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 私は、王城の玉座の間に来ていた。
 目の前には、この国の国王様がいる。彼が、私を呼び出した張本人なのだ。
 国王様は、基本的には温和な人である。優しい国王様と国民からは認識されており、私も概ねその認識は同じだ。
 彼は私に対して、昔から差別的な目を向けてこない。少なくとも、蔑んだ目では見てこないのである。
 ただ、あまり関わったことがないので、そこまで詳しく理解している訳ではない。本心で何を思っていたかは、もしかしたらこれから聞けるのだろうか。

「さて、エルーナよ。よくぞ来てくれた」
「は、はい……」
「お主をここに呼んだのは他でもない。お主のその顔に刻まれている痣が、聖痕であるということを聞いたからだ」

 国王様は、私の痣を見つめていた。
 この痣が聖痕であるという事実を知っているからか、非常に興味深そうだ。

「正直言って、それが聖痕であるかどうかということは、わしにはよくわからん」
「え? ええ……」

 国王様は、痣を見てもよくわからなかったようである。
 少し驚いたが、よく考えてみればそれは当然だ。この痣が聖痕であるなどという事実は、ケルド様が見つけ出した古の知識である。国王様も、それがわかる訳ではないのだ。

「文書などから考えると、お主が聖なる力を有する者であるという可能性は高い。だが、それだけで判断できるかと言われたら、少し微妙な所だ」
「そ、そうですよね……」
「そこで、お主にはその力を証明してもらいたい。聖なる力を行使してみせて欲しいのだ」
「行使ですか……?」

 国王様の言葉に、私は少し焦った。
 そんなことを言われても、私は聖なる力を使うことができないからだ。
 その力が自分に宿っているかどうかなんて、正直わからない。そんな力をどうやって使えばいいかなど、わかるはずはないのである。

「無論、今すぐにとは言わない。少し時間を与えよう。しかし、いつまでも待てる訳ではない。一か月で、その力が真なるものだとわしに証明してくれ。それができれば、お主を聖なる者として認めて、特別な地位を与えることを検討しよう」
「一か月……わかりました。努力してみます」
「うむ、期待しているぞ」

 国王様の言葉に、私は少し安心していた。今すぐに聖なる力を使うことは、不可能だったからだ。
 だが、直後に、そこまで事態が変わっていないことに気づいた。たった一か月で、聖なる力を修得することができるのだろうか。少し、不安である。
 もっとも、彼に修得できなくても問題はないのかもしれない。例え失敗しても、前の生活に戻るだけだ。苦しい生活ではあるが、それでもそれ程問題はないだろう。
 そんな風に考えながら、私は国王様との話を終えるのだった。
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