフェリアが訪ねてきたから数か月後、私とギルバートは訪ねてきた金貸しの話に、そんな感想を抱いていた。
律儀な所があるらしく、金貸しはことの顛末を報告しに来た。そんな彼から聞いたのは、エルシエット伯爵家の面々が、裕福な生活にこだわり、未だに彼らを頼っているということである。
「あんな人達のことを頼っていたら、先に待っているのは破滅でしかないというのに……」
「彼らを助けたいのかい?」
「いいえ、呆れているというだけよ。まさかそれ程までに愚かだったなんて、正直予想外だわ」
エルシエット伯爵家の面々の選択は、愚かとしか言いようがないものだ。ああいう人達に頼り続けている限り、明るい未来なんてものは訪れないだろう。
しかし、それは彼らの選択である。その選択を正そうとは思わない。そんな義理は、私にはないからだ。
「まあ、あの人達のことは忘れることにするわ。もう私には関係ない。そう思う方が、精神衛生上いいもの」
「確かに、それはその通りかもしれないね」
「そもそも、私にはもう家族がいるもの。私の望みはただ一つ、家族で幸せになりたい。ただそれだけよ」
「ああ、それに関しては僕も気持ちは同じだ……さて」
そこでギルバートは、とある家の玄関の呼び鈴を鳴らす。すると中から、慌ただしい足音が聞こえてきた。
その足音に、私達は心を躍らせる。その音色は、私達にとって幸せの音色なのだ。
「お父様! お母様!」
「もう、アルフェリナ。そんなに走ったら危ないでしょう?」
「あ、すみません。お祖母様……」
戸を勢いよく開いたのは、私達の娘であるアルフェリナである。
その後ろには、私達の息子であるクルードを抱きかかえたお義母様とお義父様がいた。
「アルフェリナ、久し振りね。元気にしていたかしら?」
「はい、元気いっぱいです」
「クルードも、元気そうね?」
「あ、はい……」
子供達は、私達の来訪を心から喜んでくれているようだ。
もちろん、その気持ちは私もギルバートも同じである。色々とあったが、ここに帰って来られて本当によかったと思う。
「ギルバート、色々と片付いたのか?」
「ええ、仕事の方もそれ以外も決着をつけられたと思っています」
「それなら結構」
「アルシエラさんを、ちゃんと守れたようね?」
「もちろんです。それが僕の何よりの使命ですから」
ギルバートと両親の会話を聞きながら、私は思っていた。
私の家族は、ここにいる皆とそれに伯母様一家、それからラナキンス商会の皆なのだ。私はそれを改めて実感する。
追放された私は、新天地にて家族を得られた。それは私にとって、何よりも幸福なことなのである。
42
お気に入りに追加
2,101
あなたにおすすめの小説
私がいなくなっても、あなたは探しにも来ないのでしょうね
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族家の生まれではありながらも、父の素行の悪さによって貧しい立場にあったエリス。そんな彼女は気づいた時、周囲から強引に決められる形で婚約をすることとなった。その相手は大金持ちの御曹司、リーウェル。エリスの母は貧しい暮らしと別れを告げられることに喜び、エリスが内心では快く思っていない婚約を受け入れるよう、大いに圧力をかける。さらには相手からの圧力もあり、断ることなどできなくなったエリスは嫌々リーウェルとの婚約を受け入れることとしたが、リーウェルは非常にプライドが高く自分勝手な性格で、エリスは婚約を結んでしまったことを心から後悔する…。何一つ輝きのない婚約生活を送る中、次第に鬱の海に沈んでいくエリスは、ある日その身を屋敷の最上階から投げてしまうのだった…。
婚約破棄した王子は年下の幼馴染を溺愛「彼女を本気で愛してる結婚したい」国王「許さん!一緒に国外追放する」
window
恋愛
「僕はアンジェラと婚約破棄する!本当は幼馴染のニーナを愛しているんだ」
アンジェラ・グラール公爵令嬢とロバート・エヴァンス王子との婚約発表および、お披露目イベントが行われていたが突然のロバートの主張で会場から大きなどよめきが起きた。
「お前は何を言っているんだ!頭がおかしくなったのか?」
アンドレア国王の怒鳴り声が響いて静まった会場。その舞台で親子喧嘩が始まって収拾のつかぬ混乱ぶりは目を覆わんばかりでした。
気まずい雰囲気が漂っている中、婚約披露パーティーは早々に切り上げられることになった。アンジェラの一生一度の晴れ舞台は、婚約者のロバートに台なしにされてしまった。
夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
window
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
子供の親権も放棄しろと言われてイリスは戸惑うことばかりでどうすればいいのか分からなくて混乱した。
父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。
その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。
そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。
そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
妹しか興味がない両親と欲しがりな妹は、我が家が没落することを知らないようです
香木あかり
恋愛
伯爵令嬢のサラは、妹ティナにしか興味がない両親と欲しがりな妹に嫌気がさしていた。
ある日、ティナがサラの婚約者を奪おうとしていることを知り、我慢の限界に達する。
ようやくこの家を出られると思っていましたのに……。またティナに奪われるのかしら?
……なんてね、奪われるのも計画通りなんですけれど。
財産も婚約者も全てティナに差し上げます。
もうすぐこの家は没落するのだから。
※複数サイトで掲載中です
【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません
すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」
他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。
今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。
「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」
貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。
王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。
あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!
王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。
ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる