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71.父の許可

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「お父様、あの……」
「……話の流れで、大方の事情は察している」

 私が声をかけると、お父様はそのような言葉を返してきた。
 お父様も鈍感という訳ではない。流石に今までの会話で、私とクルレイド様の婚約の話があったと理解しているのだろう。

「エルライド侯爵、順番が前後してしまいましたが、レミアナ嬢とクルレイドの婚約を許可していただけませんか?」
「急な話、という訳でもなさそうですね……まあ、こちらとしては特に断る理由はありません。第二王子との婚約など、願ってもないことです」

 ギルドルア様の言葉に、お父様は笑みを浮かべていた。
 その視線は、クルレイド様の方に向いている。

「それは侯爵家の当主としても、一介の父親としてもです。クルレイド殿下であるならば、私も安心して娘を任せることができると思っています」
「エルライド侯爵……」
「クルレイド殿下、どうか娘のことをよろしくお願いします」
「いえ、こちらこそよろしくお願いします」

 お父様とクルレイド様は、お互いに一礼していた。
 とりあえず私とクルレイド様の婚約は認められたということだろう。
 そのことに私は安心する。これでランペシー侯爵家の領地の問題も含めて解決だ。

「ランペシー侯爵、見ての通り二人はまだ若い。婚約の話もまだ完全に進んでいるという訳でもありませんから、それまでの間あなたには領地の管理と引き継ぎの準備などをお願いできますか?」
「わかりました」

 ランペシー侯爵も安心したような表情をしていた。
 彼にとって一番気掛かりだったのは、領地に暮らす人々のことだったのだろう。その憂いがなくなって、安堵しているということかもしれない。

「よし、話がまとまって僕としても安心だ。最近この国はやけに荒れていたからね。そろそろ落ち着いてもらいたい所だ」
「兄上、そういえばランカーソン伯爵家の領地に関してはどうされるのですか? ランカーソン伯爵家も爵位は剥奪されるというか、本人も夫人も捕まっている訳ですし、そちらも誰かが上に立つ必要があるでしょう」
「ああ、それについては問題はないさ。信頼できる者に明け渡すつもりだ。こちらに関しては、元からその予定だったからね」

 クルレイド様からの質問に、ギルドルア様は笑顔を浮かべていた。
 恐らく、彼が言っているのはドナテス・マドラド子爵令息のことだろう。彼は今回の件の功労者だ。顔と名前、それに経歴まで変えて、ランカーソン伯爵家の領地という報酬を得られるのだろう。
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