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6.旅行の行き先は
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私は、弟のロンダーとともに王都へと向かっていた。
色々と話し合った結果、私達の旅行の目的地はそこに決まったのだ。
「父上は残念だったね」
「ええ、なんというか、少しだけ気が乗らないわ」
「それじゃあ、父上も浮かばれないよ。楽しんで来いって、言ってくれただろう?」
「それは、そうなのだけれど……」
お父様に旅行の話を持ち掛けた所、私達だけで行ってくるように言われた。
忙しいお父様は、現在長くエルライド侯爵家の屋敷から離れられないらしい。
それなら、旅行も中止しようと思った私に、お父様は言ってきた。自分のことはいいから、二人で楽しんで来いと。
「せっかく、久し振りに王都にまで赴くのだから、この際細かいことは気にせず楽しもうよ」
「まあ、王都に行けるのは楽しみなのだけれど……」
「この国の中心だけあって、色々なものがあるからね」
ロンダーは、私に対して笑顔を浮かべていた。それだけ王都に行くのが楽しみなのだろう。
しかし、私は知っている。彼にとって重要なのは行き先ではないということを。
「あなたにとっては、どちらかというと友達に会える方が重要なのよね?」
「うっ……まあ、そういえなくもないかな?」
「別に恥ずかしがることではないでしょう? 友達に会いに行くのが楽しみなのは普通のことよ」
ロンダーは、この国の第二王子であるクルレイド様と仲が良い。ひょんなことから知り合った二人は、不思議と気が合ったそうだ。
彼にとって、クルレイド様は兄貴分とでもいえるかもしれない。私とアルペリオ様とはまた少し違った関係性である。
「姉上は、それも考慮して王都を行き先にしてくれたんだよね……」
「まあ、そうともいえるわね。でも、本当に行きたい所だから提案しただけなのよ? 王都はやっぱり楽しい所だし」
ロンダーは、少しだけ私に気を遣っている様子だった。
そんな必要はないというのに、自分とクルレイド様の関係が、私にアルペリオ様を想起させるとでも思っているのだろう。しかしそれは、いらぬ気遣いというものだ。
「行くからには楽しむつもりだから、あなたも細かいことは気にする必要はないわ。大体、クルレイド様側の都合もある訳だし、会えるかどうかもわからないのよ?」
「まあ、それはそうだね。クルレイドさんは王子だし、忙しいかもね……」
「会えるといいわね?」
「……うん」
私の言葉に、ロンダーはゆっくりと頷いていた。
やはり、友人と会いたいという気持ちは強いのだろう。その表情からは、それがよく伝わってきた。
色々と話し合った結果、私達の旅行の目的地はそこに決まったのだ。
「父上は残念だったね」
「ええ、なんというか、少しだけ気が乗らないわ」
「それじゃあ、父上も浮かばれないよ。楽しんで来いって、言ってくれただろう?」
「それは、そうなのだけれど……」
お父様に旅行の話を持ち掛けた所、私達だけで行ってくるように言われた。
忙しいお父様は、現在長くエルライド侯爵家の屋敷から離れられないらしい。
それなら、旅行も中止しようと思った私に、お父様は言ってきた。自分のことはいいから、二人で楽しんで来いと。
「せっかく、久し振りに王都にまで赴くのだから、この際細かいことは気にせず楽しもうよ」
「まあ、王都に行けるのは楽しみなのだけれど……」
「この国の中心だけあって、色々なものがあるからね」
ロンダーは、私に対して笑顔を浮かべていた。それだけ王都に行くのが楽しみなのだろう。
しかし、私は知っている。彼にとって重要なのは行き先ではないということを。
「あなたにとっては、どちらかというと友達に会える方が重要なのよね?」
「うっ……まあ、そういえなくもないかな?」
「別に恥ずかしがることではないでしょう? 友達に会いに行くのが楽しみなのは普通のことよ」
ロンダーは、この国の第二王子であるクルレイド様と仲が良い。ひょんなことから知り合った二人は、不思議と気が合ったそうだ。
彼にとって、クルレイド様は兄貴分とでもいえるかもしれない。私とアルペリオ様とはまた少し違った関係性である。
「姉上は、それも考慮して王都を行き先にしてくれたんだよね……」
「まあ、そうともいえるわね。でも、本当に行きたい所だから提案しただけなのよ? 王都はやっぱり楽しい所だし」
ロンダーは、少しだけ私に気を遣っている様子だった。
そんな必要はないというのに、自分とクルレイド様の関係が、私にアルペリオ様を想起させるとでも思っているのだろう。しかしそれは、いらぬ気遣いというものだ。
「行くからには楽しむつもりだから、あなたも細かいことは気にする必要はないわ。大体、クルレイド様側の都合もある訳だし、会えるかどうかもわからないのよ?」
「まあ、それはそうだね。クルレイドさんは王子だし、忙しいかもね……」
「会えるといいわね?」
「……うん」
私の言葉に、ロンダーはゆっくりと頷いていた。
やはり、友人と会いたいという気持ちは強いのだろう。その表情からは、それがよく伝わってきた。
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