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10.とある噂
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私達は、町の味の濃い定食屋にいる。
なんとか料理を食べ終えた私とロンダーは、デザートをいただいていた。
不思議なことに、デザートはとてもおいしかった。甘すぎる訳でもなかったし、この店のことがどんどんとわからなくなってくる。
「なるほど、レミアナ嬢はやはり色々と大変だったという訳ですか」
「まあ、そうですね」
そんなデザートをいただきながら、私は自分の婚約破棄について話していた。
二つの侯爵家に起こった問題は、クルレイド様の耳にも入っていたようだ。彼も大まかに事情を知っていた。
「アルペリオさん及びランペシー侯爵家が姉上にした仕打ちは、許されることではありません。父上もかなり怒っていますよ」
「それは当然だろうな。しかし、アルペリオ・ランペシーか……」
「クルレイド様、どうかされたのですか?」
ロンダーの言葉を受けて、クルレイド様は顎に手を当てて何かを考え始めた。
その様子が、当然私は気になった。アルペリオ兄様が、どうかしたのだろうか。
「ああいえ、その名前を最近聞いたような気がして……」
「アルペリオ兄様の名前を、ですか?」
「ええ、しかしどこで聞いたのだったか……ああ」
そこでクルレイド様は、目を見開いていた。
その後彼は、罰が悪そうな表情になる。つまり、アルペリオ兄様の名前を何か悪いことで聞いたということなのだろう。
「クルレイド様、一体どこでアルペリオ兄様のことを聞いたのですか?」
「レミアナ嬢、あなたはランカーソン伯爵夫人……ルノメリアのことをご存知ですか?」
「ルノメリア? えっと、確か……」
クルレイド様が出した名前は、私も聞いたことがあった。
確かその女性は、恋多き女性だったはずだ。かつては浮き名を流したと社交界では有名人であったらしい。
「その女性が、どうかされたのですか?」
「ランカーソン伯爵と結婚してから、彼女は鳴りを潜めたと言われていました。しかしここ最近、また悪い噂が流れているようで……」
「悪い噂……まさか」
「ええ、彼女は不倫しているそうです。その相手として、アルペリオ・ランペシー侯爵令息の名前もあがっていました。あくまで、可能性に過ぎないようですが……」
クルレイド様の言葉に、私とロンダーは顔を見合わせた。
どうやらアルペリオ兄様は、私を妹のように思っているからという理由だけで婚約破棄した訳ではなさそうだ。あの言葉の裏には、何かしらの思惑があったのだろう。恐らく、ランカーソン伯爵夫人に関する何かが。
なんとか料理を食べ終えた私とロンダーは、デザートをいただいていた。
不思議なことに、デザートはとてもおいしかった。甘すぎる訳でもなかったし、この店のことがどんどんとわからなくなってくる。
「なるほど、レミアナ嬢はやはり色々と大変だったという訳ですか」
「まあ、そうですね」
そんなデザートをいただきながら、私は自分の婚約破棄について話していた。
二つの侯爵家に起こった問題は、クルレイド様の耳にも入っていたようだ。彼も大まかに事情を知っていた。
「アルペリオさん及びランペシー侯爵家が姉上にした仕打ちは、許されることではありません。父上もかなり怒っていますよ」
「それは当然だろうな。しかし、アルペリオ・ランペシーか……」
「クルレイド様、どうかされたのですか?」
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その様子が、当然私は気になった。アルペリオ兄様が、どうかしたのだろうか。
「ああいえ、その名前を最近聞いたような気がして……」
「アルペリオ兄様の名前を、ですか?」
「ええ、しかしどこで聞いたのだったか……ああ」
そこでクルレイド様は、目を見開いていた。
その後彼は、罰が悪そうな表情になる。つまり、アルペリオ兄様の名前を何か悪いことで聞いたということなのだろう。
「クルレイド様、一体どこでアルペリオ兄様のことを聞いたのですか?」
「レミアナ嬢、あなたはランカーソン伯爵夫人……ルノメリアのことをご存知ですか?」
「ルノメリア? えっと、確か……」
クルレイド様が出した名前は、私も聞いたことがあった。
確かその女性は、恋多き女性だったはずだ。かつては浮き名を流したと社交界では有名人であったらしい。
「その女性が、どうかされたのですか?」
「ランカーソン伯爵と結婚してから、彼女は鳴りを潜めたと言われていました。しかしここ最近、また悪い噂が流れているようで……」
「悪い噂……まさか」
「ええ、彼女は不倫しているそうです。その相手として、アルペリオ・ランペシー侯爵令息の名前もあがっていました。あくまで、可能性に過ぎないようですが……」
クルレイド様の言葉に、私とロンダーは顔を見合わせた。
どうやらアルペリオ兄様は、私を妹のように思っているからという理由だけで婚約破棄した訳ではなさそうだ。あの言葉の裏には、何かしらの思惑があったのだろう。恐らく、ランカーソン伯爵夫人に関する何かが。
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