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私とフェリオスは、開かずの間で金を見つけた。
こんな所に、これ程の財産が隠されている。それは、まったく意味がわからないことだった。
そんな話は、今まで聞いたことがない。一体、どんな意図があって、金を隠していたというのだろうか。
「……よ、よくはわかりませんが、お嬢様、これは幸運です」
「え?」
「これ程の金があれば、借金……いや、退職金や慰謝料だって払えるはずです。アルファンド子爵家は、没落せずに済むかもしれません」
「そ、そうね……そうだわ」
フェリオスの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
確かに、彼の言う通りだ。これ程の金があれば、私に突如降りかかって来た災難を解決できるかもしれないのである。
あまりに衝撃的すぎて、そのことが頭から抜けていたが、これは喜ぶべき幸運だ。
「あら?」
「どうかしましたか?」
「これは……何かしら?」
「封筒……ですか?」
そこで、私は封筒を見つけた。
別に、それはおかしなものではない。普通の封筒だ。
だが、普通の封筒がここにあるというのは、おかしいことである。ここは先祖が作った部屋であるはずだ。それなのに、この封筒は随分と新しい。
「中身は……文書かしら?」
「そのようですね……」
封筒を開けてみると、一枚の古そうな紙が入っていた。
この封筒は、これを保護するためのものだったようだ。
ということは、誰かがここに来て、この紙を封筒に入れたということになるだろう。この部屋は、開かずの間という訳ではない。もしかしたら、そういうことなのだろうか。
「親愛なる友人、フェンドリクスへ。君と私が見つけたこの金塊をどうするべきか、私は迷っていた。君はこれを子爵家の発展のために使うべきだと言ってくれたが、私はどうもそうすることができそうにない」
「フェンドリクス? まさか……」
「ええ、どうやら、これは私のご先祖様が、あなたのご先祖様に宛てた手紙のようね」
文書を読んでみると、これが手紙であるとわかった。
そして、それが私の先祖が、フェリオスの先祖に宛てたものだということも理解できた。どうやら、この金塊はその二人に関係するもののようだ。
「これを使って成り上ることはできるかもしれない。だが、私にはその勇気がない。出る杭は打たれるのではないか。そのような恐怖があるのだ。もし君が健在なら、私の背中を押して、支えてくれただろうが、今の私にはその気力がない。君を失ってから、私には野心というものがなくなってしまったのだ」
「……どうやら、フェンドリクスはこの時既に亡くなっているようですね」
「ええ、そのようね……」
私のご先祖様は、なんだか哀愁に溢れていた。
これは、亡き友人に送っている手紙だ。だからこそ、その悲しみが、この手紙には詰まっているのだろう。
こんな所に、これ程の財産が隠されている。それは、まったく意味がわからないことだった。
そんな話は、今まで聞いたことがない。一体、どんな意図があって、金を隠していたというのだろうか。
「……よ、よくはわかりませんが、お嬢様、これは幸運です」
「え?」
「これ程の金があれば、借金……いや、退職金や慰謝料だって払えるはずです。アルファンド子爵家は、没落せずに済むかもしれません」
「そ、そうね……そうだわ」
フェリオスの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
確かに、彼の言う通りだ。これ程の金があれば、私に突如降りかかって来た災難を解決できるかもしれないのである。
あまりに衝撃的すぎて、そのことが頭から抜けていたが、これは喜ぶべき幸運だ。
「あら?」
「どうかしましたか?」
「これは……何かしら?」
「封筒……ですか?」
そこで、私は封筒を見つけた。
別に、それはおかしなものではない。普通の封筒だ。
だが、普通の封筒がここにあるというのは、おかしいことである。ここは先祖が作った部屋であるはずだ。それなのに、この封筒は随分と新しい。
「中身は……文書かしら?」
「そのようですね……」
封筒を開けてみると、一枚の古そうな紙が入っていた。
この封筒は、これを保護するためのものだったようだ。
ということは、誰かがここに来て、この紙を封筒に入れたということになるだろう。この部屋は、開かずの間という訳ではない。もしかしたら、そういうことなのだろうか。
「親愛なる友人、フェンドリクスへ。君と私が見つけたこの金塊をどうするべきか、私は迷っていた。君はこれを子爵家の発展のために使うべきだと言ってくれたが、私はどうもそうすることができそうにない」
「フェンドリクス? まさか……」
「ええ、どうやら、これは私のご先祖様が、あなたのご先祖様に宛てた手紙のようね」
文書を読んでみると、これが手紙であるとわかった。
そして、それが私の先祖が、フェリオスの先祖に宛てたものだということも理解できた。どうやら、この金塊はその二人に関係するもののようだ。
「これを使って成り上ることはできるかもしれない。だが、私にはその勇気がない。出る杭は打たれるのではないか。そのような恐怖があるのだ。もし君が健在なら、私の背中を押して、支えてくれただろうが、今の私にはその気力がない。君を失ってから、私には野心というものがなくなってしまったのだ」
「……どうやら、フェンドリクスはこの時既に亡くなっているようですね」
「ええ、そのようね……」
私のご先祖様は、なんだか哀愁に溢れていた。
これは、亡き友人に送っている手紙だ。だからこそ、その悲しみが、この手紙には詰まっているのだろう。
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