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82.長い旅路も

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 私とクルレイド様は、マルセアさんと話をするために隣国に向かっていた。
 今回の件は、限られた人にしか知らされていないことだ。手紙に残したくもないことであるため、私達が自らマルセアさんの元に行くしかないのである。
 長く領地を離れることには少し不安晴が、その辺りはギルドルア様やエルライド侯爵家も協力してくれているし、多分大丈夫だろう。

「ロンダーも随分と立派になられましたね。エルライド侯爵は変わっていませんでしたが……」
「ええ、私も知らない内に、成長しているみたいですね」

 馬車の中で、私はクルレイド様と話をしていた。
 こうして二人で話していれば、長い旅もすぐに終わるだろう。楽しい時間というのは、あっという間なのだから。

「そういえば、エルライド侯爵は再婚などは考えられていないのでしょうか?」
「再婚、ですか?」
「ランペシー侯爵――いや、元ランペシー侯爵ですか。オルドーンさんは、メレティさんと再婚しそうでしょう?」
「まあ、お父様はお母様にぞっこんみたいですから……どうでしょうかね?」

 クルレイド様は、おじ様のことを引き合いに出してお父様のことを尋ねてきた。
 それに関しては、私も少々気になっていることだ。お母様を亡くしてから、お父様はずっと独り身である。それで本当にいいのだろうか。

「再婚してくれると、私としても幾分か安心なのですが……」
「そういうものですか?」
「ええ、私は既に家を離れていますからね。ロンダーも支えてくれてはいますが、やはり子供以上に頼れる人がいた方が、いいんじゃないかと思ってしまって。お父様も、決して強い人ではありませんからね」

 おじ様にもいえることだが、お父様は案外寂しがり屋だ。私が出て行ってから、ぼうっとすることも増えているとロンダーからも聞いている。
 やはり寄り添う人がいた方がいいのではないだろうか。ここの所私は、そんなことを考えている。

「といっても、相手の候補がいる訳ではないですから、なんとも言えないことなのですけれど……」
「その辺りに関しては難しい問題ですね。まあ、ロンダーが婚約したりしたら状況も変わってくるでしょうし、気長に考えた方がいいのかもしれませんね」
「ロンダーの婚約ですか……それもいつか決まるんですね。なんだか不思議な気分です」
「姉としては、やはり複雑な心境ですか?」
「そういう訳でもないですけれど」

 クルレイド様の言葉に、私は苦笑いを返す。
 そんな風に話をしながら、私達は長い旅路を進むのだった。
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