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 私は、ケルド様からある事実を伝えられた。
 かつて、王国ができるよりも前、迫りくる闇というものに対抗した聖女。その聖女の顔にあった大きな痣。聖痕と呼ばれていたその痣が、私の顔にある痣と同じものなのかもしれないのだ。

「まさか、私の顔にあるこの痣が?」
「ええ、僕はそれを聖痕だと考えています」
「これが……聖痕?」

 ケルド様の話は、そう簡単に受け入れられるものではなかった。
 この痣が、聖なる者の証だったなど信じられない。醜い傷ありと呼ばれる要因であったそれが、選ばれし者を示すなんて、そんなことが本当にあるのだろうか。

「本当なんですか? 何かの間違いということは?」
「資料として残っている痣と、あなたの痣は一致しています。それが聖痕と呼ばれていたものであることは、まず間違いないでしょう」
「でも、私には聖なる力なんてありませんよ?」
「その力が、まだ発現していないだけでしょう。資料によると、力はいつ目覚めるかわからないそうです。生まれてすぐ使いこなせる人もいれば、しばらく目覚めない人もいたようです」

 ケルド様の言葉に、私はだんだんと自分の痣が聖痕であることを受け入れられてきた。
 資料にある痣と一致、聖なる力はいつ目覚めるかわからない。それらのことを考慮すれば、私が聖なる者であるということも真実なのかもしれない。
 私が、信じたいと思ったこともあるだろう。この忌々しい証が、聖なる者の証だった。そうだとしたら、光栄なことである。だから、私はケルド様の説を信じたいのだ。

「正直言って、こんなことになるとは思っていませんでした。まずは、歴史の中で、どういう扱いを受けてきたのか調査しようと思っていただけだったのですが、驚くべき事実が判明してしまって……」
「そうですね……確かに、驚くべきことだと思います」

 話を聞いて、私はケルド様の表情を理解した。
 彼は、単に歴史を調べているだけだった。それなのに、こういう真実を見つけて、かなり困惑しているのだろう。
 私の痣が聖痕であっても、彼の目的は果たされた訳ではない。私のような人間に対する差別をなくすという目的は、この真実によってそこまで影響がある訳ではないのだ。

「それで、あなたには王城に来てもらいたいのです」
「王城に?」
「ええ、父上から話があるそうです。あ、父上には事前に伝えてさせてもらいました。重要なことだと思ったので……」
「国王様からの呼び出しですか……わかりました、もちろん応じます」

 国王様から呼び出されるなど、早々あることではない。恐らく、何か重要なことがあるのだろう。
 もちろん、その呼び出しには応じるつもりだ。断る理由はないし、これは何よりも優先しなければならないことである。
 こうして私は、国王様と会うことになるのだった。
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