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私はゼナート様とともに、エボンス男爵家の屋敷に戻って来ていた。
まず飛んできたのは、お父様の大きな声だった。怒っているような安心しているような、また驚いているような不思議な叫びに、私はひどく面食らったものだ。
それから少し落ち着いて、私達は三人で話し合うことにした。これからのことは、しっかりと打ち合わせておかなければならない。きっと忙しくなるはずだ。
「まず謝罪をさせてください。ゼナート殿下、お見苦しい所を見せてしまいましたね」
「いえ、お気になさらず。娘が危険な場所から帰ってきたのですから、あれくらいの叫びは些細なものです。そもそも、連れ出したのは他ならぬこの私です」
「いえ、あなたの判断を批判するつもりも、娘の決意を非難するつもりも私にはありません」
一時は取り乱したものの、お父様は最終的には私の判断を肯定してくれた。
領主の娘として、精一杯のことはやった。それがお父様が私に下した評価だ。
ただそれでも心中穏やかではいられなかったらしい。私が帰ってきた時に、その感情が爆発してしまったようである。
「さて、前置きはこれくらいにしてください。私がこの場にいることに対して、感謝の言葉などをかける必要はありません。もちろん、邪魔だというなら退散しますが」
「いいえ、心強い味方を得られたと思っています……それでは、本題に移りましょう。目下の問題は、カナプトさんに消えたと思われるドルナス・バンレド伯爵令息ですね」
「状況から見て、彼とその付き人がカナプト山に入ったのは間違いないでしょう。無事であるとも考えにくい。山賊であろうとも魔物であろうとも、あの山で会えば終わりです」
「ええ、見張りを立たせていますが、動きはないようです。このまま待っていても、彼が帰ってくるとは思えない」
ドルナス様がカナプト山に入ったかどうかは、はっきりとわかっていない。ただ状況から見て、そう考えるべきだろう。他の可能性は、除外するべきだ。
そして彼は、ほぼ帰って来ないとみていい。山賊の糧になっているが、魔物の餌になっているかは不明だが、どちらにしても悲惨な結末を迎えているだろう。
「バンレド伯爵家には、既に通達を送っています。その返答次第で、これからの行動は変わってくる」
「その点に関しては、一つご安心をしていただきたい。今回の件でエボンス男爵家に非がなかったことはこの私が証明します」
「ありがたい限りです。しかし、それでもバンレド伯爵家との軋轢は避けられないでしょうな……」
バンレド伯爵家が今回の件をどう思うのか、それは私達にとってとても重要なことだった。
これからの行動、貴族同士の関係、それらの全てが変わってくるのだ。それはとても怖い。
だが、覚悟を決めるしかないだろう。貴族の娘として、私は決心するのだった。
まず飛んできたのは、お父様の大きな声だった。怒っているような安心しているような、また驚いているような不思議な叫びに、私はひどく面食らったものだ。
それから少し落ち着いて、私達は三人で話し合うことにした。これからのことは、しっかりと打ち合わせておかなければならない。きっと忙しくなるはずだ。
「まず謝罪をさせてください。ゼナート殿下、お見苦しい所を見せてしまいましたね」
「いえ、お気になさらず。娘が危険な場所から帰ってきたのですから、あれくらいの叫びは些細なものです。そもそも、連れ出したのは他ならぬこの私です」
「いえ、あなたの判断を批判するつもりも、娘の決意を非難するつもりも私にはありません」
一時は取り乱したものの、お父様は最終的には私の判断を肯定してくれた。
領主の娘として、精一杯のことはやった。それがお父様が私に下した評価だ。
ただそれでも心中穏やかではいられなかったらしい。私が帰ってきた時に、その感情が爆発してしまったようである。
「さて、前置きはこれくらいにしてください。私がこの場にいることに対して、感謝の言葉などをかける必要はありません。もちろん、邪魔だというなら退散しますが」
「いいえ、心強い味方を得られたと思っています……それでは、本題に移りましょう。目下の問題は、カナプトさんに消えたと思われるドルナス・バンレド伯爵令息ですね」
「状況から見て、彼とその付き人がカナプト山に入ったのは間違いないでしょう。無事であるとも考えにくい。山賊であろうとも魔物であろうとも、あの山で会えば終わりです」
「ええ、見張りを立たせていますが、動きはないようです。このまま待っていても、彼が帰ってくるとは思えない」
ドルナス様がカナプト山に入ったかどうかは、はっきりとわかっていない。ただ状況から見て、そう考えるべきだろう。他の可能性は、除外するべきだ。
そして彼は、ほぼ帰って来ないとみていい。山賊の糧になっているが、魔物の餌になっているかは不明だが、どちらにしても悲惨な結末を迎えているだろう。
「バンレド伯爵家には、既に通達を送っています。その返答次第で、これからの行動は変わってくる」
「その点に関しては、一つご安心をしていただきたい。今回の件でエボンス男爵家に非がなかったことはこの私が証明します」
「ありがたい限りです。しかし、それでもバンレド伯爵家との軋轢は避けられないでしょうな……」
バンレド伯爵家が今回の件をどう思うのか、それは私達にとってとても重要なことだった。
これからの行動、貴族同士の関係、それらの全てが変わってくるのだ。それはとても怖い。
だが、覚悟を決めるしかないだろう。貴族の娘として、私は決心するのだった。
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