66 / 90
66.大胆な行動
しおりを挟む
「……レミアナ嬢、そろそろ離れてもらってもいいですか?」
「え? あ、すみません。私、ずっと……」
「いえ、お気になさらず……」
私とアルペリオ侯爵令息の話が終わってから、クルレイド様は少し頬を赤らめながら、そんなことを言ってきた。
クルレイド様を止めるにあたって、私は彼に抱き着いていた。離すタイミングもなく、私はずっと彼に密着していたのである。
後から考えてみると、それは中々に恥ずかしいことだ。段々と顔が熱を帯びていく。
「それより、ありがとうございます。俺のことを止めてくれて」
「ああ、それは私の自己満足のようなものですから」
「いいえ、あそこで剣を振り下ろしていたら、俺はきっと後悔していました」
「そうですか……それならよかったです」
クルレイド様は、私に対して苦笑いを浮かべていた。
彼の言葉からは、恐怖のようなものが伝わってくる。それはきっと、命を奪おうとしていたことへの恐怖なのだろう。
それを見ると、改めて止めてよかったと思える。危険はあったが、私の行動は正しかったといえるだろう。
「……まったく、君達は本当に大胆なことをしてくれたな」
「え?」
「あ、兄上……」
そんな風に私が感慨に耽っていると、その場にギルドルア様が現れた。
彼は、楽しそうに笑っている。ある種、いつも通りのギルドルア様だ。
「衆人環視であんなことをされたら、婚約を結ばざるを得なくなってしまう。まだエルライド侯爵から了承は得られていないというのに……」
「えっと、それは……まあ、大丈夫だと思います」
「まあ、その話は置いておくとしようか。それより今は、そこの賊をなんとかしなければならないだろう」
「そうですね」
ギルドルア様の言葉に、クルレイド様はゆっくりと頷いた。
二人は、項垂れているアルペリオ侯爵令息にも目を向けている。彼は動かない。すっかり放心しているらしい。
確か彼は、以前もそのような反応をしていた。私に拒絶されると、アルペリオ侯爵令息はかなりショックを受けるらしい。
「懲りない人ですね……エルライド侯爵家の屋敷でも、私はあなたを拒絶したというのに」
「そういう所は不屈ということか。しかしレミアナ嬢、もう心配はいらないぞ? これからこの者は、牢屋の中だ。あなたを追いかけることなんてできない」
私の呟きに返答をした後、ギルドルア様はゆっくりと手を上げた。
すると、兵士達がアルペリオ侯爵令息を拘束する。その扱いは、最早貴族ではない。ただの賊として、アルペリオ侯爵令息は処理されるようだ。
「え? あ、すみません。私、ずっと……」
「いえ、お気になさらず……」
私とアルペリオ侯爵令息の話が終わってから、クルレイド様は少し頬を赤らめながら、そんなことを言ってきた。
クルレイド様を止めるにあたって、私は彼に抱き着いていた。離すタイミングもなく、私はずっと彼に密着していたのである。
後から考えてみると、それは中々に恥ずかしいことだ。段々と顔が熱を帯びていく。
「それより、ありがとうございます。俺のことを止めてくれて」
「ああ、それは私の自己満足のようなものですから」
「いいえ、あそこで剣を振り下ろしていたら、俺はきっと後悔していました」
「そうですか……それならよかったです」
クルレイド様は、私に対して苦笑いを浮かべていた。
彼の言葉からは、恐怖のようなものが伝わってくる。それはきっと、命を奪おうとしていたことへの恐怖なのだろう。
それを見ると、改めて止めてよかったと思える。危険はあったが、私の行動は正しかったといえるだろう。
「……まったく、君達は本当に大胆なことをしてくれたな」
「え?」
「あ、兄上……」
そんな風に私が感慨に耽っていると、その場にギルドルア様が現れた。
彼は、楽しそうに笑っている。ある種、いつも通りのギルドルア様だ。
「衆人環視であんなことをされたら、婚約を結ばざるを得なくなってしまう。まだエルライド侯爵から了承は得られていないというのに……」
「えっと、それは……まあ、大丈夫だと思います」
「まあ、その話は置いておくとしようか。それより今は、そこの賊をなんとかしなければならないだろう」
「そうですね」
ギルドルア様の言葉に、クルレイド様はゆっくりと頷いた。
二人は、項垂れているアルペリオ侯爵令息にも目を向けている。彼は動かない。すっかり放心しているらしい。
確か彼は、以前もそのような反応をしていた。私に拒絶されると、アルペリオ侯爵令息はかなりショックを受けるらしい。
「懲りない人ですね……エルライド侯爵家の屋敷でも、私はあなたを拒絶したというのに」
「そういう所は不屈ということか。しかしレミアナ嬢、もう心配はいらないぞ? これからこの者は、牢屋の中だ。あなたを追いかけることなんてできない」
私の呟きに返答をした後、ギルドルア様はゆっくりと手を上げた。
すると、兵士達がアルペリオ侯爵令息を拘束する。その扱いは、最早貴族ではない。ただの賊として、アルペリオ侯爵令息は処理されるようだ。
51
お気に入りに追加
2,609
あなたにおすすめの小説
聖女の証を持っていますが、転生前に聖女は断っていたようなので、国を救う事は出来ません
花見 有
恋愛
聖女の証を持って産まれたマデリーナはレチュベーテ王国で日々聖女としての鍛練を積んできた。だがある日、自身が転生前に聖女になる事を断っていた事を思い出す。聖女になれないマデリーナは国を救う事が出来るのか!?
結局、私の言っていたことが正しかったようですね、元旦那様
新野乃花(大舟)
恋愛
ノレッジ伯爵は自身の妹セレスの事を溺愛するあまり、自身の婚約者であるマリアとの関係をおろそかにしてしまう。セレスもまたマリアに対する嫌がらせを繰り返し、その罪をすべてマリアに着せて楽しんでいた。そんなある日の事、マリアとの関係にしびれを切らしたノレッジはついにマリアとの婚約を破棄してしまう。その時、マリアからある言葉をかけられるのだが、負け惜しみに過ぎないと言ってその言葉を切り捨てる。それが後々、自分に跳ね返ってくるものとも知らず…。
【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?
との
恋愛
「取り替えっこしようね」
またいつもの妹の我儘がはじまりました。
自分勝手な妹にも家族の横暴にも、もう我慢の限界!
逃げ出した先で素敵な出会いを経験しました。
幸せ掴みます。
筋肉ムキムキのオネエ様から一言・・。
「可愛いは正義なの!」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済み
R15は念の為・・
あなたは婚約者よりも幼馴染を愛するのですね?
新野乃花(大舟)
恋愛
エリック侯爵はソフィアとの婚約を築いておきながら、自信が溺愛する幼馴染であるエレナとの時間を優先していた。ある日、エリックはエレナと共謀する形でソフィアに対して嫌がらせを行い、婚約破棄をさせる流れを作り上げる。しかしその思惑は外れ、ソフィアはそのまま侯爵の前から姿を消してしまう。…婚約者を失踪させたということで、侯爵を見る周りの目は非常に厳しいものになっていき、最後には自分の行動の全てを後悔することになるのだった…。
悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。
【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。
しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」
その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。
「了承しました」
ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。
(わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの)
そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。
(それに欲しいものは手に入れたわ)
壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。
(愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?)
エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。
「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」
類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。
だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。
今後は自分の力で頑張ってもらおう。
ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。
ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。
カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*)
幸せなお飾りの妻になります!
風見ゆうみ
恋愛
私、アイリス・ノマド男爵令嬢は、幼い頃から家族のイタズラ癖に悩まされ、少しでも早く自立しようと考えていた。
婚約者のロバート・デヴァイスと、家族と共に出席した夜会で、ロバートから突然、婚約破棄を宣言された上に、私の妹と一緒になりたいと言われてしまう。
ショックで会場を出ようとすると引き止められ、さっきの発言はいつものイタズラだと言われる。
イタズラにも程があると会場を飛び出した私の前に現れたのは、パーティーの主催者であるリアム・マオニール公爵だった。
一部始終を見ていた彼は、お飾りの妻を探しているといい、家族から逃げ出したかった私は彼の元へと嫁ぐ事になった。
屋敷の人もとても優しくて、こんなに幸せでいいの?
幸せを感じていたのも束の間、両親や妹、そして元婚約者が私に戻ってこいと言い出しはじめて――。
今更、後悔されても知らないわ!
※作者独自の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
私がいなくなっても、あなたは探しにも来ないのでしょうね
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族家の生まれではありながらも、父の素行の悪さによって貧しい立場にあったエリス。そんな彼女は気づいた時、周囲から強引に決められる形で婚約をすることとなった。その相手は大金持ちの御曹司、リーウェル。エリスの母は貧しい暮らしと別れを告げられることに喜び、エリスが内心では快く思っていない婚約を受け入れるよう、大いに圧力をかける。さらには相手からの圧力もあり、断ることなどできなくなったエリスは嫌々リーウェルとの婚約を受け入れることとしたが、リーウェルは非常にプライドが高く自分勝手な性格で、エリスは婚約を結んでしまったことを心から後悔する…。何一つ輝きのない婚約生活を送る中、次第に鬱の海に沈んでいくエリスは、ある日その身を屋敷の最上階から投げてしまうのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる