2 / 44
2.私の生まれ
しおりを挟む
私は、エルシエット伯爵家の長女として生まれた。
しかし私の誕生は、それ程祝福された訳ではなかったようだ。
政略結婚をした父と母の仲は、最悪であった。念のため後継ぎになる子供は作ったが、息子が欲しかった父にとって私は疎ましい存在であったようだ。
母の方は、私に真っ当に愛情を注いでくれていたように思う。
ただ、彼女が時折見せる不快そうな顔は、今でも覚えている。きっと私のどこかに父親の陰を感じていたのだろう。今となっては、母のそんな気持ちがよくわかる。
私が七歳になった時に、母は亡くなった。
流行り病にかかって、そのまま亡くなってしまったのである。元々体が弱かったらしいが、そのあまりにも呆気ない死に、私は中々実感を得ることができなかった。
そんな私に対して、父は追い打ちのように再婚の報告をしてきた。
彼が連れてきたのは、母とは違うタイプの女性であった。それが恐らく、父の本来の好みであったのだろう。二人は恋愛関係にあったらしい。
「アルシエラ、彼女が私の新しい妻だ。そしてその隣にいるのが、お前の妹なのだ」
「妹? どういうことですか?」
「イフェリアは、私の子だ。イエネアと私の間にできた大切な子供なのだよ」
母が亡くなってすぐであるというのに、父と女性の間には子供がいた。
それはつまり、不義の子である。父は浮気して別の女性との間に子供を作り、その相手を妻と娘にしたのだ。
「あの女が亡くなったのは、本当に幸運だったよ。はっはっはっ、これでやっと私は幸せになることができるのだ」
「そ、そんな馬鹿なことを……」
「いいか。お前はこの家に置いておいてやる。しかし、私に逆らうことは許さんぞ。逆らったら追い出してやる。お前のような力のない子供が追い出されたらどうなるかわかるだろうな?」
「そ、それは……」
再婚してから、父は私に対して横暴に振る舞うようになった。
それはきっと、私を母が亡くなったからそう感じるようになったのだろう。きっと母は、今までずっと父から私を守ってくれていたのだ。
「ふん、あんな汚らわしい女の子供なんて、本来であれば追い出してやりたい所ですが……この子にも、まだまだ利用できる所がありますものね?」
「ああ、そうだとも。こんな奴でもエルシエット伯爵家の血を継いでいる。利用しない手はないだろう?」
「素晴らしい考えですね。傀儡として、この子はいつまでも利用してやりましょう」
継母であるイエネアは、父と同じように悪辣な人間であった。
似たもの夫婦に囲まれて、私はこれからの未来が暗いということを悟った。
しかしながら、その時はそれでもそこにいるしかないと思っていた。まだ非力だった私は、世界に羽ばたいていける勇気など持ち合わせていなかったのだ。
しかし私の誕生は、それ程祝福された訳ではなかったようだ。
政略結婚をした父と母の仲は、最悪であった。念のため後継ぎになる子供は作ったが、息子が欲しかった父にとって私は疎ましい存在であったようだ。
母の方は、私に真っ当に愛情を注いでくれていたように思う。
ただ、彼女が時折見せる不快そうな顔は、今でも覚えている。きっと私のどこかに父親の陰を感じていたのだろう。今となっては、母のそんな気持ちがよくわかる。
私が七歳になった時に、母は亡くなった。
流行り病にかかって、そのまま亡くなってしまったのである。元々体が弱かったらしいが、そのあまりにも呆気ない死に、私は中々実感を得ることができなかった。
そんな私に対して、父は追い打ちのように再婚の報告をしてきた。
彼が連れてきたのは、母とは違うタイプの女性であった。それが恐らく、父の本来の好みであったのだろう。二人は恋愛関係にあったらしい。
「アルシエラ、彼女が私の新しい妻だ。そしてその隣にいるのが、お前の妹なのだ」
「妹? どういうことですか?」
「イフェリアは、私の子だ。イエネアと私の間にできた大切な子供なのだよ」
母が亡くなってすぐであるというのに、父と女性の間には子供がいた。
それはつまり、不義の子である。父は浮気して別の女性との間に子供を作り、その相手を妻と娘にしたのだ。
「あの女が亡くなったのは、本当に幸運だったよ。はっはっはっ、これでやっと私は幸せになることができるのだ」
「そ、そんな馬鹿なことを……」
「いいか。お前はこの家に置いておいてやる。しかし、私に逆らうことは許さんぞ。逆らったら追い出してやる。お前のような力のない子供が追い出されたらどうなるかわかるだろうな?」
「そ、それは……」
再婚してから、父は私に対して横暴に振る舞うようになった。
それはきっと、私を母が亡くなったからそう感じるようになったのだろう。きっと母は、今までずっと父から私を守ってくれていたのだ。
「ふん、あんな汚らわしい女の子供なんて、本来であれば追い出してやりたい所ですが……この子にも、まだまだ利用できる所がありますものね?」
「ああ、そうだとも。こんな奴でもエルシエット伯爵家の血を継いでいる。利用しない手はないだろう?」
「素晴らしい考えですね。傀儡として、この子はいつまでも利用してやりましょう」
継母であるイエネアは、父と同じように悪辣な人間であった。
似たもの夫婦に囲まれて、私はこれからの未来が暗いということを悟った。
しかしながら、その時はそれでもそこにいるしかないと思っていた。まだ非力だった私は、世界に羽ばたいていける勇気など持ち合わせていなかったのだ。
33
お気に入りに追加
2,101
あなたにおすすめの小説
私がいなくなっても、あなたは探しにも来ないのでしょうね
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族家の生まれではありながらも、父の素行の悪さによって貧しい立場にあったエリス。そんな彼女は気づいた時、周囲から強引に決められる形で婚約をすることとなった。その相手は大金持ちの御曹司、リーウェル。エリスの母は貧しい暮らしと別れを告げられることに喜び、エリスが内心では快く思っていない婚約を受け入れるよう、大いに圧力をかける。さらには相手からの圧力もあり、断ることなどできなくなったエリスは嫌々リーウェルとの婚約を受け入れることとしたが、リーウェルは非常にプライドが高く自分勝手な性格で、エリスは婚約を結んでしまったことを心から後悔する…。何一つ輝きのない婚約生活を送る中、次第に鬱の海に沈んでいくエリスは、ある日その身を屋敷の最上階から投げてしまうのだった…。
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
window
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
子供の親権も放棄しろと言われてイリスは戸惑うことばかりでどうすればいいのか分からなくて混乱した。
婚約破棄した王子は年下の幼馴染を溺愛「彼女を本気で愛してる結婚したい」国王「許さん!一緒に国外追放する」
window
恋愛
「僕はアンジェラと婚約破棄する!本当は幼馴染のニーナを愛しているんだ」
アンジェラ・グラール公爵令嬢とロバート・エヴァンス王子との婚約発表および、お披露目イベントが行われていたが突然のロバートの主張で会場から大きなどよめきが起きた。
「お前は何を言っているんだ!頭がおかしくなったのか?」
アンドレア国王の怒鳴り声が響いて静まった会場。その舞台で親子喧嘩が始まって収拾のつかぬ混乱ぶりは目を覆わんばかりでした。
気まずい雰囲気が漂っている中、婚約披露パーティーは早々に切り上げられることになった。アンジェラの一生一度の晴れ舞台は、婚約者のロバートに台なしにされてしまった。
父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。
その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。
そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。
そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。
ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。
妹しか興味がない両親と欲しがりな妹は、我が家が没落することを知らないようです
香木あかり
恋愛
伯爵令嬢のサラは、妹ティナにしか興味がない両親と欲しがりな妹に嫌気がさしていた。
ある日、ティナがサラの婚約者を奪おうとしていることを知り、我慢の限界に達する。
ようやくこの家を出られると思っていましたのに……。またティナに奪われるのかしら?
……なんてね、奪われるのも計画通りなんですけれど。
財産も婚約者も全てティナに差し上げます。
もうすぐこの家は没落するのだから。
※複数サイトで掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる