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77.初対面だが

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 私は、社交界に疎い。というよりも、平民は貴族のことなんて知らないのだ。
 ヴェルード公爵家のことだって、元々はそんなに知っている訳ではなかった。その領地で暮らしていたため、公爵家の名前と大まかな家族構成くらいまでしか知らなかったのだ。

 それ以上のことなど、辺境の村でひっそりと暮らしている私達には知る必要がないことであった。もちろん、大人の人達はもっと知っていたのだろうけれど、村の子供には正直関係がないことだったのだ。ヴェルード公爵家と関わり合うことも、ない訳だし。

 そんな私でも、詳しく知っていることがあった。
 それはこのアルフェリド王国の王族のことである。
 そちらとも関わりがないのだが、ヴェルード公爵家のことよりも知っていた。名前や何をしているのかなどが、王族の場合は平民にも大々的に発表されていたのだ。

「それじゃあ、俺のことも知っていたのか……」
「ええ、私と同い年の王子だと聞いていました」
「なるほど……」

 舞踏会の休憩中、私は客室でロヴェリオ殿下と言葉を交わしていた。
 ロヴェリオ殿下のことも、聞いたことがない訳ではない。
 ただ、彼のことを耳にする機会というものは、それ程多くなかったと思う。基本的に、年齢が高い王女や王子のことの方が、話題にはなりやすいのだ。

「僕のことも知っていたということかな?」
「あ、はい。それはもちろんです。リチャード殿下は、次期国王様でもありますし」
「まあ、どうなるのかはわからないのだけれどね」

 目の前にいる穏やかな青年、第一王子であるリチャード殿下のことは、特に良く聞いていた。
 次期国王の筆頭候補ということもあって、彼が何かをするとそれが瞬く間に王国中に広まっていくのだろう。それは末端の村にいる私達の耳にも、きちんと入ってくる程だった。
 とはいえ、そこまで伝わるまでに色々と脚色されていたのかもしれないし、それらの噂を全て鵜呑みにするべきではないだろう。リチャード殿下とは、あまり色眼鏡をかけずに接していった方が良い気がする。

「でも、クラリアさんとこうして会えて良かったよ。ずっと気になっていたんだ。君はただでさえ厳しい立場にある訳だし、色々と起こっていたようだからね」
「あ、はい。でも、ロヴェリオ殿下の助けなどもあって、なんとかなっています」
「それなら良かった。ロヴェリオもよく頑張ったね」
「いや、まあ、俺はそんなに何かした訳ではないんだが……」

 リチャード殿下は、穏やかな笑みを浮かべていた。
 彼は噂では優しい王子様であると言われていたが、それは本当であるらしい。その人を包み込むような雰囲気に、私は思わず笑みを浮かべていた。
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