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12.謎の訪問者

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「これは……」
「一体……」

 玄関まで来た私とルベート様は、顔を見合わせていた。
 そこにいるのは、明らかに貴族の令嬢といった見た目をした女性だ。
 彼女は、少し怒ったような表情で、辺りを見渡している。誰かを探しているということだろうか。

「……うん?」

 その女性の視線は、私の方を向いた。
 彼女は、ゆっくりとこちらに歩み寄って来る。

「あなたはどちら様ですか?」
「はい?」

 女性は、私のことを指差しながら問いかけてきた。
 その問いかけに、私は首を傾げることしかできない。

 目の前にいる女性と私に、一体どのような関わりがあるというのだろうか。
 私はこんな人なんて知らない。いや、というか相手も知らないからこそ質問している訳だし。

「……人に名前を尋ねるというなら、まずご自分から名乗られたらどうですか?」
「……あなたは、ルベート様ですね? リヴルム様の弟の」
「ええ、そうですが」

 見かねたルベート様は、女性に穏やかに声をかけていた。
 それに応えた女性の態度も、私に質問した時とは違って柔らかい。
 ということは、彼女は明確に私に敵意を抱いているということになるだろう。それがどういうことなのか、私は段々と予想がついてきた。

「私は、パステルト子爵家の次女ペルファと申します」
「ペルファ嬢、ですか? あなたは、どうしてこちらに?」
「リヴルム様に会いに来たのです」

 ペルファ嬢の言葉を聞いて、私は自分の思っていることが益々合っているような気がしてきた。
 恐らく彼女は、リヴルム様と懇意にしていた女性なのだろう。その彼が婚約すると聞いて、飛んできたという所だろうか。

「それで、あなたは一体何者なのですか?」
「私は、ランブルト伯爵家の長女イルメアと申します。一応、リヴルム様と婚約していますが……」
「やはりあなたが、件の婚約者なのですね?」
「ええ、親同士が決めた関係ではありますが」
「なるほど、あなたも別に本意ではないということですか」

 とりあえず私は、ペルファ嬢を落ち着かせることにした。
 彼女の怒りは、私にとっては理不尽でしかないものである。それをぶつけられても正直困ってしまう。別に私は、リヴルム様のことが好きという訳でもないのだし。
 その旨をやんわりと伝えた所、ペルファ嬢の態度は少しだけ穏やかになっていた。彼女も貴族故に、事情をある程度理解してくれたのだろう。

「……あら」

 そこでペルファ嬢は、少し低い声を出した。
 その声によって、私とルベート様も気付いた。この場にリヴルム様がやって来たということに。
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