132 / 135
いざという時は
しおりを挟む
私は、サガードと恋人関係になった。
それで正しいのかどうかはよくわからないが、正式な婚約をしていない以上、そう表現するしかないだろう。
「まあ、父上や兄上も、話は進めてくれているらしいんだが……」
「うん、お母様やお兄様もそんな感じで話してくれたよ」
「色々と大変なんだろうな……残念ながら、俺達にできることは、あまりない訳なんだが……」
「そうだね……」
王族とラーデイン公爵家は、現在協議を重ねている。私とサガードが婚約できるかどうかは、そこで決まるのだ。
私とサガードの婚約は、非常に難しい問題である。それは、イルフェアお姉様とサガードのお兄様であるキルクス様が婚約しているからだ。
貴族と王族の婚約というものには、役割がある。政治的な面の影響力があるのだ。
王族とラーデイン公爵家の婚約が二つ。それは、権力の偏りである。そのため、簡単ではないのである。
「上手くいってくれるといいよね?」
「ああ……というか、上手くいってくれないと困るというか……」
「そうだよね……まあ、逃げ道がないという訳でもないけど」
「逃げ道?」
私の言葉に、サガードは目を丸めていた。
今回の逃げ道、それを彼はわかっていないらしい。
その逃げ道というのは、とても難しいものである。簡単なものではない。
だが、逃げ道は確かにある。それを私は、知っているのだ。
「いざという時は、二人で逃げてもいいんだよ?」
「に、逃げる?」
「うん、駆け落ちというか、そういうこともできなくはないでしょう?」
「いや、それは……」
サガードは、言葉を詰まらせていた。
その反応は理解できる。駆け落ちなんて、とんでもないことだということは、私もわかっているからだ。
ただ、それは確かな逃げ道である。いざとなったら、二人で田舎にでも行けばいいのではないだろうか。
「地位とかお金とか、そういうものがなくても、大好きな人と一緒なら、なんとかなるものだと、私は思っているんだ」
「大好き……?」
「お母さんと一緒に暮らしていたから、そう思うのかもしれないね。まあ、村での暮らしは、周りの人にも助けてもらっていた訳だけど……」
「……いや、お前の言う通りだよ。そうだよな、二人でいれば、なんとかなるものだよな」
サガードは、私に対して笑顔を見せてくれた。
その笑顔が、私にとってはとても嬉しいものだった。彼が、王子という地位を捨ててでも私と一緒にいたいと思ってくれていると、わかったからである。
きっと、これなら大丈夫だ。私は、そう思うのだった。
それで正しいのかどうかはよくわからないが、正式な婚約をしていない以上、そう表現するしかないだろう。
「まあ、父上や兄上も、話は進めてくれているらしいんだが……」
「うん、お母様やお兄様もそんな感じで話してくれたよ」
「色々と大変なんだろうな……残念ながら、俺達にできることは、あまりない訳なんだが……」
「そうだね……」
王族とラーデイン公爵家は、現在協議を重ねている。私とサガードが婚約できるかどうかは、そこで決まるのだ。
私とサガードの婚約は、非常に難しい問題である。それは、イルフェアお姉様とサガードのお兄様であるキルクス様が婚約しているからだ。
貴族と王族の婚約というものには、役割がある。政治的な面の影響力があるのだ。
王族とラーデイン公爵家の婚約が二つ。それは、権力の偏りである。そのため、簡単ではないのである。
「上手くいってくれるといいよね?」
「ああ……というか、上手くいってくれないと困るというか……」
「そうだよね……まあ、逃げ道がないという訳でもないけど」
「逃げ道?」
私の言葉に、サガードは目を丸めていた。
今回の逃げ道、それを彼はわかっていないらしい。
その逃げ道というのは、とても難しいものである。簡単なものではない。
だが、逃げ道は確かにある。それを私は、知っているのだ。
「いざという時は、二人で逃げてもいいんだよ?」
「に、逃げる?」
「うん、駆け落ちというか、そういうこともできなくはないでしょう?」
「いや、それは……」
サガードは、言葉を詰まらせていた。
その反応は理解できる。駆け落ちなんて、とんでもないことだということは、私もわかっているからだ。
ただ、それは確かな逃げ道である。いざとなったら、二人で田舎にでも行けばいいのではないだろうか。
「地位とかお金とか、そういうものがなくても、大好きな人と一緒なら、なんとかなるものだと、私は思っているんだ」
「大好き……?」
「お母さんと一緒に暮らしていたから、そう思うのかもしれないね。まあ、村での暮らしは、周りの人にも助けてもらっていた訳だけど……」
「……いや、お前の言う通りだよ。そうだよな、二人でいれば、なんとかなるものだよな」
サガードは、私に対して笑顔を見せてくれた。
その笑顔が、私にとってはとても嬉しいものだった。彼が、王子という地位を捨ててでも私と一緒にいたいと思ってくれていると、わかったからである。
きっと、これなら大丈夫だ。私は、そう思うのだった。
66
お気に入りに追加
3,276
あなたにおすすめの小説
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
成人したのであなたから卒業させていただきます。
ぽんぽこ狸
恋愛
フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。
すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。
メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。
しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。
それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。
変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる