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 私は、馬車の中でレオード様と話していた。
 彼の笑顔を、私は可愛らしいと思っている。その認識を、彼に伝えてみることにした。

「レオード様の笑顔は、とても可愛らしいのです」
「可愛らしい? 私の笑顔が?」
「ええ、こう言ったら悪いかもしれませんが、猫のように見えるのです。いつもは凛々しい獅子なのに、とても愛くるしく思ってしまいます」

 私の言葉に、レオード様は目を丸くしていた。
 恐らく、自分がそのように言われると思っていなかったのだろう。

「そのように言われたのは、初めてです……まさか、私が可愛いとは……」
「嫌……でしたか?」
「いえ、嫌という訳ではありません。なんというか、不思議な感覚なのです。獣人は、私のことを可愛いなどとは言いません。ですが、人間のあなたから見ると、私は可愛い。そういう部分にも認識の違いがあるとわかって、少し面白いと思っています」
「認識の違い……そうなのですね」

 レオード様は、私の言葉に対して感心していた。
 どうやら、人間と獣人の認識の違いについて、考えていたようだ。
 恐らく、獣人の美的感覚では、レオード様は可愛いという訳ではないのだろう。かっこいい、もしくは逞しいなど、そういう感じなのかもしれない。
 だが、私から見れば、その笑顔は可愛らしものである。確かに、おかしな認識の違いだ。

「ああ、でも、私は普段はレオード様のことをかっこいいと思っていますよ。凛々しい顔をしている時はそう思います」
「表情によって違うということですか。まあ、考えてみれば当たり前のことですね。ただ、笑顔を可愛いと言われたことはないので、どちらにしても結果は変わりませんが」

 私は、いつものレオード様はかっこいいと思っていた。
 笑顔の時以外は、王子の風格が出ていて、とてもかっこいい。
 だが、笑顔の時は愛くるしい。そのギャップは、中々心に来るものである。

「……その、参考までに一つお聞きしたいのですが」
「はい? なんでしょうか?」
「レオード様から見て、私はどのように映っているのでしょうか? 獣人の美的感覚では、人間をどう考えるのか少し知りたいのです」
「なるほど、そういうことですか……」

 そこで、私はレオード様に質問してみた。
 私という人間は、獣人的にはどうなのだろうか。それは、かなり気になる所である。
 美的感覚が違うなら、私の評価も人間の世界とは異なるかもしれない。今後のために、それは聞いておいた方がいいだろう。

「……私個人としては、あなたのことを美しいと思っています」
「そ、そうですか?」
「ええ、獣人の美的感覚かどうかは、少しわかりませんが……」
「えっと………それなら、良かったです」

 レオード様は、私のことを美しいと思ってくれている。
 その事実に、私は嬉しくなっていた。他の獣人がどう思うが、彼がそう思っているなら、とりあえずは大丈夫だろう。
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