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74.覚悟していたこと

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「オルディアお兄様は、寂しかったりしないんですか?」
「え?」

 私とオルディアお兄様は、中庭に出て来ていた。
 エフェリアお姉様とレフティス様を二人きりにするために、私達は客室から離れることにしたのである。
 そこで私は、お兄様に聞いてみることにした。イフェネアお姉様も懸念していたが、今回の件に何か思う所などがないのかを。

「エフェリアお姉様のことです。もちろん、実際に離れ離れになるのは先ではありますが、今回の婚約によって、それが現実味を帯びてきた訳ですし……」
「なるほど……まあ、寂しくないと言えば嘘はなるかな?」

 私の質問に対して、オルディアお兄様は苦笑いを浮かべていた。
 当然のことながら、やはり寂しいとは思っているようだ。それはわかっていたことである。私だって、寂しさを覚えているのだから。
 問題は、オルディアお兄様にとってエフェリアお姉様は特別だということだ。双子である二人の間には、普通以上の絆があるはずなのである。

「ただ、覚悟はしていたことだよ。何れはそうなると、思ってはいたんだ。例え僕達が一心同体であっても、ずっと一緒にいられる訳ではないと。まあ僕達は、貴族だからね。己の役目というものを果たさなければならない」
「それは……」
「まあ、大方、イフェネア姉上辺りに何か言われたのだろうけれど、心配はいらないよ。僕だってもう子供ではないからね」

 オルディアお兄様も、貴族の自覚というものをしっかりと持っているらしい。
 私やイフェネアお姉様は、その辺りについて侮っていたということだろうか。私達が心配するまでもなく、こういった時のことはいつも考えていたのかもしれない。

「僕よりもエフェリアの方が、今回の件はこらえていたようだけれど、さっきの様子から考えると、きっともう大丈夫だろう」
「それはそうですね……レフティス様は、良い人みたいですし」
「ああ、彼なら僕も安心することができるよ。きっと二人は、これからも仲良くやっていくだろうね」
「はい」

 私は、オルディアお兄様の言葉にゆっくりと頷いた。
 エフェリアお兄様とレフティス様、あの二人ならこれからも上手くやっていけるはずだ。気も合っていそうだったし、多分その点に関しては問題ないだろう。

「……しかし、これからエフェリアとどう接していくべきかは、結構難しい所かもしれないね」
「何かあったら、私を頼ってください……と言いたい所ですが、それはイフェネアお姉様あたりに任せた方が良さそうですね」
「いや、ありがたいとも」

 今回の件をきっかけに、エフェリアお姉様とオルディアお兄様の関係性というものは、少なからず変わるのだろう。
 それは仕方ないことだ。変化というものは、いつか必ず訪れるのだから。
 私だって、去年の今頃は自分がこうしているなんて思ってもいなかった。そういった経験から、オルディアお兄様を助けられる可能性はあるかもしれない。
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