王女の影武者として隣国に嫁いだ私は、何故か王子に溺愛されています。

木山楽斗

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 私は、ドルクス様の意外な一面を見ていた。
 弟と接する時は、彼も案外普通であるようだ。それを見て、私は親しみやすさのようなものを覚えていた。
 ただ、よく考えてみれば、私のこの感情も彼には読み取られているということだ。それは、なんというか恥ずかしいことである。

「みっともない所を見せてしまったか……」
「あ、いえ……」
「ふむ……困ったものだ。あいつも、もう少し王族としての自覚を持ってもらいたいものなのだが」

 ドルクス様は、少し気まずそうな表情をしていた。恐らく、家庭的な一面を見られるのは恥ずかしいのだろう。
 考えてみれば、それは当然のことだ。誰だって、他人と家族とでは態度が変わる。そして、その違いを見られるのは、恥ずかしいものだ。

「なんというか……妹のことを思い出しました」
「む?」

 ドルクス様とネルソスのやり取りを見て、私は妹のロティアのことを思い出していた。
 私も、彼女とは普通の姉妹として過ごしていた。私がアルネシア様と似ていると判明するまでは。
 振り返ってみると、少し悲しくなってきた。どうして、こんなことになってしまったのだろうか。私達は、普通の村娘だったはずなのに。
 いや、今更それを振り返っても仕方ない。そんな気持ちは、切り替えるべきだろう。

「……お前は」
「え?」
「お前は、どうしてそんなに……」

 そこで、ドルクス様が表情を変えた。
 その表情は、明らかに曇っている。どうして、そんな表情をしているのだろうか。
 一瞬そう思った私は、すぐにその理由を理解する。恐らく、彼は私の心を読んでそういう表情になったのだ。
 ただ、それにしても彼の顔は深刻すぎる気がする。いくら私に同情しているとはいえ、こんなにも深刻な表情になるだろうか。

「……お前の妹は、必ず取り戻す。だから、安心……いや、安心などできないか。私は……お前に、待っていてくれというしかないのか」
「ド、ドルクス様……」
「私はお前になんといえばいいのだろうか。無力なものだな……俺は。すまない……人の心が読めるというのに、俺には言葉が見つけられないようだ」
「い、いえ、ドルクス様、謝らないでください」

 ドルクス様は、私のことをとても気にしてくれている。それは、ありがたいことだ。
 しかし、それに対して罪悪感のようなものを覚えないで欲しい。別に、彼が謝る必要などないのだから。
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