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15.王子の介入

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「ふふ、レミアナ嬢、あなたは本当に可愛らしい人ですね……」
「……少しいいか?」
「あら?」

 アルペリオ兄様とランカーソン伯爵夫人の関係に、私は少し参っていた。
 クルレイド様は、そんな私を庇うように前に出てきた。彼はロンダーに目配せをする。
 すると弟は、私をそっと抱き寄せた。安心させようとしてくれているのだろう。

「さっきからずっと聞いていたが、ランカーソン伯爵夫人、あなたという人は随分と趣味が悪いようだな?」
「あらあら、これは第二王子、手厳しい意見ですね? 私は王子に何かしましたか?」
「自分の胸に一度手を当てて考えてみたらどうだ?」

 クルレイド様は、ランカーソン伯爵夫人を睨みつけていた。
 その口調も、心なしか荒々しい。明らかに敵意を向けているといった感じだ。
 それに私は、少しだけ驚いていた。まさかクルレイド様が、そんなに怒っているとは思っていなかったからだ。

「心臓の音がしますね」
「あなたが一体何をしたいのか、俺には理解することができない。そもそもの話、ここでこんなことをしてただで済むと思っているのか?」
「ふふ……」

 クルレイド様の言葉に対して、夫人は笑みを浮かべていた。
 先程と変わらず余裕そうな態度である。ただクルレイド様が言う通り、確かに彼女は危うい状況だ。
 アルペリオ兄様と二人で出掛けている。その事実は彼女を追い詰めるだろう。単純に浮気である訳だし、その不貞行為を糾弾されるはずだ。

「お若いですね、クルレイド王子。本当に可愛らしくて、笑ってしまいます」
「何がおかしいというのだ?」
「この程度のことで、私は揺るぎはしませんよ。揺らぐくらいなら、私は今ここにいられません」
「なんだと?」

 ランカーソン伯爵夫人は、王子にさえ少し上から目線であった。
 それは何かしらの自信があるからということなのだろう。自由な振る舞いをしてもいい何かが、彼女にはあるのだ。

「ふふ……よろしかったら、私が王子を大人にして差し上げましょうか? あなたのような可愛らしい方なら、私はいつでも歓迎です。ああ、そちらの男の子も」

 ランカーソン伯爵夫人は、クルレイド様やロンダーにまで粉をかけていた。噂通り、見境がない人物である。
 そんな彼女に、アルペリオ兄様は少し鋭い視線を向けていた。それはつまり、嫉妬しているということだろうか。

「お断りだ。誰があなたなんかの軍門に下るか」
「僕も、クルレイドさんと同じ意見です」
「ふふっ……」

 そんな中、クルレイド様とロンダーは堂々と誘いを断った。
 その目には迷いがない。彼はランカーソン伯爵夫人の色香に、まったく惑わされていないようである。
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