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私の顔には、大きな痣がある。生まれた時からついていたこの痣は、私の人生にとって、大きな障害だった。
ストライム侯爵家の令嬢である私にとって、顔に痣があるというのはとても不利なことだった。醜い傷ありと言われて、他の貴族から忌み嫌われて、私は辛い日々を送っている。
「さて、今日、お前を呼び出したのは他でもない」
「……」
そんな私は、王国の第三王子であるクードム様と婚約していた。
彼との婚約は、私が生まれる前から決まっていたものである。親同士が約束して、そのまま婚約しているのだ。
だが、この婚約は私にとって、幸福なものではなかった。クードム様は、私のことを嫌っている。醜い傷ありである私と婚約させられていることを嫌に思い、それで私を責めてくるのだ。
「お前との婚約を破棄するためだ」
「婚約を破棄……?」
「醜いお前との婚約など、俺はこれ以上耐えられない。故に、婚約破棄させてもらう」
ある日、私はクードム様から婚約破棄を言い渡された。
彼の口から出た言葉に、私は少しだけ安心していた。これで、彼から解放される。そう思ってしまったのだ。
しかし、私はすぐに思い出した。婚約破棄というものは、そんなに簡単なことではない。もっと、焦るべきなのだ。
「待ってください。婚約破棄なんて、困ります」
「困るかどうかなど、関係はない」
「国王様や私のお父様に許可は……」
「いいか、これはもう決まったことなんだ。お前が何を言おうと、俺は婚約破棄する。この意思は変わらない」
「そんな……」
クードム様の意思は固かった。恐らく、私が何を言っても考え直してくれないだろう。
結局、私にはどうすることもできない。今は、このまま婚約破棄を受け入れるしかないのだ。
◇◇◇
私は、王城の中を歩いていた。
婚約破棄されて、私はとても落ち込んでいる。もちろん、クードム様に好意があったという訳ではない。彼と婚約破棄できたことは、むしろ幸福なことだと思える。
しかし、それは私の個人的な感情に過ぎない。ストライム侯爵家にとって、この婚約破棄はとてもまずいものなのだ。
王族から、婚約破棄された。それをお父様に伝えると、私は何を言われるのだろうか。それが、恐ろしくて仕方ない。
はっきり言って、私の家での扱いは良くない。この痣は、家族からも嫌われる要因なのだ。
そんな嫌われている私が婚約破棄されたとなると、ひどいことを言われることは確実である。それによって、私の気分は上がらないのだ。
「……大丈夫ですか?」
「え?」
そんな私に、話しかけてくる人がいた。
その人物のことを、私は知っている。彼は、第四王子であるケルド様だ。
ストライム侯爵家の令嬢である私にとって、顔に痣があるというのはとても不利なことだった。醜い傷ありと言われて、他の貴族から忌み嫌われて、私は辛い日々を送っている。
「さて、今日、お前を呼び出したのは他でもない」
「……」
そんな私は、王国の第三王子であるクードム様と婚約していた。
彼との婚約は、私が生まれる前から決まっていたものである。親同士が約束して、そのまま婚約しているのだ。
だが、この婚約は私にとって、幸福なものではなかった。クードム様は、私のことを嫌っている。醜い傷ありである私と婚約させられていることを嫌に思い、それで私を責めてくるのだ。
「お前との婚約を破棄するためだ」
「婚約を破棄……?」
「醜いお前との婚約など、俺はこれ以上耐えられない。故に、婚約破棄させてもらう」
ある日、私はクードム様から婚約破棄を言い渡された。
彼の口から出た言葉に、私は少しだけ安心していた。これで、彼から解放される。そう思ってしまったのだ。
しかし、私はすぐに思い出した。婚約破棄というものは、そんなに簡単なことではない。もっと、焦るべきなのだ。
「待ってください。婚約破棄なんて、困ります」
「困るかどうかなど、関係はない」
「国王様や私のお父様に許可は……」
「いいか、これはもう決まったことなんだ。お前が何を言おうと、俺は婚約破棄する。この意思は変わらない」
「そんな……」
クードム様の意思は固かった。恐らく、私が何を言っても考え直してくれないだろう。
結局、私にはどうすることもできない。今は、このまま婚約破棄を受け入れるしかないのだ。
◇◇◇
私は、王城の中を歩いていた。
婚約破棄されて、私はとても落ち込んでいる。もちろん、クードム様に好意があったという訳ではない。彼と婚約破棄できたことは、むしろ幸福なことだと思える。
しかし、それは私の個人的な感情に過ぎない。ストライム侯爵家にとって、この婚約破棄はとてもまずいものなのだ。
王族から、婚約破棄された。それをお父様に伝えると、私は何を言われるのだろうか。それが、恐ろしくて仕方ない。
はっきり言って、私の家での扱いは良くない。この痣は、家族からも嫌われる要因なのだ。
そんな嫌われている私が婚約破棄されたとなると、ひどいことを言われることは確実である。それによって、私の気分は上がらないのだ。
「……大丈夫ですか?」
「え?」
そんな私に、話しかけてくる人がいた。
その人物のことを、私は知っている。彼は、第四王子であるケルド様だ。
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