53 / 90
53.これからのこと
しおりを挟む
私とクルレイド様は、ギルドルア様と向き合って座っていた。
ランカーソン伯爵夫人に関する事件は、大方片付いたといえるだろう。そんな中、私達は二人で彼に呼び出されたのである。
「さて、まずはあの二人がどうなるかを話しておくべきだろうか」
「ランカーソン伯爵と夫人のことですか、大方の予想はついています。伯爵は極刑、夫人は終身刑でしょう?」
ギルドルア様の言葉に対して、クルレイド様はそのような回答を返した。
その意見には、私も同意である。状況的に考えて、二人はそのような罰を与えられるようになるだろう。
「クルレイド、君はまだまだ見通しが甘いようだね。もう少し考えてみたまえ」
「違うのですか?」
「ああ、今回は違う結果になるだろう」
しかしギルドルア様は、クルレイド様の意見を切り捨てた。
それに対して、私達は顔を見合わせる。違う結果など、まったく考えていなかったからだ。
「まさか、何かしらの司法取引を働くという訳でしょうか? それは感心できませんよ、兄上」
「そういう訳ではないさ。ただ、これから何が起こるかを一度冷静になって考えてみてくれ」
「そう言われましても……」
ギルドルア様は、またも他人の重大な事柄をクイズにしていた。
それはあまり褒められたことではないだろう。ただ、私達としてはできればこのクイズに正解しておきたい所だ。
「重要なのは、我々のことだ、クルレイド。今回の件で、父上はミスを犯した。その責任を取らなければならないだろう」
「……父上は王位を退くということですか? なるほど、少々早すぎるような気もしますが、仕方ありませんか。夫人に良いようにされていた訳ですし」
「そうすると何が起こる」
ギルドルア様は、笑みを浮かべている。
そこで私は理解した。彼が何を考えているかということを。
「ギルドルア様は、恩赦が与えられると考えているのですね?」
「ああ、恐らくはそうなるだろう。ランカーソン伯爵の処刑が実施される可能性は低い。父上はあれで人情を重んじるからな。伯爵の処刑は、回避するだろう」
ギルドルア様も、ランカーソン伯爵の処刑の実施をそこまで望んでいる訳ではないのだろう。それは表情から伝わってくる。
彼は体の芯まで冷たい人間という訳ではないようだ。できることなら、命を奪うようなことはしたくないのだろう。
「まあそれでも、ランカーソン伯爵は終身刑だ。夫人の減刑がなされるとしても、どの道彼女も出て来られない。その結末は僕にとって不満はないものだ」
「そうですね。二人が自由にできないのなら、特に問題はありませんか……」
ギルドルア様とクルレイド様は、向き合ってそんな会話を交わしていた。
そうやって頷き合っている姿は、よく似ている。やはり二人は、兄弟ということなのだろう。
ランカーソン伯爵夫人に関する事件は、大方片付いたといえるだろう。そんな中、私達は二人で彼に呼び出されたのである。
「さて、まずはあの二人がどうなるかを話しておくべきだろうか」
「ランカーソン伯爵と夫人のことですか、大方の予想はついています。伯爵は極刑、夫人は終身刑でしょう?」
ギルドルア様の言葉に対して、クルレイド様はそのような回答を返した。
その意見には、私も同意である。状況的に考えて、二人はそのような罰を与えられるようになるだろう。
「クルレイド、君はまだまだ見通しが甘いようだね。もう少し考えてみたまえ」
「違うのですか?」
「ああ、今回は違う結果になるだろう」
しかしギルドルア様は、クルレイド様の意見を切り捨てた。
それに対して、私達は顔を見合わせる。違う結果など、まったく考えていなかったからだ。
「まさか、何かしらの司法取引を働くという訳でしょうか? それは感心できませんよ、兄上」
「そういう訳ではないさ。ただ、これから何が起こるかを一度冷静になって考えてみてくれ」
「そう言われましても……」
ギルドルア様は、またも他人の重大な事柄をクイズにしていた。
それはあまり褒められたことではないだろう。ただ、私達としてはできればこのクイズに正解しておきたい所だ。
「重要なのは、我々のことだ、クルレイド。今回の件で、父上はミスを犯した。その責任を取らなければならないだろう」
「……父上は王位を退くということですか? なるほど、少々早すぎるような気もしますが、仕方ありませんか。夫人に良いようにされていた訳ですし」
「そうすると何が起こる」
ギルドルア様は、笑みを浮かべている。
そこで私は理解した。彼が何を考えているかということを。
「ギルドルア様は、恩赦が与えられると考えているのですね?」
「ああ、恐らくはそうなるだろう。ランカーソン伯爵の処刑が実施される可能性は低い。父上はあれで人情を重んじるからな。伯爵の処刑は、回避するだろう」
ギルドルア様も、ランカーソン伯爵の処刑の実施をそこまで望んでいる訳ではないのだろう。それは表情から伝わってくる。
彼は体の芯まで冷たい人間という訳ではないようだ。できることなら、命を奪うようなことはしたくないのだろう。
「まあそれでも、ランカーソン伯爵は終身刑だ。夫人の減刑がなされるとしても、どの道彼女も出て来られない。その結末は僕にとって不満はないものだ」
「そうですね。二人が自由にできないのなら、特に問題はありませんか……」
ギルドルア様とクルレイド様は、向き合ってそんな会話を交わしていた。
そうやって頷き合っている姿は、よく似ている。やはり二人は、兄弟ということなのだろう。
43
お気に入りに追加
2,614
あなたにおすすめの小説
最初で最後の我儘を
みん
恋愛
獣人国では、存在が無いように扱われている王女が居た。そして、自分の為、他人の為に頑張る1人の女の子が居た。この2人の関係は………?
この世界には、人間の国と獣人の国と龍の国がある。そして、それぞれの国には、扱い方の違う“聖女”が存在する。その聖女の絡む恋愛物語。
❋相変わらずの、(独自設定有りの)ゆるふわ設定です。メンタルも豆腐並なので、緩い気持ちで読んでいただければ幸いです。
❋他視点有り。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字がよくあります。すみません!
【完結】冷遇された翡翠の令嬢は二度と貴方と婚約致しません!
ユユ
恋愛
酷い人生だった。
神様なんていないと思った。
死にゆく中、今まで必死に祈っていた自分が愚かに感じた。
苦しみながら意識を失ったはずが、起きたら婚約前だった。
絶対にあの男とは婚約しないと決めた。
そして未来に起きることに向けて対策をすることにした。
* 完結保証あり。
* 作り話です。
* 巻き戻りの話です。
* 処刑描写あり。
* R18は保険程度。
暇つぶしにどうぞ。
婚約者と親友に裏切られた伯爵令嬢は侯爵令息に溺愛される
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のマーガレットは、最近婚約者の伯爵令息、ジェファーソンの様子がおかしい事を気にして、親友のマリンに日々相談していた。マリンはいつも自分に寄り添ってくれる大切な親友だと思っていたマーガレット。
でも…
マリンとジェファーソンが密かに愛し合っている場面を目撃してしまう。親友と婚約者に裏切られ、マーガレットは酷くショックを受ける。
不貞を働く男とは結婚できない、婚約破棄を望むマーガレットだったが、2人の不貞の証拠を持っていなかったマーガレットの言う事を、誰も信じてくれない。
それどころか、彼らの嘘を信じた両親からは怒られ、クラスメイトからは無視され、次第に追い込まれていく。
そんな中、マリンの婚約者、ローインの誕生日パーティーが開かれることに。必ず参加する様にと言われたマーガレットは、重い足取りで会場に向かったのだが…
許してもらえるだなんて本気で思っているのですか?
風見ゆうみ
恋愛
ネイロス伯爵家の次女であるわたしは、幼い頃から変わった子だと言われ続け、家族だけじゃなく、周りの貴族から馬鹿にされ続けてきた。
そんなわたしを公爵である伯父はとても可愛がってくれていた。
ある日、伯父がお医者様から余命を宣告される。
それを聞いたわたしの家族は、子供のいない伯父の財産が父に入ると考えて豪遊し始める。
わたしの婚約者も伯父の遺産を当てにして、姉に乗り換え、姉は姉で伯父が選んでくれた自分の婚約者をわたしに押し付けてきた。
伯父が亡くなったあと、遺言書が公開され、そこには「遺留分以外の財産全てをリウ・ネイロスに、家督はリウ・ネイロスの婚約者に譲る」と書かれていた。
そのことを知った家族たちはわたしのご機嫌伺いを始める。
え……、許してもらえるだなんて本気で思ってるんですか?
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
偽りの婚約のつもりが愛されていました
ユユ
恋愛
可憐な妹に何度も婚約者を奪われて生きてきた。
だけど私は子爵家の跡継ぎ。
騒ぎ立てることはしなかった。
子爵家の仕事を手伝い、婚約者を持つ令嬢として
慎ましく振る舞ってきた。
五人目の婚約者と妹は体を重ねた。
妹は身籠った。
父は跡継ぎと婚約相手を妹に変えて
私を今更嫁に出すと言った。
全てを奪われた私はもう我慢を止めた。
* 作り話です。
* 短めの話にするつもりです
* 暇つぶしにどうぞ
幼馴染みに婚約者を奪われ、妹や両親は私の財産を奪うつもりのようです。皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?
水上
恋愛
「僕は幼馴染みのベラと結婚して、幸せになるつもりだ」
結婚して幸せになる……、結構なことである。
祝福の言葉をかける場面なのだろうけれど、そんなことは不可能だった。
なぜなら、彼は幼馴染み以外の人物と婚約していて、その婚約者というのが、この私だからである。
伯爵令嬢である私、キャサリン・クローフォドは、婚約者であるジャック・ブリガムの言葉を、受け入れられなかった。
しかし、彼は勝手に話を進め、私は婚約破棄を言い渡された。
幼馴染みに婚約者を奪われ、私はショックを受けた。
そして、私の悲劇はそれだけではなかった。
なんと、私の妹であるジーナと両親が、私の財産を奪おうと動き始めたのである。
私の周りには、身勝手な人物が多すぎる。
しかし、私にも一人だけ味方がいた。
彼は、不適な笑みを浮かべる。
私から何もかも奪うなんて、あなたたちは少々やり過ぎました。
私は、やられたままで終わるつもりはないので、皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました
結城芙由奈
恋愛
【何故我慢しなければならないのかしら?】
20歳の子爵家令嬢オリビエは母親の死と引き換えに生まれてきた。そのため父からは疎まれ、実の兄から憎まれている。義母からは無視され、異母妹からは馬鹿にされる日々。頼みの綱である婚約者も冷たい態度を取り、異母妹と惹かれ合っている。オリビエは少しでも受け入れてもらえるように媚を売っていたそんなある日悪女として名高い侯爵令嬢とふとしたことで知りあう。交流を深めていくうちに侯爵令嬢から諭され、自分の置かれた環境に疑問を抱くようになる。そこでオリビエは媚びるのをやめることにした。するとに周囲の環境が変化しはじめ――
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる