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66.大胆な行動

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「……レミアナ嬢、そろそろ離れてもらってもいいですか?」
「え? あ、すみません。私、ずっと……」
「いえ、お気になさらず……」

 私とアルペリオ侯爵令息の話が終わってから、クルレイド様は少し頬を赤らめながら、そんなことを言ってきた。
 クルレイド様を止めるにあたって、私は彼に抱き着いていた。離すタイミングもなく、私はずっと彼に密着していたのである。
 後から考えてみると、それは中々に恥ずかしいことだ。段々と顔が熱を帯びていく。

「それより、ありがとうございます。俺のことを止めてくれて」
「ああ、それは私の自己満足のようなものですから」
「いいえ、あそこで剣を振り下ろしていたら、俺はきっと後悔していました」
「そうですか……それならよかったです」

 クルレイド様は、私に対して苦笑いを浮かべていた。
 彼の言葉からは、恐怖のようなものが伝わってくる。それはきっと、命を奪おうとしていたことへの恐怖なのだろう。
 それを見ると、改めて止めてよかったと思える。危険はあったが、私の行動は正しかったといえるだろう。

「……まったく、君達は本当に大胆なことをしてくれたな」
「え?」
「あ、兄上……」

 そんな風に私が感慨に耽っていると、その場にギルドルア様が現れた。
 彼は、楽しそうに笑っている。ある種、いつも通りのギルドルア様だ。

「衆人環視であんなことをされたら、婚約を結ばざるを得なくなってしまう。まだエルライド侯爵から了承は得られていないというのに……」
「えっと、それは……まあ、大丈夫だと思います」
「まあ、その話は置いておくとしようか。それより今は、そこの賊をなんとかしなければならないだろう」
「そうですね」

 ギルドルア様の言葉に、クルレイド様はゆっくりと頷いた。
 二人は、項垂れているアルペリオ侯爵令息にも目を向けている。彼は動かない。すっかり放心しているらしい。
 確か彼は、以前もそのような反応をしていた。私に拒絶されると、アルペリオ侯爵令息はかなりショックを受けるらしい。

「懲りない人ですね……エルライド侯爵家の屋敷でも、私はあなたを拒絶したというのに」
「そういう所は不屈ということか。しかしレミアナ嬢、もう心配はいらないぞ? これからこの者は、牢屋の中だ。あなたを追いかけることなんてできない」

 私の呟きに返答をした後、ギルドルア様はゆっくりと手を上げた。
 すると、兵士達がアルペリオ侯爵令息を拘束する。その扱いは、最早貴族ではない。ただの賊として、アルペリオ侯爵令息は処理されるようだ。
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