13 / 33
13
しおりを挟む
私は、レオード様とともに馬車に乗っていた。
国王様との話も終わり、彼は帰国するらしい。私は、屋敷で下ろしてもらい、今日はこれでお別れなのだ。
「さて、これからのことを、少し話させてもらっていいですか?」
「ええ、もちろんです」
馬車の中でレオード様からかけられた言葉に、私はゆっくりと頷く。
これからの話は、とても重要なことである。私も、是非知りたいと思っていた所だ。
もちろん、ある程度の話は既に聞いている。だが、こうして二人で話すことで、もっと詳しく理解することができるはずだ。
「あなたには近い内に、リオネルダ王国に来てもらいます」
「……それは、すぐに結婚するということではないのですよね?」
「ええ、そういう訳ではありません。結婚する前に、あなたのことを我が国の国民に知ってもらいたいのです」
レオード様の考えは、とてもよく理解できた。
私が、いきなり彼と結婚したら、リオネルダ王国の国民は混乱するだろう。それを避けるために、一度私という存在に慣らしておくことは、とても大切なことかもしれない。
「あなたには、私の婚約者として、リオネルダ王国で過ごしてもらい、国民が人間についてある程度理解してから、結婚の話を進める。そういう流れにしたいのです」
「はい……具体的には、どういう方法で理解を得るつもりなのですか?」
「特別なことはするつもりはありません。あなたが姿を見せたり、国民と交流したりすることで、理解してもらいたいと思っています」
レオード様は特別なことではないと言っているが、私の役目はとても重要である。
私の言動一つで、リオネルダ王国の獣人達は人間を判断するのだ。迂闊なことはできないだろう。
「特に、身構えないでください。あなたに関しては、色々と考えなくても大丈夫だと思いますよ」
「え?」
「あなたは素晴らしい人間です。いつも通りのあなたであれば、国民の理解を得ることは簡単だと私は思っています」
「レオード様……」
少し不安になっているのを察してくれたのか、レオード様は優しい言葉をかけてくれた。
その言葉は、とても嬉しい。心の底から、温かい気持ちになってくる。彼の言葉は、私に勇気を与えてくれるものであるようだ。
「ありがとうございます。でも、私は身構えるつもりです。私はいわば、国の代表です。身構えなければならない立場だと思っています」
「ミレイアさん……」
「もちろん、自然体でもいいのでしょう。ですが、私は常にその心を忘れてはならないと思うのです」
「なるほど……やはり、あなたは素晴らしい人ですね」
私は、国の代表。私が迂闊なことをすれば、それが人間の評価になる。そのことを忘れてはならないだろう。
その意思は、彼の優しい言葉を受けても変わらなかった。変えてはならないと思ったのである。
一国の代表というのは、そういうことだろう。身構え過ぎてもいけないとは思うが、その意識だけは忘れてはならないだろう。
国王様との話も終わり、彼は帰国するらしい。私は、屋敷で下ろしてもらい、今日はこれでお別れなのだ。
「さて、これからのことを、少し話させてもらっていいですか?」
「ええ、もちろんです」
馬車の中でレオード様からかけられた言葉に、私はゆっくりと頷く。
これからの話は、とても重要なことである。私も、是非知りたいと思っていた所だ。
もちろん、ある程度の話は既に聞いている。だが、こうして二人で話すことで、もっと詳しく理解することができるはずだ。
「あなたには近い内に、リオネルダ王国に来てもらいます」
「……それは、すぐに結婚するということではないのですよね?」
「ええ、そういう訳ではありません。結婚する前に、あなたのことを我が国の国民に知ってもらいたいのです」
レオード様の考えは、とてもよく理解できた。
私が、いきなり彼と結婚したら、リオネルダ王国の国民は混乱するだろう。それを避けるために、一度私という存在に慣らしておくことは、とても大切なことかもしれない。
「あなたには、私の婚約者として、リオネルダ王国で過ごしてもらい、国民が人間についてある程度理解してから、結婚の話を進める。そういう流れにしたいのです」
「はい……具体的には、どういう方法で理解を得るつもりなのですか?」
「特別なことはするつもりはありません。あなたが姿を見せたり、国民と交流したりすることで、理解してもらいたいと思っています」
レオード様は特別なことではないと言っているが、私の役目はとても重要である。
私の言動一つで、リオネルダ王国の獣人達は人間を判断するのだ。迂闊なことはできないだろう。
「特に、身構えないでください。あなたに関しては、色々と考えなくても大丈夫だと思いますよ」
「え?」
「あなたは素晴らしい人間です。いつも通りのあなたであれば、国民の理解を得ることは簡単だと私は思っています」
「レオード様……」
少し不安になっているのを察してくれたのか、レオード様は優しい言葉をかけてくれた。
その言葉は、とても嬉しい。心の底から、温かい気持ちになってくる。彼の言葉は、私に勇気を与えてくれるものであるようだ。
「ありがとうございます。でも、私は身構えるつもりです。私はいわば、国の代表です。身構えなければならない立場だと思っています」
「ミレイアさん……」
「もちろん、自然体でもいいのでしょう。ですが、私は常にその心を忘れてはならないと思うのです」
「なるほど……やはり、あなたは素晴らしい人ですね」
私は、国の代表。私が迂闊なことをすれば、それが人間の評価になる。そのことを忘れてはならないだろう。
その意思は、彼の優しい言葉を受けても変わらなかった。変えてはならないと思ったのである。
一国の代表というのは、そういうことだろう。身構え過ぎてもいけないとは思うが、その意識だけは忘れてはならないだろう。
9
お気に入りに追加
2,931
あなたにおすすめの小説
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
妹の方がいいと婚約破棄を受けた私は、辺境伯と婚約しました
天宮有
恋愛
婚約者レヴォク様に「お前の妹の方がいい」と言われ、伯爵令嬢の私シーラは婚約破棄を受けてしまう。
事態に備えて様々な魔法を覚えていただけなのに、妹ソフィーは私が危険だとレヴォク様に伝えた。
それを理由に婚約破棄したレヴォク様は、ソフィーを新しい婚約者にする。
そして私は、辺境伯のゼロア様と婚約することになっていた。
私は危険で有名な辺境に行くことで――ゼロア様の力になることができていた。
婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる